医療関係者へ

脳血管障害

脳梗塞のうこうそく(主にカテーテル治療)

(脳梗塞の治療:血栓を溶かす薬剤の点滴投与・カテーテル治療)

脳梗塞とは

 脳梗塞とは、脳の血管が詰まることにより起こる病気です。脳の神経細胞に血液が行かなくなると、脳の機能が障害されて、症状が出現し、やがて神経細胞が死んでしまうと、脳梗塞が完成します。脳梗塞の範囲が大きいほど、症状は強く現れ、後遺症が残る可能性が高く、死に至ることもあります。

原因

 原因は、不整脈により心臓内にできた血栓が脳の血管に飛んでいくこと(心原性脳塞栓症)、動脈硬化で脳の血管が狭くなった部分に血栓ができること(アテローム血栓性脳梗塞)、脳の細い血管の壁が肥厚して、内腔が狭くなる(ラクナ梗塞)などで起こります。(図1)

症状

 症状は、障害されている部分によって様々ですが、以下の3つが代表的な症状です。①片方の顔の動きが悪い、②言葉が出てこない、ろれつが回らない、③片方の手と足の動きが悪いが特徴的です。これらの症状が3つともあると、85%以上の確率で、脳の損傷が始まっています。(図2) その場合は、直ちに病院で治療を受ける必要があります。

治療・治療の方法

 治療は、できるだけ速く、脳の血液の流れ(血流)をもとに状態に戻すことです。時間が経過すればするほど、脳の神経細胞の障害が進んで、もとに戻らなくなり、脳梗塞が完成するからです。

 治療の方法は、詰まっている血管の血栓を溶かす(薬剤の点滴投与)、あるいは機材(カテーテル、ステント)を使って、血栓を取り除くこと(カテーテル治療)があります。治療を開始するまでの時間がより速いほど、治療は有効で、治療によるリスクも少なくなります。したがって、近大脳卒中センターでは、医師、看護師、薬剤師、放射線技師などの医療スタッフが連携をして、病院到着から90分以内に、脳の血流を再開させることを目標に、実践しています。

治療が可能な患者さんはどんな人か?

 発症から4時間以内に来院したら、薬剤の点滴投与が第1選択となります(薬剤投与できる時間は4.5時間以内です)。薬剤の効果がない時に備えて、カテーテル治療の準備も同時に行い、血栓がまだ存在する時は、カテーテル治療を行います。発症から4時間を過ぎて来院したら、薬剤の点滴投与を行うことができないため、より詳しいMRIの検査をし、助けることができる脳組織がある場合は、直ちにカテーテル治療を行います。カテーテル治療が行えるのは、おおよそ発症から6~8時間以内の患者さんです。つまり、発症から時間が経過し、検査の結果、脳梗塞が完成している場合は、これらの治療を行うことは、さらに状況を悪化させることがあるため、行えません。発症から治療までの時間が重要です。(図3)

薬剤の点滴投与か、カテーテル治療か?

 どちらの治療も適正に行うと、科学的に有効であると根拠が示されています。しかし、より大きな血管が詰まっている、薬剤投与の制限時間に迫っている場合は、薬剤投与が無効であることが多く、カテーテル治療を第1選択として行う方が良いと考えています。この場合でも、当センターでは、遅れることなく、カテーテル治療が行える状態になっています。

 カテーテル治療の効果判定には、有効再開通率や機能自立度(mRS)を使用します。有効再開通とは、詰まった血管が全て再開通した(全再開通)、詰まった血管の半分以上が再開通した(部分再開通)状態を言います。当センターでは、有効再開通率は84.9%です。退院時の機能自立度では、介助なしで身の回りのことができ、歩行ができる以上に良くっている方は45.2%となっています。中等度の後遺症がある方でも、さらにリハビリで回復する見込みがあります。(表)

近畿大学病院救命救急センター

 治療技術の熟練、医療機器の進歩、医療スタッフの訓練により、脳の血管の再開通時間(病院到着から再開通までの時間)は、かなりの時間短縮が可能となっています。脳梗塞による後遺症を少なくするためには、より速く発見し、より速く適切な病院に来院・搬送し、より速く治療を開始する必要があります。当センターでは、救急指令本部からの要請により、救急患者のいる現場に、ドクターカーで出動しています。現場で診察し、脳卒中と診断した場合は、必要な治療を開始し、当センターとの連携により、早期再開通に向けての準備を行っています。しかし、患者さん自身を発見をすることは不可能です。ご家族、同僚、友人のためにも、脳の血管が詰まった症状を覚えて、発見時は救急車を呼びましょう。(図4)

報道関係者の方へ(コメント可能な医師)

専門の担当医師
講師 布川 知史