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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチ

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第1章 わが国自身の防衛体制

第1節 わが国の防衛力の抜本的強化と国全体の防衛体制の強化

1 わが国の防衛力の抜本的強化

1 防衛力の意義

わが国の防衛の根幹である防衛力は、わが国の安全保障を確保するための最終的な担保であり、わが国に脅威が及ぶことを抑止するとともに、脅威が及ぶ場合には、これを阻止・排除し、わが国を守り抜くという意思と能力を表すものである。この意味で、防衛力は他のいかなる手段によっても代替できるものではない。このようなわが国に必要不可欠な防衛力として、陸自、海自及び空自が存在している。

国民の命と平和な暮らし、そして、わが国の領土・領海・領空を断固として守り抜くことは、わが国政府の最も重大な責務であり、安全保障の根幹である。

わが国を守り抜くのはわが国自身の努力にかかっていることは言うまでもない。自らの国は自らが守るという強い意思と努力があって初めて、いざというときに同盟国などと共に守り合い、助け合うことができる。

脅威は能力と意思の組み合わせで顕在化するところ、意思を外部から正確に把握することには困難が伴う。国家の意思決定過程が不透明であれば、脅威が顕在化する素地が常に存在する。

侵略という意思を持った高い軍事力を持つ国から自国を守るためには、力による一方的な現状変更は困難であると認識させる抑止力が必要であり、相手の能力に着目した自らの能力、すなわち防衛力を構築し、相手に侵略する意思を抱かせないようにする必要がある。

戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、その厳しい現実に正面から向き合って、相手の能力と新しい戦い方に着目した防衛力の抜本的強化を行っていく。

以上のことを踏まえつつ、力による一方的な現状変更やその試みから、国民の命と平和な暮らしを守っていくため、防衛力を抜本的に強化し、その努力をさらに加速して進めていく。

参照図表III-1-1-1(防衛目標を実現するための3つのアプローチ(イメージ))

図表III-1-1-1 防衛目標を実現するための3つのアプローチ(イメージ)

2 今後の防衛力

わが国はこれまで、宇宙・サイバー・電磁波の領域と陸・海・空の領域を有機的に融合させつつ、統合運用により機動的・持続的な活動を行い得る多次元統合防衛力を構築してきた。

しかし、これまでの航空侵攻・海上侵攻・着上陸侵攻といった伝統的なものに加えて、精密打撃能力が向上した弾道・巡航ミサイルによる大規模なミサイル攻撃、偽旗作戦をはじめとする情報戦を含むハイブリッド戦の展開、宇宙・サイバー・電磁波の領域や無人アセットを用いた非対称的な攻撃、核保有国が公然と核兵器による威嚇ともとれる言動を行うなど、これらを組み合わせた新しい戦い方が顕在化している。そのため、抜本的に強化された防衛力は新しい戦い方に対応できるものでなくてはならない。

さらに、抜本的に強化された防衛力は、防衛目標であるわが国自体への侵攻をわが国が主たる責任をもって阻止・排除できる能力でなければならない。こうしたことを踏まえ、今後の防衛力については、相手の能力と戦い方に着目して、わが国を防衛する能力をこれまで以上に抜本的に強化し、いついかなるときも、力による一方的な現状変更とその試みは決して許さないとの意思を明確にしていく必要がある。

防衛戦略に掲げる、新しい戦い方に対応するために必要な機能及び能力は次のとおりである。まず、遠距離から侵攻戦力を阻止・排除するための、①スタンド・オフ防衛能力、②統合防空ミサイル防衛能力である。次に、抑止が破られた場合、これらの能力に加え、領域を横断して優越を獲得し、非対称的な優勢を確保するための、③無人アセット防衛能力、④領域横断作戦能力、⑤指揮統制・情報関連機能である。さらに、迅速かつ粘り強く活動し続けて、相手方の侵攻意図を断念させる、⑥機動展開能力・国民保護、⑦持続性・強靱性である。

以上のような考え方のもと、今後は、宇宙・サイバー・電磁波領域を含む全ての領域における能力を有機的に融合し、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能とする多次元統合防衛力を抜本的に強化していく。