エキスパートが伝授する、自重トレーニングで得られる10のメリット

スポーツ&アクティビティ

トップレベルのトレーナーとエキスパートが、全体的な健康と筋力を整える上で鍵となるシンプルな運動についてアドバイス。

最終更新日:2022年7月26日
この記事は12分で読めます
自重トレーニングで得られる10のメリットをエキスパートが解説

自重トレーニングは、バランスの取れたフィットネスルーティンで重要な基盤の役割を果たす。 体重を利用した運動をワークアウトに組み込むことは、どんなフィットネスレベルの人にも効果的だ。

「自重[トレーニング]は初心者に最適です。プッシュアップやスクワットのような基礎的な動きを身につけるには、まず体重の使い方を学ぶ必要があるからです」と話すのは、認定ストレングス・コンディショニングスペシャリスト(C.S.C.S.)の資格を持ち、ニューヨークのTS Fitnessの創業者でCEOを務めるノーム・タミール。 「上級者になると、ブルガリアン・スプリット・スクワットのような、より難しい動きに発展させることができます。自重スクワットより強い安定性と筋力が必要になるエクササイズですね。 さらにジャンプを加えれば、瞬発力が鍛えられます」

エキスパートが伝授する、自重で行う運動をフィットネスのルーティンに取り入れるメリットをチェックしてみよう。

1. 日々の生活に役立つ

プッシュアップ、ランジ、スクワットといった自重トレーニングは、日常生活で行う多くの動作パターンの訓練になる。 たとえば、椅子から立ち上がる動作は、基本的にスクワットと同じだ。

「自重トレーニングを行うと実用的な体力が向上します。生活で実際に行う動きを真似たトレーニングで、多くの筋群と関節が互いに支え合ってセットごとの動きが完成するのです」と説明するのは、ベン・ウォーカー。彼は認定パーソナルトレーナーで、 EQFレベル4を取得しており、アイルランドのダブリンでAnywhere Fitnessを経営している。 「しなやかな体作りに役立ち、関節の可動域が広がります。 いわば、色々な筋群に働きかけながら、複数の関節を動かす多関節運動です」

2. 筋力がつく

自分の体重を使って負荷をかけることで、筋肉を増強し、維持できる。 米国運動協議会(ACE)によると、自重トレーニングは筋肉に負荷をかけ、筋肉組織にダメージを与えることで成長を促す。 ただし、筋肉の増強を継続させるためには、習慣的に筋肉に負荷をかけ続ける必要がある。

タミールはこう説明する。「レベルが上がるほど、体重を使って筋肉に負荷をかけるのは難しくなります。筋肉の成長を促すには、十分な抵抗がかかるハードな方法を見つけなければならないからです。 自重トレーニングだけで筋肉を鍛え続けようとするなら、トレーニングに変化を持たせる必要があります」

変化を付けたい要素は、テンポ、アレンジ、量の3つだと、タミールはアドバイスする。 テンポを変えて負荷を高めるには、筋肉に負荷をかける時間を長くして運動をゆっくり行うか、またはスピードを上げる。 ACEによれば、運動のエキセントリックフェーズ(たとえばスクワットでは腰を下げていくとき)により意識して取り組むと、筋肉繊維の損傷を促進し成長につなげることができる。

さまざまにアレンジした自重トレーニングを行うことでも負荷を高められる。 たとえば、タミールがすすめるのは、片脚で行うシングルレッグスクワットのような、体の片側で行う運動だ。 ただし、安全を期すため、まずは両側を使っての運動をマスターすることから始めるのがよい。

そして、回数やセット数を増やして運動の量を増やすことも筋肉の成長促進に役立つ、とタミールは話す。

筋肉量が減少し、筋力が低下するサルコペニアのリスクが高い高齢者にとっても自重トレーニングはかなり効果的だ。 『Geriatrics Gerontology』に2019年に掲載された研究で、サルコペニアと診断された高齢者たちが、自重トレーニングと並行してプロテインとビタミンDのサプリメントを摂取したところ、筋肉量と筋力が向上したことが示された。

3. コアの安定性とバランスが向上する

コアの強化は、運動パフォーマンスの追求に欠かせないだけでなく、バランスや身体意識の向上の鍵をも握っており、長い目で見るとけがの予防(またはけがからの回復)にも役立つ。

ウォーカーはこう説明する。「自重トレーニングでは、第一ターゲットまたは第二ターゲットとして常に腹筋に働きかけるため、コアの強化に効果的です。 腹筋が第一ターゲットとなる、アレンジを加えたプランクほどではないとしても、スクワット、ランジ、プッシュアップ、プルアップなどの運動では、安定性を維持するために常に腹筋を使います。 こういったすべての運動で、コアが強化されるのです」

2019年に『Journal of Athletic Training』に掲載された研究論文によると、コアの安定性を強化するトレーニングは、下肢と体幹の力学的機能の改善に役立ち、スポーツによるけがの予防につながるという。 同様に、2018年に『Physical Therapy in Sport』に掲載された系統的レビューでは、コアの安定性の不足と健康なアスリートの下肢における負傷に関連性が認められている。

体の片側を使う運動ではコアも鍛えられると、ウォーカーは続ける。 ウォーカーの説明によると、たとえば段差を上るときは片側の脚で全体重を支えることになる。 体はコアの筋肉を使ってバランスを保ち、動作を助けなければならない。 さらに、「運動感覚が養われ、コーディネーションが向上します」とウォーカーは補足する。

4. 初心者がウェイトを取り入れる準備に役立つ

トレーニング初心者や、ブランクを経てワークアウトを再開する人には、レジスタンスバンドやダンベルなどの器具を使って本格的に鍛える前に、まず自重トレーニングを行うのがおすすめ。

しっかりしたフォームと自重を使う運動パターンを身につけることは、器具を使って負荷を加える上で必要な筋力の強化につながるからだ。

「パフォーマンスを最大限に高め、けがのリスクを減らすために、ウェイトを導入する前にトレーニングのフォームを習得する必要があります。 たとえば、シングルレッグデッドリフトで股関節を蝶つがいのように曲げ伸ばしするヒンジの動きが身につけば、ウェイトを使うデッドリフトを効果的に行えるようになるのです」

筋肉を増強させる筋肥大を目指すトレーニング上級者にとっても、これは同じだ。

「[筋肥大は]通常、可能な限り重いウェイトを8-12回持ち上げることで成果が現れます。 これができるようになる前に、筋肉や関節が悲鳴を上げたり、けがに発展したりすることがないように、準備が必要です」とウォーカーは話す。

つまり、自重トレーニングでは、低い負荷で何度も繰り返し筋群に働きかけることで、より重い負荷に対応できる筋力を養うことができるのだ。ウォーカーはこう補足する。

「損傷して修復する筋繊維の能力はゆっくり向上します。 数週間続ければ、筋力増強を目指してダンベルやケトルベル、バーベルをワークアウトに導入できるようになります」

5. 柔軟性や可動性が向上する

自重を使うストレッチを毎日行えば、関節の可動域が自然に広がって筋肉がしなやかになり、ワークアウトの一つひとつの運動を効果的に行えるようになる。 関節や筋肉をあまり動かさないでいると、やがてこわばり、硬くなっていく。

ストレッチには、ダイナミックとスタティックの主に2つの方法がある。 Cleveland Clinicの説明によると、ダイナミックストレッチは関節を積極的に動かす方法で、筋肉が温まり血行が良くなるため、一般的にワークアウト前のウォームアップにおすすめ。 一方、スタティックストレッチは、一定の姿勢を数秒間保ち、筋肉を緩めるというやり方なので、ワークアウト後のクールダウンに最適。

ダイナミックストレッチは関節の可動域を広げ、筋力とパワーを向上させる効果があることからワークアウト前の運動に最適であるという結果が、2017年、『Sports Medicine』上で発表されたレビュー論文で示されている。 一方、『Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports』に2012年に掲載されたレビュー論文は、スタティックストレッチはパフォーマンスの妨げになるため、ウォームアップとしては避けるべきだと指摘している。

全米スポーツ医学協会(National Academy of Sports Medicine)によると、可動性と柔軟性を高めるストレッチは、けがのリスクの軽減、痛みの緩和、筋力のアンバランスの予防、さらに姿勢の改善(後半で詳しく説明する)に効果があるという。

可動性と柔軟性を高める自重のストレッチでは、さまざまな動きを行う。 ウォームアップやクールダウン時には、関節の動きを正常に保ち、筋肉のしなやかさをキープしてトレーニングの効果を高めるために、必ずストレッチを取り入れよう。

6. 自重を使う高負荷インターバルトレーニング(HIIT)を行うとエクササイズ後の代謝が高まる

バーピー、スクワットジャンプ、マウンテンクライマーは、汗をかく自重トレーニングのほんの一例だ。 「自重トレーニングでカロリーを多く消費する効率的な方法の一つは、負荷の高い運動と休憩を交互に繰り返す高負荷インターバルトレーニング(HIIT)。HIITを行えば、ワークアウト中にカロリーを消費するだけでなく、ワークアウト後のアフターバーン効果も期待できます」とタミールは説明する。

自重を使ったレジスタンストレーニングで筋肉がつけばつくほど、代謝率はさらに上がるとタミールは続ける。

7. 心肺機能と筋力を両方強化できる

時間に追われていても、自重トレーニングなら、心肺持久力と筋力を同時に強化できる。

「自重トレーニングでダイナミックな運動を繰り返し、有酸素運動と筋力トレーニングを効果的に組み合わせることができます。 運動量が多く、体重を効果的に使うワークアウトにより心拍数が上昇し、筋繊維の損傷が起こります」とウォーカーは説明する。

具体例として、ランジ、スクワット、ステップアップ、さまざまなプランクワークアウトが挙げられる。 こういった運動は、速いペースで体を動かすため、多様な筋群に働きかけながら心拍数を上昇させる。 前後、左右、回転などさまざまな動きでアレンジすることも、心肺機能と筋力の向上に役立つ。

「ランジは前や後ろに足を踏み出して行います。 スクワット、ステップアップ、プランクは、左右の動きを加えることができます。 どの運動も有酸素運動の負荷を高め、コア、腰、上半身の機能性の向上にも役立ちます」とウォーカーは話す。

8. 正しい姿勢の維持をサポートする

デスクワークをしているか、悪い姿勢で長時間座ったままでいると、肩が前方に出たり腰が曲がったりして、凝りや痛みを感じるようになることがある。時間をかけて少しずつ現れる症状だ。 こうした場合の姿勢改善には、幸い、自重を使うストレッチやトレーニングが役立つ。

グルートブリッジ、プッシュアップ、スーパーマンといった自重トレーニングを行うと、関節と筋肉を本来の位置に矯正でき、姿勢の改善効果が期待できる。 また、胸筋、股関節屈筋、大臀筋のような筋肉も強化できる。これらの筋肉は、座ったままでいることで硬くなったり弱くなったりしやすい。

9. ストレスを和らげる

自重トレーニングを含め、あらゆるトレーニングには、気分を高めるエンドルフィンを分泌させる効果がある。 ウォーキングやランニング、またはHIITであれ、ほんの数回のバーピーであれ、体を動かすことには、ストレスフルな状況を忘れさせる力がある。

2013年に『British Journal of Sports Medicine』で発表されたレビュー論文では、資格を持つ専門家によって処方された抗うつ治療に加えて運動を行うと、不安障害に悩む人の不安症状が軽減できることが示されている。

グループで取り組むフィットネスによって、ストレスが軽減し、メンタルヘルスが改善することを証明した調査もある。 2017年に『Journal of Osteopathic Medicine』で発表された研究では、1年生と2年生の学生を募集し、12週にわたって30分のグループフィットネスのクラスを実施。この調査の結果、運動により、知覚されるストレスが大幅に減り、身体面、精神面、感情面での健康が向上したことがわかった。

10. 場所や時間を選ばない

自重トレーニングの最大のメリットは、応用が利き、ワークアウトに十分なスペースがあれば、事実上どこでもできるという点だろう。 しかも、回数やテンポを変えたりアレンジしたりするだけで、強度や難しさのレベルを簡単に調整できる。

「体がジムの役割を果たすので、器具を持って出かける必要がありません。 15-60分のワークアウトでトレーニングは完璧。 ブランクの後、ジム通いを再開しようかどうか悩んでいる人にとっても、本格的に始める前の足がかりとして自重トレーニングはうってつけです」とウォーカーは話す。

自重トレーニングで得られる10のメリットをエキスパートが解説

トレーニングの効果を最大化するためのヒント

トレーナーとエキスパートから、心と体を鍛えるための無料ガイダンスを入手しよう。

文:ティファニー・アユーダ

公開日:2022年4月21日

関連するストーリー

腰の可動性を大きく向上させるエクササイズとストレッチを理学療法士が解説

スポーツ&アクティビティ

腰の可動性を大きく向上させるエクササイズとストレッチを理学療法士が解説

レジスタンスバンドを使った胸のエクササイズ:トレーナーおすすめの7選

スポーツ&アクティビティ

レジスタンスバンドを使った胸のエクササイズ:トレーナーおすすめの7選

パーソナルトレーナーが教える、上半身の筋力アップに適した腕を使ったワークアウト5選

パーソナルトレーナーが教える、上半身を鍛えるための腕のワークアウト5選

ローテーターカフ腱炎の症状と治療法とは? エキスパートの解説

スポーツ&アクティビティ

肩回旋筋腱板炎の症状と治し方 エキスパートの解説

エキスパートが教える、プルアップの始め方

スポーツ&アクティビティ

エキスパートが教える、プルアップの始め方