こんにちは。1分トークコンサルタントの沖本るり子です。
自分の考えや思いは、相手に伝えなければ相手に伝わらない。だから、伝えるということは重要です。
同じように、相手の考えや思いも聞いてみなければわからないもの。そこで、今回は「相手を軸として伝えることの大切さ」をお話しましょう。
良かれと思ったことがありがた迷惑
自分がされて嫌なことは、相手にしない。
自分がされてうれしいことを相手にする。
一見どちらも、相手想いに聞こえますが、本当にそうでしょうか?
いえいえ、実はどちらも相手への気遣いでもなく、自分本位の考え方です。
しかし、子どものころ「自分がされて嫌なことは、相手にしないで自分がされてうれしいことを相手にしましょう」とよく学校の先生から言われたものでした。
これを真に受け実践し、どれだけ周囲に迷惑をかけていたことか…。
相手と自分は人生経験も違うし、考え方や価値観も違います。
自分がされて嫌なことが、周囲の人たちも嫌かどうかはわかりません。しかも、自分がされてうれしいことが相手のうれしいこととも限りません。
自分がされてうれしいからと、良かれと思って相手にしてあげると、相手はすごく迷惑だと思っているかもしれません。
たとえ自分本位でも、相手が喜んでくれていればいいのです。
先回りで動くことが本当に大事?
お客様に対して、気配りが重要だから、「言われる前に動くこと!」
と考えて接客するのは、とてもすばらしいこと。ただし、本当にそれをお客様(相手)が望んでいればの話です。
望んでいないことは、ありがた迷惑以外の何ものでもありません。
お茶の温度にも好みがある
そう思ったある飲食店での出来事を例にしましょう。
猫舌の私は、熱いお茶を出されると食事を終えたころに、そのお茶がいい塩梅の温度で飲めるので、冷めるのを楽しみにしています。
ちょうど食事も終わりごろで、さぁこれから自分好みの温度のお茶が飲める!と思った瞬間、店主が、さっとそのお茶を捨て、熱々のお茶を新しく湯のみに注いだのです。
あっという間の出来事なので、何も言えず。せめてもう少し鈍い動きなら、そのお茶を捨てないでくださいと言えたのです。
熱々のお茶は、飲めません。
そこにお水を入れてしまうと、薄い味のお茶になってしまいます。
結局、急ぎの用事があるため、お茶が冷めるのを待つ時間もなく、お茶が飲めませんでした。
これは、店主による「熱々のお茶が喜ばれるだろう」というお客様への気遣いの行動でしょう。
確かに、良かれと思った行動です。しかし、熱々のお茶が皆々、好まれるかというとどうでしょうか?
冷たいお茶が好きな人もいれば、冷めたお茶が好きな人もいるはず。私のように、猫舌で必然的に冷めたくらいのお茶が良いと思う人もいることでしょう。
お客様や相手への思いやり気遣いを考えるのならば、ひと言の声がけを心得るだけでも違います。
「熱いお茶に入れ替えましょうか?」という相手へ確認。
「熱いお茶に入れ替えますね」と自分が相手にしようとする行動宣言が必要だったはずです。
ビュッフェで勝手に盛ってはいけない
ほかによくあるのが、会食でのビュッフェスタイルの場。勝手にあれこれ料理を皿に盛って渡してくれる人がいます。
一言、「盛ってきましょうか」と確認して行動してくれたら良かったのに。
勝手に盛られたお皿の料理は無駄になる場合が多いのです。
人によっては苦手なものや控えているもの、アレルギーなどの心配も。気を配ったつもりも迷惑になりやすいのです。
このように、たった一言伝えるだけでその相手への配慮が、さらに相手への思いやりになります。
そして、言われたほうは自分の意思を伝えることもできるのです。
確認不足で、誠意がムダになる
贈り物は、気持ちが大事といいますが、どうせなら、相手が苦手な物はさけたいもの。本当なら喜ぶものを贈りたいものです。
自分がもらってうれしいからと、状況も考えず相手に贈るのは、配慮に欠け、かえって迷惑になる場合もあります。
たまに耳にする話にこんな例もあります。
親せきから毎年ある食品が贈られてくるというAさん、実はこの食材が嫌いで、ずっと捨てているというのです。
苦手だと言えなくて、贈る側からも、何か聞かれることもなく断ることもできず気が重いのだとか。
食材は、アレルギーがある可能性もありますし、とくに毎回贈るのであれば送る前に、「今年も贈ろうと思うけど大丈夫? 嫌いじゃない?」などと確認すると良いでしょう。
そうすれば、無駄にすることなく、相手が重い気持ちにならずにすみます。
自分が好きだから世間はみな好きという思い込みが、ちょっとした一言を忘れさせてしまうのかもしれません。
相手の好意だから、贈られた側は自らすすんで苦手とか嫌いとはいいにくいでしょう。
そのため、1度くらいの贈り物であれば気持ちだけと考えても良いでしょうが、食べものに関しては何度も贈るつもりであれば贈る側から、ひと言伝えてみましょう。
「言ってくれたら良かったのに~」をなくそう
仕事でも気を利かせたつもりが逆効果ということもありえます。
Aさん「え~、言ってくれたら、これやらなかったのに」
Bさん「やる前に聞いてくれたらよかったのに。なんで勝手にやったの~」
Aさん「せっかくやったのに、これ全部元に戻すわ…」
良かれと思ってやったことが、むしろ相手に迷惑をかけることがあります。ちょっと一言声かけるだけで、無駄骨をおらずにすみます。
訪問前に人数を伝えよう
会社や事務所に訪問する場合も、配慮の一言が必要です。
訪問時、2名以上の場合は、訪問先にその人数を伝えるのも配慮の1つ。会議室の広さを検討されるかもしれません。飲み物などの用意もあるかもしれません。
多くは、原則1名の訪問と考えられて準備されます。
「2名で行きます」とか「上司と2名で訪問してもよろしいでしょうか?」のように伝えてみましょう。
到着時刻を伝えよう
イベントなど会場到着時間も、早めに行く場合は、相手への確認が必要です。
お手伝いをしようと気を使ったつもりでも、会場をまだ使えないかもしれません。あるいは、いろいろ段取りもあり、邪魔になるかもしれません。準備が整っていないこともあるでしょう。
(私もまだメイクしていないのに…と戸惑ったことがあります)
お手伝いしたい気持ちがあるならば、ひと言事前に伝えることも重要です。
良かれと思ったことが、相手にとって迷惑な場合もあることを意識し、考えていることは行動する前に、相手に一言そえて伝えてみましょう。
沖本るり子(おきもと るりこ)
株式会社CHEERFUL 代表。1分トークコンサルタント。「5分会議」®で、人と組織を育てる専門家。江崎グリコなどを経て、聞き手が「内容をつかみやすい」「行動に移しやすい」伝え方を研究。現在、企業向けコンサルタントや研修講師を務めている。「5分会議」®はRKB毎日放送「今日感テレビ」で紹介された。
著書に『期待以上に部下が育つ高速会議』(かんき出版)、『生産性アップ!短時間で成果が上がる「ミーティング」と「会議」』(明日香出版社)、『期待以上に人を動かす伝え方』(かんき出版)などがある。
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