退職代行で損害賠償請求される?訴えられる事例8選を弁護士が解説

伊澤文平

監修者伊澤文平弁護士

トップコート国際法律事務所

公開日:2024.04.09

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最終更新日:2024.04.16

退職代行で損害賠償請求される?訴えられる事例8選を弁護士が解説

退職代行を調べてみると、「損害賠償」というワードを目にして、不安になっているのではないでしょうか。

結論をいえば「退職代行サービスを利用すること自体」が損害賠償請求される理由にはなりません。安心してください。

そもそも、会社から労働者に対して損害賠償が認められるケースはほとんどないため、多くの方にとって心配は無用です。

ただし、「退職代行を利用すること」とは直接関係なく、あなたが法的に問題のある辞め方をした場合は、損害賠償が認められる可能性があります。

そこで本記事では、退職代行を使って損害賠償を請求され、賠償金を支払わないといけない8つの事例を解説していきます。

このほか請求されないための対策と、万が一請求された場合の対処法も解説しているので、退職代行を考えている方はぜひ参考にしてください。

【この記事でわかること】

なお、損害賠償を含めた、退職代行を使う時に起こるトラブル全般について、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

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1.退職代行サービスを「利用すること自体」が損害賠償請求される理由にはならない

退職代行サービスを「利用すること自体」が損害賠償請求される理由にはならない

まず、「退職代行サービスを利用すること自体」が損害賠償請求される理由にはなりません。

「損害賠償」とはその名前の通り、会社に「損害」が出た場合にそれを「賠償する」ために支払うお金のことです。

退職代行とはあくまで「退職の意思を本人の代わりに伝える」サービスでしかないため、退職代行を使うこと自体が会社に具体的損害を与えるとは考えられませんよね。

そもそも、会社から労働者に対して損害賠償が認められる事例はごく稀です。

会社よりも労働者の方が弱い立場にあるとされており、民法や労働基準法で労働者の権利が強く守られているからです。

そのため、即日辞める、引き継ぎを完璧にしないまま退職するなど、会社からみて「好ましくない」退職方法でも、簡単に損害賠償が認められることはありません。 ご安心ください。

ただし、「退職代行を利用すること」とは直接関係なく、会社に対する「債務不履行」または「不法行為」を行った場合は損害賠償が認められてしまいます。

次の項目からは、退職時に損害賠償が認められる事例を挙げて解説していきます。

2.損害賠償請求が認められてしまう事例8選

退職時に損害賠償請求請求が認められてしまう事例8選

「退職代行を利用すること」とは直接関係なく、あなたが法的に問題のある辞め方をした場合は、損害賠償が認められる可能性があります。

法的に問題のある辞め方とは、民法で定められている「債務不履行」または「不法行為」にあたるケースです。

【債務不履行と不法行為】

問題点

説明

債務不履行

民法415条

会社との契約を守らない。

従業員として当然守るべき責務を果た

さない。

【例】

・契約期間が残っているのに

 一方的に退職しようとする

・出勤を拒否する、など

不法行為

民法709条

会社の利益・権利を侵害した

【例】

・SNSで会社の名誉を傷つけた

・他の従業員を殴った、など

「債務不履行」または「不法行為」に該当し、実際に会社からの損害賠償が認められる事例は8つあります。

【損害賠償が認められる事例8選】

とはいえ上記からわかるように、重大な問題があるケースでなければ損害賠償が認められることはありません。

以下の項目からはそれぞれのケースを個別に解説しますので、当てはまっている可能性があるものからチェックしてみてください。

1)【事例①】契約期間が残っているのに一方的に退職しようとする

「期間の定めがある雇用契約」を結んでいる場合、その期間中に一方的に退職しようとすると、損害賠償が認められる可能性があります。

契約社員などが典型でしょう。

とはいえ、例外的に契約期間中でも辞められるケースもあります。

【有期雇用中でも辞められるケース】

  1. やむを得ない事情がある(民法 628 条

  2. 契約から1年を経過している(労働基準法137条

(1.)やむを得ない事情とは、社会通例的に仕事を続けられないと判断される事情や、会社側の落ち度によってその職場で働けないと判断される場合です。

【やむを得ない事情とは】

  • 社会通例的に仕事を続けられないケース

    • ・心身の重大な障害、疾病

    • ・家族の病気の看病

    •  ・両親や配偶者の介護

  • 会社に落ち度があるケース

    • ・業務が法令に違反している

    • ・悪質なパワハラ・セクハラがある

これらの事情がある場合には、たとえ契約期間内で辞めたとしても、損害賠償が認められることはありません。

(2.)また、有期雇用契約中でも、契約から1年を超えていれば退職できると労働基準法137条で明記されています。

以上の解説をまとめると、有期雇用で「やむを得ない事情」がなく、契約から1年以内の方が一方的に退職してしまうと、損害賠償が認められてしまいます

2)【事例②】いっさい引き継ぎをせず、会社が大きな損害を被った場合

いっさい引き継ぎせずに退職し、会社に大きな損害がでる場合は、損害賠償請求が認められるリスクがあります。

とはいえ、「引き継ぎをしなかった」ことで損害賠償が認められるハードルはかなり高いです。

裁判になった場合、「本当に損害が発生したといえるのか」「その損害が引き継ぎ拒否が原因で発生したといえるのか」などの立証が難しいためです。

よって実務的には、引き継ぎしなかったことで損害賠償が認められるのは以下の条件に当てはまる例外的な場合に限られています。

【損害賠償が認められる条件】

  • 引き継ぎしなかったことで会社に「大きな損害」が出た

  • 引き継ぎしなかったことと、損害が発生したことの因果関係がある

この2つの条件を満たすのはかなりハードルが高いことがわかります。

しかし、数は少ないですが、引き継ぎをしなかったことで損害賠償が認められた判例も存在します。

【損害賠償が認められた判例】

  • 概要:会社が、取引先会社のリニューアル工事を担当する従業員を採用

  • その従業員は週間程度勤務したのちに病気を理由に欠勤し、結局引き継ぎなしで退職

  • 被告が退職したことが原因で取引先との契約を解約されてしまった原告会社が、3000万円(工事で得られるはずだった金額)の損害が出たとして賠償請求

  • 結果:最終的に、かなり減額されたものの、70万円の支払いが命じられた

この裁判例では、引継ぎを実施しなかった従業員に対する会社の損害賠償請求が一部とはいえ認められています。

ただし、この判例では、被告(やめた従業員)1人の責任で3000万円もの損害が出た事例であり、ここまで条件が揃うケースは少ないでしょう。

なお、引き継ぎをしないことで損害賠償が認められるケースは、上の判例のように、取引先を抱える業務内容であることが多いです。

なお、引き継ぎなしで退職代行を使うリスクや注意点については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

3)【事例③】2週間以上の無断欠勤をしている

2週間以上の無断欠勤で、出社を一方的に拒否している場合も、損害賠償が認められる可能性があります。

「無断欠勤」という行為はそもそも労働者による債務不履行にあたりますが、2週間以内であればまだ悪質性が低いと判断されます。

しかし、期間が2週間を超えると悪質性が高いとして損害賠償が認められる可能性が高まります。

2週間という目安は、労働基準監督署長の認定で解雇ができたり、裁判でも解雇が認められるケースが多くなってきます。

ただし、退職の意思を伝えて、有給の消化を申し出た上で欠勤する分には、無断欠勤の扱いにはならないのでご安心ください。

退職代行に関していえば、退職および有給の消化を申し出るのを業者が代行してくれます。

そのため、代行業者に依頼してから会社に2週間連絡なく休むことは問題ありません。

4)【事例④】会社の名誉を傷つけた

退職の前後に、会社の実名を出して名誉を傷つけた場合も、損害賠償が認められる可能性があります。

最近は、SNSで退職前後に「もう辞めるからいいだろう」といって会社の(評判を下げる)内情を暴露する方が多くみられますが、これは危険です。

会社の内情を暴露されることによって会社の評判が下がったり、顧客が減るなどの損害が生じるため、損害賠償が認められるのです。

また、ほとんどの会社では、入社時の契約で秘密保持に関する条項も盛り込まれています。

会社の内情を暴露することは、秘密保持の契約内容を破ることになるため、たとえ本当のことであっても公表しないでください。

5)【事例⑤】会社の機密情報を漏らした

退職際に、会社の機密情報を漏らした場合も、損害賠償が認められるリスクがあります。

会社の機密情報とは例えば、特許を取ろうとしていた商品の情報や、得意先名等が分かる顧客情報データなどがあります。

会社の機密情報を漏らすことは、先にも登場した秘密保持の契約内容を破っているため、損害賠償の理由のなります。

また、機密情報を競合他社に与えた場合は不正競争防止法によっても禁じられているため、賠償金額が跳ね上がります。

この不正競争防止法に違反した事例では、以下のように厳しい判決がくだされています。

【参考となる判例】

  • 概要:中古車販売会社の従業員が退職直前に顧客情報を持ち出して同業他社に転職し、持ち出した顧客情報を利用して、自動車の販売を行った

  • 結果:約1億3000万円の損害賠償命令が下された

    • 参照:大阪地方裁判所平成25年4月11日判決

これまで解説してきた他のケースと違い、法律違反にもなるため、はるかに大きな賠償金額になることがわかります。

6)【事例⑥】研修や留学の直後に退職した

会社の出資で行われた研修や留学の直後に退職した場合も、損害賠償を請求される可能性があります。

会社からすれば、研修や留学にかかった費用が無駄になり、あなたを研修・留学に行かせたことで得られるはずだった利益が失われたといえるからです。

そのためこの要件では、研修や留学にかかった費用がそのまま請求されることが多いです。

とはいえ、請求額がそのまま認められることはなく、大幅に減額されるケースがほとんどです。

7)【事例⑦】退職するとき、他の従業員に転職の勧誘や引き抜きをした

一般的な勧誘の度を超えて引き抜きを行うと、損害賠償が認められるケースがあります。

会社にとって、突然辞める人数が多ければ多いほど、会社にとって大きな損害がでます。

過去の事例でも、重要なポストにあった役員が多数の部下を勧誘して同業他社へ移籍したことで、損害賠償請求されたケースがあります。

【参考となる判例】

  • 概要:会社の売上80%を占める実績を出し、重要なポストにあった役員が多数の部下を勧誘して同業他社へ移籍した。

  • その際、部下20人以上を引き抜いた。

  • 結果:請求額が1億円に対して、最終的に870万円の請求が認められた

とはいえ、この判例では、引き抜きしたのが会社の売上80%を占める実績を出していた役員であり、会社の損害が大きかったことも影響しています。

また、一度に20人も引き抜きできる方も少ないでしょう。

憲法第22条で職業選択の自由が保障されているため、一般的な勧誘の範囲であれば損害賠償の対象にはなりません。

退職する際に、仲のよい同僚を1人〜数人勧誘してみる程度なら問題ないため、ご安心ください。

8)【事例⑧】明らかに会社に損害を与えるトラブルを起こした

ここまで解説してきたケースの他にも、明らかに会社に損害を与えるトラブルを起こしたまま退職した場合も、損害賠償に問われる可能性があります。

明らかに会社に損害を与えるトラブルとは、例えば以下のようなものが挙げられます。

【会社に損害を与えるトラブル例】

  • 他の従業員に暴力をふるった

  • 社内の備品を私物化して返却しない

  • 取引先や顧客とトラブルを起こして会社の立場を危うくした

このようなトラブルを解決しないまま一方的に退職代行を使って辞めるのはリスクが大きいでしょう。

ただし、これらのトラブルは考慮されるべき背景がそれぞれケースごとに異なるため、損害賠償に値するか、一概にはいえません。

思い当たるトラブルがある方は、退職代行を受け付けている弁護士(後の項目で解説)に相談し、対処についてアドバイスをもらってみてください。

3.単なる「脅し」で損害賠償請求されることはあり得るので注意!

退職時に単なる「脅し」で損害賠償請求されることはあり得るので注意!

会社から労働者(あなた)への損害賠償が認められるケースは少ないですし、退職代行を使ったこと自体が損害賠償の理由になることはありません。

ただし、厄介なことに、「脅し」で賠償請求をされるケースは少なからずあります。

請求が認められるかに関係なく、請求自体は自由にできるからです。

実際に支払う必要がないとしても、脅しや嫌がらせ目的で「請求されるだけ」でも、以下のようなデメリットがあります。

【損害賠償請求されるデメリット】

  • 退職の申し出が通らなくなる

  • 請求に対する法的対処が必要になる

  • 訴えられて裁判所へ行くことになれば、心理的・時間的に大きな負担となる

そのため、損害賠償を「払う必要はないから」とたかを括らず、請求自体をされないように対策することがとても大切です。

4.損害賠償を請求されない(訴えられない)ための4つの対策

退職時に損害賠償を請求されない(訴えられない)ための4つの対策

会社が脅しや嫌がらせ目的であなたに損害賠償請求してくる理由は、あなたへの悪意からです。

そのため、請求されるのを防ぐには、なるべく「円満に」退職することが鉄則です。

もっとも、退職代行を使う場合、それ自体が会社への印象を少なからず悪くするのは避けられないでしょう。

ですから、退職代行を使う場合は、それ以外に会社に悪く思われる要素をできる限り排除していることが求められます。

また、脅しでも「損害賠償を請求されかねない」状況であれば、あらかじめ請求に対応できる「弁護士」に退職代行を頼むのも1つの手です。

具体的な4つの対応策について見ていきましょう。

1)退職代行を「非弁業者」ではなく「弁護士」に依頼する

1番安心なのは、退職代行を「非弁業者(=弁護士ではない業者)」ではなく「弁護士」に依頼することです。

「非弁業者」と「弁護士」とでは、退職代行で対応できる範囲が異なるためです。

非弁業者と弁護士の違い

非弁業者は退職の意思を会社に伝えることまでしかできず、会社との「交渉」は全て頼めません。(弁護士法72条

ここでいう「交渉」とは、会社から「損害賠償するぞ!」と言われた時に、法的根拠をもって反論することも含みます。

脅しの損害賠償に対して、しっかりと法的根拠をもって反論できるのは弁護士だけなのです。

また、相手が弁護士とあれば、会社もむやみに「損害賠償する」と言い出す心配もなくなるでしょう。

一方「非弁業者」だと、たとえ脅しや嫌がらせでも損害賠償請求をされるだけで打つ手がなくなります。

会社から「損害賠償を請求する、応じないなら退職はさせない」と返答されれば、「代行業者を入れたのに退職できない」という事態になってしまいます。

このようなリスクを避けるため、「損害賠償を請求されかねない」場合は弁護士に退職代行を依頼することをおすすめします。

2)最低限の引き継ぎはする

ここからは、なるべく「円満に」退職するための対策です。1つ目は引き継ぎについて。

最低限でもいいので、仕事の引き継ぎはしておいた方が損害賠償請求されるリスクは抑えられます。

先の項目で、仕事の引き継ぎをしなくても基本的には損害賠償の正当な理由にはならないと述べました。

しかし、引き継ぎなしで従業員に辞められると、どんな会社でも困りますし、怒るのも無理はありません。

引き継ぎは、会社から求められる正規の手順で行えれば1番望ましいですが、そうもいかない場合も少なくないでしょう。

例えば、本来引き継ぎをするべき人に話しにくかったり、出社はしたくなかったり、様々な問題が考えられます。

そんな場合は、以下のように、あなたのできる範囲で引き継ぎできるよう努めてみてください。

引き継ぎの問題と解決策

なお、退職代行業者は引き継ぎそのものをしてくれませんが、あなたが「引き継ぎ書」などを作成しておけば、それを会社に渡すことはしてくれます。

大事なのは、いっさい誰にも何も引き継ぎしない状態で辞めようとしないことです。

3)無断欠勤は極力しない

無断欠勤は極力しないことをおすすめします。

退職代行を使おうとしている方の多くは会社の業務内容や人間関係に限界を感じている方が多いでしょう。

しかし、無断欠勤は当然会社からの印象がよくありませんし、会社からすれば「無断欠勤によって損害が出た」と訴えやすいのも事実です。

そのため、「無断欠勤するくらいなら早めに退職代行を頼んでしまう」という意識が大切です。

代行業者から退職の意思を伝えて、有給の消化を申し出た上で欠勤する分には、無断欠勤の扱いにはならないからです。

4.万が一損害賠償を請求された場合の2つの対処法

退職時に万が一損害賠償を請求された場合の2つの対処法

万が一、損害賠償を請求された場合の対処法についても、把握しておくことが大切です。

口頭で「訴えてやるぞ」「損害賠償請求してやる」と言われただけの時点では、ただの脅しなので無視で大丈夫です。

しかし、会社から「内容証明郵便」が届いた場合は、「正式」に請求されたことになるのできちんと対応する必要があります。

「内容証明郵便」で正式に請求された場合のやるべきこと・やってはいけないことを解説していきますので、ご確認ください。

1)【やるべきこと】早めに弁護士に相談する

退職代行を使ったことで会社から損害賠償を「正式に」請求された場合、早めに弁護士に相談する必要があります。

内容証明郵便を放置してしまうと、その後は裁判所から訴状が届き、会社が訴訟を起こせば裁判になってしまいます。

また、退職の条件として損害賠償請求されている場合、きちんと対応しなければ退職自体できません。

退職代行絡みでは、「非弁業者に退職代行を依頼して、業者が退職を申し出たら数日後に内容証明郵便が届いた」というケースがよくみられます。

このようなケースでは、「非弁」の代行業者では、法的根拠をもって反論できません。

そのため、もしあなたが非弁業者に依頼していて、正式に損害賠償を請求された場合は、依頼を取りやめて、弁護士に乗り換える必要があります。

逆に、すでに弁護士に退職代行を依頼している場合は、「内容証明郵便が届いた」という旨を弁護士に報告し、適切に対処してもらいましょう。

2)【やってはいけないこと】正式な請求を無視する

会社から正式に損害賠償請求された場合、これを無視するのだけはやめましょう

「内容証明郵便」を無視すると、今度は裁判所から「訴状」が届き、トラブルが裁判へと進んでいきます。

【「訴状」とは】

  • 簡単にいえば、裁判所が、「あなたが民事訴訟を提起された」ことを知らせる書類。

訴状が送達されたのに何もせず放っておくと、あなたなしで裁判が行われ、あなたの言い分はないものとして判決が下されます。

その結果、会社が要求する通りに損害賠償を払わなければならなくなってしまいます。

このような最悪のケースを避けるため、正式な請求を無視せず、弁護士に相談することが大切です。

5.弁護士に依頼しないことで起こる4つのリスク

退職代行で弁護士に依頼しないと損害賠償以外に4つのリスクあり

損害賠償に関するトラブルを避けるには、「非弁業者(=弁護士ではない業者)」ではなく「弁護士」に依頼するのがおすすめだと述べました。

さらに、弁護士に依頼しなければ損害賠償以外にも4つのリスクがある点にも注意が必要です。

【損害賠償以外の4つのリスク】

  1. 業者が会社に追い返され、そもそも退職できない

  2. 不利な退職条件で辞めざるを得ない

  3. 即日退職できないとパワハラ・嫌がらせに遭う

  4. 書類や私物を送ってくれない

上記のトラブルは、弁護士なら対応できる、逆に、非弁業者だと対応できないということです。

退職代行を頼む際は、これらのリスクを考えた上で、どこに頼むか検討してみてください。

1)業者が会社に追い返され、そもそも退職できない

まず1つ目のリスクは、退職代行業者が会社から追い返され、そもそも退職自体ができないことです。

というのも、会社は代行業者の声に耳を貸さず、「辞めたいなら本人から申し出るようにさせます」という対応をすることが多々あります。

先述のように、非弁業者は会社との「交渉」ができないため、それ以上手続きを進められないなってしまうのです。

場合によっては、「会社に退職の意思を伝えましたが、受け入れられませんでした。」と無責任に投げ出す代行業者もあります。

なお、退職代行に失敗するリスクと対策については、以下の記事で詳しく解説しています。

2)不利な退職条件で辞めざるを得ない

2つ目のリスクは、退職条件について交渉できない場合があることです。

退職に際しては、以下のようにさまざまな条件を取り決めます。

【退職時に決めること】

  • 退職時期はどうするか

  • 有給を消化するか

  • 未払い残業代の請求

上記のような退職条件について、あなたにとって不利な条件を押し付けてくるケースがあります。

不利な退職条件を押し付けられる

もちろん、上図ような退職条件は、法律に照らし合わせれば不当なので、きちんと法的根拠をもって反論することもできるはずです。

しかし、交渉力のない非弁業者だと、会社から突きつけられた条件をそのまま受け入れるしかありません。

実際、退職代行で起こるトラブルの中で1番多いのは、このように不当な退職条件を突きつけられながら、それに反論・交渉できないケースです。

対して弁護士であれば、会社との交渉ができるため、あなたの希望する退職条件を実現してくれるでしょう。

3)即日退職できないとパワハラ・嫌がらせに遭う

即日退職できなかった場合は、退職代行を使ったことを理由にパワハラ・嫌がらせを受けるリスクもあります。

民法では、退職の申し出から最短2週間後に退職できることと定められており、その2週間を有休消化にあてることで、実質的な即日退職をする方が多いです。

しかし、有給が2週間分残っていなかったり、業務の引き継ぎをしなければいけなかったりで、退職代行を利用した後も会社に来るよう要求されるケースがあります。

その場合、退職代行を使ったことで上司や同僚からの印象が悪くなり、パワハラ・嫌がらせを受ける場合があるのです。

4)書類や私物を送ってくれないリスクもある

トラブルは、「無事退職できた」と思った後に起こるケースもあります。

会社が、「離職票」などの書類やあなたの私物を送ってくれないというトラブルです

【会社から送ってもらうもの】

  • 書類

    • ・離職票

    • ・源泉徴収票

    • ・健康保険資格喪失証明書

    • ・退職証明書、など

  • 私物

    • ・ノート、ペンなどの文房具

    • ・会社の業務に役立つ学習本

    • ・パソコン、タブレット

    • ・パソコン内のソフト・ツール

    • ・自動車・自転車など

退職代行を使って即日退職する場合、会社に行って上記のような私物を回収してくる機会がないため、会社が送ってくれなければ取り返せません。

しかし、退職代行を使った場合、会社が悪い印象を持っており、嫌がらせ半分で送ってくれないケースが少なからずあるのです。

対策として、退職代行サービスを頼む段階で、私物を送るよう要求したり、書類が遅れた場合の状況確認や発行依頼もしてくれるよう頼んでおくことができます。

しかし、そこまで対応していない業者もありますし、あなた自身が業者に頼んでおかなければ対応してくれないケースもあります。

6.結局、あなたは退職代行を使うべきか?

あなたは退職代行サービスを使うべきか? 3つの判断基準

ここまで解説してきた内容を踏まえた上で、まだ「自分は退職代行を使うべきか」決心がつかない方もいるでしょう。

そこで最後に、あなたが退職代行を使うべきか判断するための3つの基準をあげてみたいと思います。

【退職代行を使うかの3つの判断基準】

  1. 自分で退職を申し出るのがのが辛いかどうか

  2. 賠償請求ふくめてトラブルになりそうかどうか

  3. 費用を考えても代行業者を使うべきか

これらの判断基準をぜひ参考にして、退職代行を使うか決めてみてください。

1)自分で退職を伝えるのが辛いか

まずは、自分で退職を申し出るのが辛いかどうかです。

もともと会社との関係がよくなかった方は、「辞めたい」と言い出すのが精神的に大きな負担になるでしょう。

退職代行を使うことに後ろめたさや、申し訳なさを感じている方もいるかもしれません。

しかし、精神的に限界であれば、割り切って早めに退職代行を使ってしまった方がよいです。

限界がきて無断欠勤をしたり、いっさいの連絡手段を絶って失踪することになれば、会社にとってもあなたにとっても最悪です。

無断欠勤や失踪をすることになれば、損害賠償をはじめ、先に紹介したトラブルが起こるリスクが高まるので、「言い出せないなら退職代行を頼む」という気持ちでいましょう。

2)賠償請求されるなどのトラブルになりそうか

損害賠償や退職拒否、パワハラなどのトラブルになりかねない状況であれば、これも退職代行を使うべきでしょう。

会社の方が労働者個人よりも立場が強いため、「損害賠償を払え」と脅されたりすれば、あなたの力だけで解決するのは難しいです。

会社の理不尽な言いつけから、あなたの正当な権利と利益を守ってくれるのも、退職代行の大きなメリットです。

先の項目でも述べましたが、トラブルになりそうなケースでは必ず非弁業者ではなく弁護士に依頼しましょう。

非弁業者は会社との交渉ができないため、トラブルになれば無力だからです。

3)費用を考えても代行業者を使うべきか

退職代行を使ったほうが楽なのはわかっていても、費用を考えないわけにはいきません。

退職代行サービスの費用は、以下のような相場となっています。

【対象代行の費用相場】

運営元

費用相場

民間企業(非弁)

10,000~50,000円

労働組合(非弁)

25,000~30,000円

弁護士

30,000~100,000円

表からわかるように、会社とのあらゆる交渉に対応してくれる弁護士は非弁業者に比べて費用が割高になっています。

とはいえ、退職を申し出る苦痛や、何を言われるかわからない不安が全てなくなり、会社とのトラブルにも対応してくれると考えれば、決して高くはないでしょう。

一方で、上の表を見て「そんなに払えない」と思った方は、それも1つの適切な判断です。

費用を理由に踏ん切りがつかない方は、一度自分で退職を申し出てみて、実際にトラブルになったら改めて弁護士への依頼を検討してみてもいいでしょう。

よくある質問

退職代行と損害賠償について、よくある質問をまとめました。

Q

試用期間中に退職代行を使って辞めると損害賠償請求されますか?

会社を辞めるのが試用期間中であっても、損害賠償を払う理由にはなりませんのでご安心ください。退職するタイミングが試用期間中というだけでは、会社にとって賠償が必要なほど大きな損害が出るとは認められないからです。なお、「試用期間中に辞めたら損害賠償を払え」ということを上司に言われたとしても、法的根拠はないので、ただの「脅し」と考えていいでしょう。

Q

弁護士に退職代行を頼めば、損害賠償の心配はありませんか?

弁護士に退職代行を頼めば、損害賠償を請求されるリスクはかなり下がるでしょう。相手が弁護士とあれば、会社もむやみに「損害賠償する」と言い出すとは考えられません。また、弁護士は会社と退職条件の「交渉」ができるため、会社から「損害賠償するぞ!」と脅しで言われたとしても、法的根拠をもって反論できます。ただし、「退職代行を利用すること」とは直接関係なく、会社に対する「債務不履行」または「不法行為」を行った場合は相手が弁護士であっても損害賠償請求される場合があります。(詳しくはこちらの項目で解説)

Q

退職代行で損害賠償されたら、弁護士は何をしてくれますか?

退職代行で会社から損害賠償請求された場合、弁護士は以下のようなサポートをしてくれます。

  • 損害賠償に対する反論(法益根拠をもった上での反論)

  • 裁判に発展した場合の法的手続き

  • 損害賠償の減額交渉(損害賠償請求が認められるケースだった場合)

会社は単なる脅しや嫌がらせで損害賠償してくることが多く、弁護士が法的根拠をもって反論すれば、トラブルがおさまるケースがほとんどです。

まとめ

退職代行サービスを「利用すること自体」は、損害賠償を払う理由にはなりません。

またそもそも、民法や労働基準法で労働者の立場が強く守られているため、会社から労働者に対して損害賠償が認められるケースはほとんどありません。

ただし、「退職代行を利用すること」とは直接関係なく、あなたが法的に問題のある辞め方をした場合は、損害賠償が認められる可能性があります。

本記事では、退職時に損害賠償請求が認められるケースとして、以下の8つの事例を紹介しました。

  • 【事例1】契約期間が残っているのに一方的に退職しようとする

  • 【事例2】いっさい引き継ぎをせず、会社が大きな損害を被った場合

  • 【事例3】2週間以上の無断欠勤をしている

  • 【事例4】会社の名誉を傷つけた

  • 【事例5】会社の機密情報を漏らした

  • 【事例6】研修や留学の直後に退職した

  • 【事例7】退職するとき、他の従業員を大勢引き抜いた

  • 【事例8】そのほか明らかに会社に損害を与えるトラブルを起こした

とはいえ上記のようなケースでも、本当に損害賠償が認められるハードルはかなり高いです。

そのため会社からみて多少「好ましくない」退職方法だったとしても、簡単に損害賠償が認められることはないのでご安心ください。

ただし、法的根拠がなくても、会社が「脅し」で損害賠償請求してくることもあるので注意が必要です。

脅しで「請求されるだけ」でも、退職の申し出が通らないなどのデメリットが生じるため、請求自体をされないように対策することがとても大切です。

損害賠償請求されないためには、弁護士に依頼することと、なるべく「円満に」退職することが大切です。

弁護士であれば、退職に失敗することはありませんし、損害賠償以外のトラブルにも全て対応できるため、安心です。

損害賠償を含め、会社とトラブルになりかねない場合は、弁護士への退職代行を検討してみてください。

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