第2節 時代に合った構造的な地域づくり

コラム 大都市圏郊外におけるまちづくり(柏市豊四季台団地における取組み)

 東京、大阪、名古屋の三大都市圏においては郊外部を中心に高齢者の絶対数が増加することが予想され、今後、医療福祉施設が不足し、サービス機能が麻痺するおそれがあります。
 高齢者人口増加の背景として、高度成長期における大都市圏への人口集中への対応のため、大都市郊外部においてニュータウンの整備が進められたことが挙げられます。同一時期に大量かつ画一的な住宅供給が行われ、同一世代の一斉入居が進んだため、郊外ニュータウンにおける人口は、偏った年齢構成となっています(図表2-2-48)。また、多くの住宅が築30年以上を経過しており、設備の老朽化や、バリアフリー未対応の住宅等建物自体にも課題が生じています。
 
図表2-2-48 公的賃貸住宅及びUR賃貸住宅における年代別世帯比率
図表2-2-48 公的賃貸住宅及びUR賃貸住宅における年代別世帯比率
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(大都市近郊の公的賃貸住宅団地)
 今後、急速に高齢化が進行することに伴い、大都市郊外の公的賃貸住宅団地等では、医療・介護サービスへのニーズが拡大していく一方で、それらを満たすための環境整備が大きな課題となっていくことが予想されるため、高齢者が健康に暮らすことができ、子育て世代にとっても子育てしやすいなど、多くの世代が住みやすい地域を構築することが喫緊の課題となっています。以下では、郊外団地再編の取組みとして、東京近郊の千葉県柏市の豊四季台団地における取組みを紹介します。

■柏市豊四季台団地における取組み
 千葉県柏市は、他の郊外団地同様に高度経済成長を機に人口が増加したまちです。そのため、団塊世代とその子にあたる世代である「団塊ジュニア」世代の人口が多くなっており(図表2-2-49)、2025年には75歳以上人口が現在の2倍以上となるなど、急激に後期高齢化が進行することが予想されます。
 
図表2-2-49 柏市の年齢階級別人口
図表2-2-49 柏市の年齢階級別人口

 中でも市内の豊四季台団地は、すでに高齢化率が40%を超えており、将来の日本の都市部における高齢化の象徴的地域となっています(図表2-2-50)。
 
図表2-2-50 豊四季台の高齢者人口割合(2010年)
図表2-2-50 豊四季台の高齢者人口割合(2010年)
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 このため、柏市は東京大学及び独立行政法人都市再生機構(以下「UR都市機構」という。)と連携して、「住み慣れた場所で自分らしく老いることができるまちづくり:Aging in Place」の実践に向けた取組みを進めています。
 まちづくりの基本方針として「いつまでも在宅で安心した生活が送れるまち」、「いつまでも元気で活躍できるまち」の2つを掲げ、その具体的な施策としては、「地域包括ケアシステムの具現化」及び「高齢者の生きがい就労の創成」を二本柱として、UR都市機構の建替事業が進行中の豊四季台団地を含む豊四季台地域を中心に市内全域において事業展開を行っています(図表2-2-51)。
 
図表2-2-51 将来の豊四季台地域のイメージ
図表2-2-51 将来の豊四季台地域のイメージ

 厚生労働省が推進している「地域包括ケアシステム」とは、高齢者が住み慣れた地域において在宅での暮らしを継続できる社会の実現のために必要な支援体制のことです。その方針として「おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏」において、介護、医療、予防、生活支援、住まいの5つの機能を整備することが掲げられています。
 豊四季台団地では、団地内にサービス付き高齢者向け住宅や地域医療拠点を誘致し、在宅での医療、看護、介護サービスを受ける体制を整えることで安心して生活できる環境を整えるとともに、子育て世帯等の入居促進や、多世代が食を楽しむコミュニティ食堂の誘致等多世代が暮らせる住環境を構築していくことを目指しています。
 また、国土交通省においては、2014年8月に「健康・医療・福祉のまちづくりの推進ガイドライン」を公表しており、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を営むことができるよう、健康・医療・福祉の視点から包括的に支援を行う「地域包括ケアシステム」と連携したまちづくりを推進しています。


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