ワクチンを接種していないとどうなるの?

体内にウイルスや細菌が入ってきた際にワクチンを接種していないと、免疫が作られていないため、感染症を発症したり、重症化したりするリスクが高まってしまいます。特に、高齢者や基礎疾患がある方は、感染症が重症化する危険度が高いとされています。

感染症の種類や感染経路などを知って、しっかりと予防しましょう。

1ウイルスと細菌について
ウイルスと細菌の違い
ウイルスと細菌は肉眼では見えず、人の体に入って増殖すると様々な症状(感染症)を引き起こします。ウイルスと細菌は似たようなものに思われがちですが、実は、サイズや増殖の仕方など、ウイルスと細菌は大きく異なっています。両者の違いを詳しく見ていきましょう。
大きさ比較
ウイルスと細菌の違い

出典:農林水産省

(https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/bacteria.html)を加工して作成

ウイルスの構造
ウイルスは、ゲノムとして核酸であるDNA若しくはRNAを持ち、それを表面タンパク質で包んだ構造をしています。 ゲノムにはウイルスの複製に必要な遺伝情報がコードされています。
ウイルスの構造
一般的にウイルスは大きく2通りに分類されます。
表面タンパク質の外側にエンベロープと呼ばれる脂質二重膜(エンベロープ)をもつエンベロープウイルスと、もたない非エンベロープウイルスがあります。
ウイルスの構造2
エンベロープウイルスには新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどがあります。
非エンベロープウイルスにはノロウイルス、ロタウイルスなどがあります。
コロナウイルスは、RNAを遺伝子として持ち、スパイクタンパク質が王冠のように見えることから「コロナウイルス」と命名されました。
ウイルスの構造2
2感染のメカニズム
感染症は、ウイルスや細菌が体に入り増殖することによって引き起こされます。ウイルスは単独では増えることができず、ヒトや動物の細胞に侵入し、遺伝子の材料やタンパク質を利用して自らのコピーを増やしていきます。細菌は、適切な環境のもとでは単独で増えることができます。増えたウイルスや細菌は、細胞に障害を与えたり、毒素を出して様々な症状を引き起こしたりします。
ウイルスは表面タンパク質を細胞の受容体に結合して細胞に侵入します。
ウイルスの遺伝子が細胞内部に入ると遺伝子を複製する情報、タンパク質を複製する情報がmRNAによって指示され、ウイルスが複製されます。
ウイルスの感染経路
感染の経路
病原体(ウイルスや細菌)が体の中に侵入する経路は大きく分けて「垂直感染」と「水平感染」の2種類があり、「垂直感染」とは一般的に母子感染と呼ばれているものです。「水平感染」の感染症の感染経路には主に、「接触感染」、「飛沫感染」、「空気感染」があります。細菌やウイルスの種類によって感染経路は異なります。
例えば、インフルエンザの主な感染経路は、感染者のくしゃみや咳で出るしぶきを吸い込むことによる「飛沫感染」、感染している人の唾や鼻みずが手から手へ、またはドアノブなどを介してウイルスが付着することによる「接触感染」です。
感染の経路

出典:厚生労働省ホームページ

(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/inful_nyumon.html)をもとに編集

ヒトの免疫の仕組み
ウイルスが感染するとヒトのカラダは、「免疫」という仕組みでウイルスと戦います。免疫には自然免疫と獲得免疫があります。
自然免疫は、いち早くウイルスを攻撃するとともにウイルスの特徴を獲得免疫に伝達します。
獲得免疫は、ウイルスの情報を自然免疫から受け取り、ウイルスに対抗するための抗体などをつくります。
ヒトの免疫の仕組み
獲得免疫による攻撃
ウイルスの表面タンパク質に結合して細胞の受容体に結合できなくする抗体を「中和抗体」といいます。中和抗体はヒトの細胞に侵入できないようにして仲間を増やせないようにします。さらに、中和抗体で取り囲まれたウイルスは免疫細胞が食べやすくなります。また、ウイルスに侵入されたヒトの細胞は細胞障害性T細胞がやっつけます。
体内に抗体ができることは、その病原体に対しての免疫ができたことの指標になります。この状態をウイルスに感染する前に作っておくのがワクチンの目的です。
ヒトの免疫の仕組み ヒトの免疫の仕組み ヒトの免疫の仕組み
3感染症を予防するには
ワクチンで予防できる感染症をVPDと呼び、麻しん、風しん、ポリオ、水ぼうそう、ジフテリアなどの感染症が該当します。
これらの病名を聞いても「幼い頃にワクチン接種をしているから問題ない」と思われるかもしれませんが、予防接種による免疫力は、時間の経過と共に弱くなるものもあります。大人になって感染症にかかると重症化したり、合併症を引き起こしたりする場合もあるため注意が必要です。
様々なワクチンが開発され、予防できる感染症が増えてきています。
自分だけでなく、家族や周りの人のためにもワクチン接種で感染症を予防しましょう。

(2023年5月現在)

VPDの画像
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