典型的な4歳児は、2時間に1回嘘をつく。

このようなことがいくつかの研究でわかっています。さらに、6歳児は嘘をつくことがもっと多いと言われれいるそうです(つまり、1時間に1回も!)。

子育て中のみなさん。そんなわが子にどう対応していますか?子どもとの信頼関係をうまく築くためには、どうしたらいいのでしょう? 実はこれ、9歳の娘を持つ私が、今まさに直面しているジレンマなのです。

娘との絆は深い、と私は個人的に思っています。

たとえば娘は、準備しておいたおやつを食べなかったり、図書館の本を家に忘れたりといった悪いことをやらかしても、私にはオープンに話してくれます。つまり、私たちの関係は、娘にとって決して不愉快なものではないはずです。それなのに彼女は、ときどきしらじらしい嘘をつくのです。

そんなときの娘は、意地でも嘘を認めようとしません。やがて2人ともイライラし、どうにもならない膠着状態に陥るのがいつものパターンです。

先日は、自分の部屋に寝に向かう娘に、読んでいる最中の本をもう1章だけ読んでもいいと言いました。1時間後、彼女の部屋に近づいていくと、部屋の中で走る足音が。私がドアに到着する前に娘は顔を出し、「あ、ママ〜今、眠れないって言いに行こうと思っていたところ。この1時間、ずっと目を閉じて寝ようとしてたんだけど...」と言いながら、目を合わせようとしてくれませんでした。

部屋を覗くと、電気はついたままで、デスクには先ほどの本が開いた状態で置いてあります。私には、娘が寝ようとしていた証拠を見つけることができませんでした。「目をそらす」行為は必ずしも嘘をついている証拠ではないとする研究結果はあるものの、娘のことは何でもわかる私に言わせれば、あれは99.999%嘘でした。

とがめる口調で「本当に、寝ようとしていたの?」と聞くと、娘はいっそう頑固に「うん」と言います。私が問題にしているのは、本に没頭して夜更かしすることではありません。それで彼女の睡眠時間が不足してしまうことと、大したことでもないのに、わざわざ見え透いた嘘をつくことが、親として心配なのです。どうして、読むのをやめられなかったと正直に言わないのでしょう。

娘には正直でいてほしいと思っているので、もう嘘をつかないようにと叱りました。

しかし、娘も気持ちが不安定になってしまい、「嘘をついたと決めつけないでほしい」「信じてほしい」と主張します。このような争いがあるたびに、娘の将来が不安になります。10代になって、もっと危険な行為に触れる機会が増えたら、どうなってしまうのでしょう。

不安になった私は、子どもが嘘をつく理由とその対策を、調べてみることにしました。

何よりも、嘘をつくのは普通のこと

嘘をついたことがない人はいないはず(6割の人は10分に1回の頻度で嘘をついているそうです)。なぜなら、嘘も方便というケースがあるからです。

子どもは、学校のテストを避けたくて仮病を使います。大人も同じで、翌日の仕事の負荷に恐れをなして、病気になることがあります。あるいは、相手の気持ちを傷つけないために嘘をつくことも。成長中の子どもたちにとって、嘘をつくことは発達における理由があります。実際、幼い子どもたちの場合、嘘をつくことは良いサインですらあるのです。

健康に関するソーシャルネットワークサービスの「PsychCentral」によると、3歳から7歳の子どもの場合、想像力とクリエイティビティの影響で、「嘘」と「彼らなりの真実」の間の境界線があいまいになります

この年代の子どもたちは、サンタクロースや歯の妖精、そして空想上の友人の存在を信じています。このような空想を信じる傾向は、子どもの心における強い部分を担っているため、子どもたちは自分がついている嘘を真実だと思い込みます。犬に食べ物を盗まれたのが真実であり、パスタをわざと床に落としたのではないのです。

4歳までに、9割の子どもたちは嘘の概念を理解します。心理学者はこれを発達のマイルストーンとしていて、健全な脳の発達における重要な成長の1つであるとさえ考えられています。

実際、学力の高い子どもたちは、2から3歳のときに嘘をつき始めるといいます。子どもの嘘に関する最先端の専門家、Victoria Talwar博士は、「嘘をつくことは、知性と関連があります」と述べていますIQの高い幼稚園児は、嘘をついたり大ぼらを吹くことが多いのです。

また、早い段階での嘘は、後々の人生における社交スキルとも関連しているそうです。社交性の高い子どもは、たとえば兄弟のために責任を取るときなど、誰かのためになるのであれば嘘をつきます。

つまり、親としては、早くから嘘をつくことを学んだわが子を誇っても良さそうです。だからといって、それを習慣にさせてはいけません。

子どもの嘘の発達

成長にともない、子どもの嘘は洗練されていきます。10歳ごろには、「怒られないため」とか「褒められたい」といった単純な理由ではなく、複雑さを増す身の周りの社会を生き抜くために嘘をつくようになります。

「友人に自慢するため」だとか、「不名誉なレッテルを貼られないため」だとか、「他人の気持ちを傷つけないため」だとか。

私たち親も、子どもに嘘をつくことを教えています。たとえば、親切でもらった不要な贈り物を「気に入っている」と嘘をつかせたり。私たち自身も、そんなしらじらしい嘘をたくさんついているはずです。つまり嘘は、無用な争いを避けるための解決手段となっているのです。

子どもは、嘘が悪いことだと知りながら、そんなに大した問題ではないと思って嘘をつきます。ソーシャルワーカーのJames Lehaman氏は、子育てに関するウェブサイト「Empowering Parents」のインタビューにおいて、子どもが(親も)嘘を正当化する際の思考について説明しています。

彼らは、嘘が禁じられていることを重々承知しています。でも、それが誰かの迷惑になるとは思っていません。両親がその嘘を有害だと思っていても、同じようには考えていないのです。ですから、こんなことを言うでしょう。

「食べちゃいけないときに、砂糖入りのお菓子を食べるのはよくないってことは知っているよ。でも、それで誰かに迷惑かけるわけじゃないでしょう」「僕のドライフルーツと友だちのお菓子を交換したのはダメなことなんだよね。でも、誰にも迷惑かけてないし、自分で何とかできるもん。それの何が悪いの?」――それが、子どもたちの言い分です。

彼らの頭の中には2つの価値観が共存しています。「これは禁じられている」という家族の価値観と、「誰にも迷惑かけないんだし、どうだっていいじゃん」という子どもの価値観です。

子どもは、誰にも迷惑をかけないというアイデアを使って、自分の行動を正当化します。その結果、嘘という不誠実な行為に出るのです。

思春期を迎えると、危険がいっそう高まります。

でも、思考回路は変わらないので、大麻を吸い、酒を飲みながら、「でも、誰にも迷惑かけてないし。友だちも大麻やってるけど、害はなさそうだし。酒を飲むのが悪いのは知っているけど、親だって飲んでるし、何の害もないみたいだし。だから、自分で何とかできるもん。自分は、親が思っているほど幼くないんだ」と言うでしょう。

禁止されていることは知っているのです。でも、それが誰かに迷惑をかけるとは思っていないか、あるいは、その迷惑を正当化しているかのどちらかです。

いかに嘘が有害であり、ベストな課題解決ではないかを教えるのが、私たち親の務め。ただ「誠実であることが最善の策」と言うだけでは不十分なのです。

嘘に対処するには

嘘をついているわが子を見つけたとき、親の対応は2つに1つ。もっとコソコソやるように言うか、もっと誠実になるように言うかのどちらかです。

以下でご紹介する、最新の研究結果や子育ての専門家のコメントを踏まえたガイドラインを試してみてください。

落ち着いて、感情を抜きに

今にして思えば、昔の私も、もう少しうまく対応できたはずです。嘘をついている娘を見つけたとき(ときには、10秒洗面所にいただけで「歯を磨いたよ」なんてあからさまな嘘も)、侮辱され傷つけられたように感じた私は、その怒りの感情と、高まる不信感による恐怖に執着してしまいました。

娘は私への愛着が強く(今のところですが)、何としてでも非難されることを避けようとします。でも、私の感情的な反応は、「嘘をつかないこと」を教えるのではなく、「見つからないように嘘をつくこと」を教えているだけでした。

本当は、「あなたの嘘で私が傷ついている」ことではなく、「どうしてそんな嘘をついたのか。それによって何をしたかったのか」という、論理的な側面に目を向けるべきなのです。子どもの教育に関するパブリッシャーである「Scholastic」の記事によると、

1. 何をするにもまずは冷静になってから

気持ちが穏やかな状態の方が、コミュニケーションをうまく取れます。最初のステップは、子どもがする行為が間違っているというメッセージを伝えること。次は、わが子が嘘をついた理由に対処します。罰を避けるためではなく、怒られたくないから嘘をつく子どももいることを覚えておいてください。

2. 子どもの嘘の目的を知る

罰を受けたくないからかもしれないし、自分のミスによる影響が怖いのかもしれません。その子は今、何を感じているでしょうか? 不安、罪悪感、羞恥心、恐怖? 子どもが私たちに話しかける言葉には、必ず動機と意味があります。わが子が嘘をつくことで何を得ようとしていたのか、少し考えてみてください。

とがめずに、疑っていることを示す

ときとして、私たち親が、意図せぬうちにわが子に嘘をつかせていることもあります。とがめる口調で「歯を磨いたの?」と聞くよりも、「ずいぶん短かったね。歯、磨き足りないんじゃない? もう1回、磨きなおそうか」と言えば良いのです。

ここでは虫歯を防ぐことが目的であり、嘘をとがめることは目的ではありません。それよりも、「ずいぶん短かったね。十分に磨けた?」と聞くことで、子どもは本当のことを話してくれるかもしれません。

「磨こうとしたんだけど、歯磨き粉を出せなかったんだ」といった具合に。尋問のように問い詰めてしまうと、子どもはさらに怖がり、今後いっそう真実を話してくれなくなってしまうでしょう。

わが子が間違ったことをしたと確信できているなら、心配であること、気づいていること、今後の行動も見ていることだけを伝えて、嘘をついたことをとがめないようにします。「PsychCentral」によると、子どもを嘘つき呼ばわりすることは絶対にやってはいけません。それをすると、「もう自分はいい人間にはなれない」と思い込むようになってしまいます

嘘をつくことの悪さではなく、誠実であることのメリットを強調する

「嘘をつくことは間違っていて、自分にトラブルを呼び込むだけだ」と教えるよりも、「誠実であることが正しいことだ」と教える方が、嘘を防ぐのに効果的です。Talwar博士が実施した「誘惑に耐えるテスト」では、子どもたちに背後にある物を予想させ、当たっていると報酬を与えました。研究者が「覗いちゃダメだよ」と言いながら急に席を外すと、背後を覗いたにもかかわらず、覗ていないと嘘をついた子どもは67.8%に上りました。

しかし、「真実を言うことは正しいことだ」と言われた子どもたちの場合、嘘をついた子どもは40%にまで低下したのです(ただし、「覗いたら罰を与える」と「真実を言うことは正しいことだ」の両方を言われた子どもの場合、8割が嘘をつきました)。

同様に、桜の木を折ったことを正直に父親に話したアメリカ初代大統領のジョージ・ワシントンの物語を読んだ子どもたちは、オオカミ少年の物語を聞かされた子どもたちよりも、嘘をつく傾向が低くなりました。

子どもに真実を話してほしければ、「怒らないから、本当のことを言ってくれると嬉しいな」と伝えることです。そして、子どもがすべてを話し始めたら、最後まできちんと聴くこと。そうすることで、信頼関係が築かれます。ですから、わが子がマルウェアをダウンロードしてコンピュータが壊れたことがわかっても、この戦略をとったのであれば、内心の怒りを見せてはいけません。暴言を吐くのは、心の中だけにしておきましょう。

本人に自主性を与える

自立心が湧いてくる10代は、仲間と同じこと(デート、パーティ通い、喫煙、飲酒)がしたくて、必要に迫られると嘘をつきます。「New York Magazine」によると、

思春期の子どもたちは、自分の生活の詳細を隠すことで、親や権威のある大人から独立した社会的な領域をつくり上げ、それが自分たちだけのものと特定します。

彼らにとって、親に助けを求めることは、自分だけで状況に対処できない未熟さを認めること。親に言わなければならない状況は、心理的な弱体化を招く可能性があるのです。それが、「あんたに関係ないだろ」という言葉につながっていきます。

しかし、親が何でも許せば10代が嘘をつかなくなるかというと、そんなことはありません。ルールがなければないで、自分たちは気にかけてもらっていないと感じてしまうのです。ベストな方法は、何でも許す親と何にでも厳しい威圧的な親の中間を見つけること。研究によると、10代の子どもたちは、親が態度を変えるかもしれないと思うと、ルールに反していると知っていることについて、親に話す傾向が高まるようです。

絶対的なルールは数個程度にしておき、そのほかのことに関しては、共通認識を得られるように心がけましょう。

心理学を研究しているNancy Darling博士によると、「皮肉にも、ルールを一貫して守らせることができる親は、わが子に対して温かく、会話をしているタイプの親」なのだそうです。このタイプの親は、影響力のある重要な領域においていくつかのルールを定め、そのルールが必要な理由をわが子に説明し、守ることを求めます。しかし、そのほかの領域に関しては、子どもの自主性を重んじ、自分で決める自由を与えています

このような親の子は、もっとも嘘が少ない子どもたちです。隠しごとはそんなに多くなく、きっと5つ程度しかないでしょう。

交通警察のように取り締まる

わが子が嘘をついたときは、道徳違反ではなく、「ルール違反」として対処したほうがいいそうです。私は「Empowering Parents」で見つけたアドバイスが、とっても実践的だと思いました。それは、スピード違反のように嘘を取り締まるという方法です。

親は、スピード違反に対応する警察のように嘘に対応しなければなりません。スピード違反を見つけた警察は、違反切符を切るだけで、あまり多くの説明を求めません。つまり、ただ結果を与えるだけなのです。嘘をついた子どもにも、同じ対応をするといいでしょう。真実を言わなかった子どもには、ただそれに対する結果だけを与えればいいのです。1回目の嘘に対しては、1時間早く寝なければならない。2回目の嘘ではケータイを没収。ケータイでなくても、その子が好きな物を、1日か2日使えないようにしてしまいましょう。それは、コンピューターを使う時間やテレビを見る時間でも構いません。

与えられる結果は、嘘に対するものでなければなりません。その出来事に対して個別の結果があるなら、それは細かくわける必要があります。門限を破ったけれど真実を話したなら、金曜日の外出を禁止にしても、ケータイを没収することはありません。しかし、嘘もついたなら、両方を失います。

その際、道徳について触れるべきではありません。たしかに嘘は間違った行為であり、他人を傷つける行為であり、家では真実を話すべきです。しかし、それを道徳の問題ではなく、技術的な問題にしてください。法律を破った。ルールを破った。だから、結果があるという具合に。

さっそくわが家でも、嘘に対する違反切符をつくりたいと思います。

親が模範になる

最後に、すべての親にとって重要なアドバイスがあります。それは、子どもになってほしいような人物に、自分がなること。ライターのRobert Fulghum氏はこう言っています。

子どもが親の言うことを聞かなくても、心配いりません。むしろ、常に親の行動が見られていることを心配した方がいいでしょう

子どもといるときは、普段以上に誠実でいる必要がありそうです。


子育てに、ぜひ生かしてください。

Melanie Pinola(原文/訳:堀込泰三)

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