手配容疑者の顔、AIで推測 警察庁が民間と連携
警察庁は民間企業と連携し、過去の指名手配写真に人工知能(AI)を使って加齢させた画像を用い、30日から特設サイトで情報提供を呼びかけている。重要事件の容疑者5人の顔を「やせ」「太らせ」などのパターンに分けて掲載。成果が出れば他の容疑者に広げることも検討する。
警察庁に協力したのはヤフー、電通デジタル、広告制作会社「パーティー」。3社共同でプロジェクトチーム「TEHAI」(てはい)を立ち上げAI開発や手配写真の解析などに取り組んだ。
電通デジタルに所属し、今回のプロジェクト統括を務める森友佑さんが「最新のテクノロジーを社会的意義のある分野に活用できないか」と考え、指名手配容疑者の古びた写真に目を付けたことがきっかけとなった。今年2月、警察庁に打診し「深層学習(ディープラーニング)」の技術を使って開発を進めてきた。
ディープラーニングでは、加齢変化の予測を得意とするAIや、加齢による顔の特徴を抽出するのが得意なAIなど、複数を活用。実在する人物の加齢前後の写真1万~2万枚を使い、それぞれのAIを競い合わせながら数万回の学習を繰り返すことで、容疑者の現在の顔を予測した。
警察庁によると、全国の指名手配容疑者約630人(8月末現在)のうち3割弱が手配から10年以上が経過。同庁幹部は「情報提供を呼び掛けるホームページやポスターに使う写真は年々古くなり、有効な広報活動のあり方が課題だった。(AI活用の提案は)渡りに船だった」と話す。
同庁は11月から1カ月間を指名手配容疑者の捜査強化月間と位置づける。殺人事件に関わったとされる計4人については、有力情報の提供者に最大300万円が支払われる公的懸賞金(捜査特別報奨金)の応募期間を11月1日から1年間延長し情報提供を呼び掛ける。
今回のプロジェクトでは、この4人に私的懸賞金がかかっている1人を加えた計5人の顔写真をAIで予測。特設サイト(https://richad.yahoo.co.jp/tehai)にある容疑者の顔をクリックすると、加齢に伴う体形や顔つき、髪形の変化を予測した9パターンのイメージを閲覧できる。
12月31日まで閲覧可能で心当たりがあれば、情報提供ボタンから各捜査本部のある警察のホームページにつながる。
警察庁によると、強化月間中、2019年は指名手配容疑者343人を検挙したが、殺人事件などの重要指名手配容疑者は16年以降、ゼロが続いている。同庁幹部は「今回のプロジェクトで成果が出れば、他の容疑者への拡大も視野に検討したい」と期待する。