Inc.:Jesse Itzler氏は、これまでに複数の会社を立ち上げた起業家です。中でも有名なのは、会員制のプライベートジェットレンタル会社Marquis Jet社と、セレブ御用達ドリンクを販売するZico coconut water社です。この2社はのちにそれぞれ、バークシャー・ハサウェイ社とコカ・コーラ社に売却されました。Itzler氏はまた、100マイル(約160キロメートル)レースを走る超長距離ランナーとして優れた成績を残しているほか、下着ブランドのスパンクス社を創業した億万長者のSara Blakely氏の夫でもあります。

Itzler氏に当てはまらない言葉があるとすれば、それは「退屈」です。同氏はあるとき、行き詰まっている自分、毎日同じことを繰り返している生活に不安を抱きました。そして、とんでもない行動に出ました。何と、マンネリから抜け出すべく、アメリカ海軍特殊部隊「SEALs」のある隊員を、パーソナルトレーナーとして1カ月間雇ったのです。Itzler氏は次のように語っています。

彼とはマラソンレースで知り合ったのですが、あんな人物にはこれまで一度もお目にかかったことがありませんでした。彼は、自分というものをしっかりと確立していました。そこで私は思ったのです。彼が持っているものを私もほしい、と。そこで私は、彼をパーソナルトレーナーとして雇ったのです。

Itzler氏は、SEALs隊員との日々をつづった体験記『Living With a SEAL: 31 Days of Training With the Toughest Man on the Planet』を11月3日に出版しています。

特殊部隊SEALsに関しては、実在した狙撃手クリス・カイル氏の生涯を描いた映画『アメリカン・スナイパー』くらいしか知らないという方に、簡単に説明しましょう。SEALsは、アメリカ軍の中で最も過酷な特殊任務を多数こなしている部隊です。入隊のための基礎訓練は全部で50週にもおよび、世界のどんな軍隊よりも熾烈とされています。

では、Itzler氏がマンハッタンのアッパーウェストサイドにある高級アパートメントで、メンターであるSEALs隊員と共同生活を送りながらから学んだ、並外れた素晴らしい人生を生きるための重要な教訓を紹介しましょう。

1.早起きをする

Itzler氏のメンターは、アフガニスタンとイラクでの任務に何度も赴き、戦闘で友を亡くしていることもあって、氏名を公表していません。そこで、Itzler氏の体験記では単に「SEALs隊員」と呼ばれています。2人は、SEALs隊員が思い立ったら、どんな時間帯であっても訓練に取り組みました。冬を迎えた12月のニューヨークだというのに、深夜や早朝にトレーニングをすることも度々でした。

早い時間に起きるようになったおかげで、Itzler氏は1日がとても長く、多くのことが片付いたと話しています。

ほかの人は1日が24時間なのに、自分たちだけは27時間あったような気がしました。

2.ベッドを整える

これを聞いたとき、筆者はちょっと驚きました。有名なスピーチで、最初のアドバイスとして挙げられていたのが「ベッドを整える」だったからです。このSEALs隊員もどうやら、1日を同じように始めていたようです。Itzler氏は次のように述べています。

彼はすべての行動において、習慣とパターンを作り上げていました。ベッドを整えるといった些細なことから始まって、時間を厳守することや、テクニックや手順を完璧に身につけることなど、何もかもです。そのような人間と生活していると、時間に遅れたり言い訳をしたりしにくくなります。

3.ミニマリストに徹する

Itzler氏とその家族のもとに滞在した当時、SEALs隊員は現役勤務のキャリアを終えようとしているときで、未消化だった休暇を使ってItzler氏とともに過ごしました。Itzler氏によれば、何よりも驚いたことのひとつは、隊員のシンプルな暮らしぶりだったそうです。

我が家で31日間暮らすのに、彼はバックパック1つと身分証明書、デビットカード1枚でやってきました。もし私が31日間旅行に行くなら、スーツケースを5個持っていくでしょう。あれほどブレない人間には会ったことがありません。休みを取らないし、中断もしない。規律正しく暮らし、信念を曲げないのです。

4.決して諦めない

誰でも諦めることはありますし、そうすべき場合もあると思います。筆者がSEALs隊員ではないのは、そのせいかもしれません。Itzler氏は次のように振り返っています。

彼はあらゆる面でSEALs主義を貫いていました。例えば、自分の脳が「すべて終わった」と思っても、本当は40%しか終わっていない、という感じです。仕事中や交渉中などに、私だったら行き詰まって心身ともに消耗してしまうようなときでも、彼なら驚くべきエネルギーを出せるでしょう。エネルギーが尽きたと思っても、実はリザーブタンクにはたくさんあるのです。

5.快適さを拒む

SEALs隊員の持論で重要な位置を占めていたのがこの点だったようです。要するに、不快感や痛みをくぐり抜けてはじめて、成長のチャンスが手に入るという考え方です。痛みは、成長がもたらす副産物であるだけではなく、成長の原動力でもあるのかもしれません。

私は日々、快適な居場所から物理的に引っ張り出されました。この考え方を速やかに取り入れるべく、初日の夜は木製の椅子の上で寝ました。この点については、彼がちょっと文字通りに解釈しすぎている気はしますが。

このSEALs隊員のモットーは「つらくないことはしない」だったそうです。

6.忍耐強くなる

1日でも入隊経験があるのなら、いえ、それよりはるかに楽な仕事であっても、この点は理解できるはずです。忍耐力はただの美徳ではありません。成功を望むのであれば、絶対に欠かせない力です。Itzler氏によれば、SEALs隊員と1カ月のあいだ訓練をしてみて、もっとも意外な成果のひとつは、前よりも我慢強くなったことだそうです。

驚くほど我慢強くなりました。渋滞にはまってしまったときでさえ、耐えられるようになったのです。コツは、何事にも終わりがあるのだと知ること。超人的な訓練を日々続けていたときも、そうした考えに集中して耐えろと教わりました。つまり、トレーニングはそのうち終わる、と考えるのです。結局のところ、すべては終わりを迎えるのですから。

7.不要なものを捨てる

1カ月におよぶ冬の旅支度を小さなバックパック1つに詰めてやってきた人間にとっては、これは当然のことなのでしょう。でも、SEALs隊員は、心の中に溜まったゴミの片づけ方も教えてくれた、とItzler氏は言います。

彼は私に、不要なものをすべて捨て去るよう言いました。いきなり電話をかけてきては、「今やっている仕事もメールへの返信も必要ない、ランニングに行くぞ」と言うのです。普段の私ならそんなことはしないのですが──そのとおりにしても何も問題はなかったのです。日々の習慣をやめるのはとても怖かったのですが、実際のところ、効率性は格段に向上しました。

8.より上を目指す

SEALsの姿勢は、快適さを拒んだり、ミニマリズムに徹したりといったことだけではありません。挑戦そのものを目的に、より一層困難な挑戦を探し求めるのもSEALsです。

レベルは日々上がっていきました。真冬に雪が吹きすさぶ中、あえて外に走りに行ったりするのです。「絶対にできる」と自らの精神に戦いを挑むような感じでした。彼は私に、型にとらわれない生き方をしても良いのだと教えてくれました。それが、彼の鍛錬の仕方であり、生き方だからです。

Want to Lead a Truly Exceptional Life? A Navy SEAL Says Always Do These Things | Inc.

Bill Murphy Jr.(訳:遠藤康子/ガリレオ)

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