バセドウ病・橋本病の主な症状、検査の目安、治療について解説

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甲状腺とは?

「甲状腺」は首の前側、喉仏の下にある内分泌臓器。蝶が羽を広げたような形で、重さは13グラムくらいです。この臓器から「甲状腺ホルモン」というホルモンが、一生涯ずっと一定の量分泌され続けます。この甲状腺ホルモンは、人間のエネルギーの元であり、元気の源とも言われています。

甲状腺ホルモンが過剰になる病気の代表が「バセドウ病」、逆に低下してしまう病気の代表が「橋本病」です。男性にも発症しますが、女性に多く見られるのが特徴です。

バセドウ病の主な症状

バセドウ病の主な症状

甲状腺ホルモンが多く分泌されるバセドウ病の主な症状の一つが、首の腫れです。甲状腺が腫れて大きくなるため、首が太くなります。痛みはありません。
続いて、目の異常です。眼球が突出してきます。ただし、目の症状が出る人は多くありません。また、甲状腺ホルモンの過剰な分泌によって、さまざまな症状が起こります。息切れ、動悸、手指・足の震え、汗をかく、暑がり、やせる、などです。

これこそが甲状腺の病気という症状はありませんが、「暑がり」か「寒がり」かというのは大きな目安となります。
バセドウ病の場合、ホルモン分泌が高くなると暑がりになり、夏バテしたような症状が出るのが特徴的です。

橋本病の主な症状

橋本病の主な症状

橋本病は、甲状腺ホルモンが少なくなる病気です。主な症状としては、バセドウ病と同じで、首の腫れです。
そのほか、甲状腺ホルモンが低下したことによって、無気力、物忘れ、筋力低下、寒がり、疲れやすい、肌がカサカサしてくるなどの症状が起こってきます。

橋本病の特徴として「寒がり」になります。
他の人が薄着をしているのに、一人だけ厚着をしないと我慢ができない、夏でもストーブをつけてしまう、というようなこともあります。
極端な「暑がり」か「寒がり」かは、甲状腺の異常を疑うポイントになります。

甲状腺の異常 自分でチェックできる?

バセドウ病 首の腫れの写真

バセドウ病や橋本病になると、びまん性甲状腺腫大といって、甲状腺全体が腫れて大きくなります。 外から触れて輪郭を感じるほどの腫れがある場合は、バセドウ病か橋本病の疑いがあります。ただし、首が大きく腫れることはまれで、ほとんどの場合は自分ではわかりません。

甲状腺の検査を受ける目安は?

検査を受ける目安は、以下の症状が現れた場合です。

  • バセドウ病
    手足にこれまでにない震えが出る、そんなに動いていないのに強い疲れを感じる、食事をしっかりとっているのに痩せてきたなど。
  • 橋本病
    無気力になる、朝の目覚めが悪い、それほど多く食べていないのに身体がむくんで体重が増えてきた、便秘、うつのような症状など。

いつもとなんだか違うと感じることがあれば、甲状腺の検査を受けましょう。

甲状腺の検査とは

甲状腺の検査は、血液検査と超音波検査です。
血液検査で、その時の甲状腺ホルモンの状態がわかります。超音波検査では、甲状腺の形を見て、腫れや腫瘍などがないかを調べます。

血液検査はどこの病院でもできる体制があります。ただ、人間ドックや健康診断の基本検査項目には入っていないため、気になる場合は人間ドックのオプション検査を受けたり、かかりつけ医に相談してください。

バセドウ病と橋本病のメカニズム

甲状腺ホルモン分泌の
脳の下垂体から甲状腺刺激ホルモンが出る

「甲状腺ホルモンを出しなさい」という指令を出すのは、脳の下垂体です。
ここから甲状腺刺激ホルモンが出て、甲状腺にあるスイッチを押すと、必要な量の甲状腺ホルモンが分泌されます。このスイッチがどれくらい押されるかによって分泌されるホルモンの量が増えたり、減ったりします。

バセドウ病の場合

バセドウ病の場合、大量の甲状腺ホルモンが分泌される
下垂体からの刺激ホルモンの値(TSH)は低くなる

バセドウ病の場合、このスイッチを押す自己抗体(TRAb、TSAb)が作られてしまいます。
抗体は、本来、ウイルスや細菌から体を守るためのものですが、自分の体の細胞や組織に対する抗体が自己抗体です。
この自己抗体が甲状腺を刺激するため、大量の甲状腺ホルモンが分泌され、さまざまな症状を引き起こします。

バセドウ病は、血液検査によって自己抗体「TRAb」の値を調べると、明確に診断できます。「TRAb」の刺激により、甲状腺ホルモンが出過ぎてしまうため、下垂体からの刺激ホルモン(TSH)の値は低くなります。

橋本病の場合

攻撃された甲状腺には慢性的な炎症が起こり、甲状腺ホルモンの分泌が低下

橋本病の場合は、甲状腺の細胞を攻撃する自己抗体(TPOAg、TgAb)が作られます。
そのため、攻撃された甲状腺には慢性的な炎症が起こり、甲状腺ホルモンの分泌が低下してしまいます。
橋本病にかかっても、多くの人は、ホルモンは正常のまま一生涯過ごすことができます。しかし1~2割の人は、甲状腺機能低下症になり、治療が必要になります。

バセドウ病の治療

バセドウ病の治療法は3種類があります。薬物治療法、アイソトープ治療、手術です。

薬物治療

バセドウ病の薬物治療

最も使用される「抗甲状腺薬」は、甲状腺からの過剰なホルモン分泌を抑える薬です。この薬がなかなか効かない場合や、この薬で副作用が出た場合、「無機ヨウ素」を使用します。「β遮断薬」は心臓の薬です。バセドウ病では、頻脈などの不整脈が起こることがあるため、そのときに使用します。

アイソトープ治療

バセドウ病のアイソトープ治療

抗甲状腺薬の効果がなかったり、副作用がある場合に行われるもう一つの方法がアイソトープ治療です。
放射性ヨウ素の入ったカプセルをのみ、ヨウ素が甲状腺に集まる性質を利用して甲状腺の細胞を壊し、ホルモンが作られ過ぎるのを抑えるものです。

手術

バセドウ病の手術

最近は検査法の進歩で、薬によるコントロールがしやすくなったため、手術が適用になる場合は減っています。
ただ、甲状腺があまりにも肥大してしまった場合や、薬やアイソトープ治療が効かない場合などは、手術を行います。その場合、全摘出手術が基本となります。

バセドウ病の手術は全摘出が基本

甲状腺を全部とってしまうと、甲状腺ホルモンは出なくなりますが、ホルモン剤を飲み続ければ普通の生活ができます。

橋本病の治療

橋本病の場合は、経過観察をしながら、必要であれば薬物療法を行います。橋本病ではあるけれど、ホルモンの機能は正常という場合も多いのです。
中には、ヨウ素を過剰に取り過ぎたことが原因で橋本病を発症する人がいるため、ヨウ素が含まれている昆布やサプリメントなどを控えてもらい、甲状腺機能をチェックしていきます。

治療が必要になる場合には、甲状腺ホルモン剤を使用します。橋本病の場合、甲状腺ホルモン剤を飲むと、急激に元気になることが多いです。

妊娠・出産は大丈夫?

治療を続けながら、妊娠・出産は可能です。

バセドウ病の方が妊娠を計画する場合には、抗甲状腺薬を上手に使う必要があります。
また使い方も妊娠の初期・中期・後期で変えながらコントロールすることで、安全に出産することができます。
橋本病の場合は、甲状腺機能低下症の状態で出産すると、赤ちゃんの発達に影響するという報告があります。そのため、甲状腺機能を正常値に保つための、ち密なコントロールが必要になります。

いずれも、担当医が連携しながら進めれば、妊娠も出産も問題なくできます。

甲状腺の病気 気になる症状があればチェックを!

ちょっとでも気になる症状がある場合、特に40歳以上の女性は、健康診断のつもりで、一度甲状腺のチェックをしてみてください。血液検査と超音波検査で、ほとんどの場合、診断がつくので、躊躇せずに検査を受けてみましょう。

バセドウ病・橋本病に関する質問

『Q&A 甲状腺の病気』はこちら

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年6月 号に掲載されています。

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