米地銀FRC破綻、JPモルガンが買収 過去2番目の規模
【ニューヨーク=斉藤雄太、大島有美子】米連邦預金保険公社(FDIC)は1日、米地銀ファースト・リパブリック・バンク(FRC)が経営破綻し、公的管理下に置いたと発表した。米銀最大手JPモルガン・チェースがFRCのすべての預金と資産を買収するとも発表した。3月のシリコンバレーバンク(SVB)の破綻後、財務が脆弱だったFRCの預金も急減し、信用不安が広がっていた。
米国では2カ月足らずで3つの銀行が破綻する事態になった。破綻の連鎖に歯止めをかけられるかが焦点になる。FRCは低金利下で融資や債券投資を増やしてきた。米連邦準備理事会(FRB)の利上げで貸出債権や債券の含み損が拡大していた。
FRCが本社を構えるカリフォルニア州の金融当局が1日に同行を閉鎖し、FDICを破綻管財人に指名した。FDICは競争入札を実施し、JPモルガンがFRCのすべての預金と実質的な全資産を引き継ぐことになった。
JPモルガンはFRCの1730億ドル(約23兆7000億円)の貸出債権、300億ドルの証券、920億ドルの預金を引き取る。買収代金としてFDICに106億ドル支払う。FRCが米国内8州に構える84支店はJPモルガンの支店として1日に営業を再開する予定という。
FRCの資産規模は2022年末時点で全米14位だった。23年4月13日時点の総資産は2291億ドル。破綻した米銀の資産規模としては3月に破綻したSVBを上回り、リーマン危機時の2008年秋に破綻したワシントン・ミューチュアル(約3070億ドル)に次ぐ過去2番目の大きさとなった。
JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は1日、「銀行システムを安定させることができたのは良いことだ」とFRC買収の意義を強調した。地銀からの預金の流出は「ほぼ終わった」との認識も示した。
FRCは本店のあるサンフランシスコに加え、ロサンゼルスやニューヨークなどに拠点を構え、富裕層向け事業を軸にここ数年で業容を急拡大していた。1口座あたり25万ドルまでの預金保険の対象外となる大口預金比率は昨年末時点で全体の7割弱と、約9割のSVBに次ぐ高い水準だった。
3月10日にSVBが破綻するとFRCにも経営不安が飛び火し、預金の取り付けが生じた。同社は3月半ばに米銀最大手JPモルガン・チェースなど大手11行から300億ドルの預金を受け入れた。信用不安の広がりを防ぐための官民連携の救済措置だったが、資産の劣化や収益力の低下といった経営難は続いていた。
4月24日発表の2023年1〜3月期決算で、3月末の預金が22年末比で4割以上減ったことが判明すると、経営不安が再燃しFRCの株価は下げが加速した。米銀大手への資産売却計画など打開策を模索したが、買い手側も損失リスクのある資産の購入には及び腰だった。
今回、FDICとJPモルガンはFRCから引き継ぐ住宅ローンや商業用ローンで損失が発生した場合に負担を分かち合う契約を結んだ。いったんFDICの管理下に置く破綻処理を経ることで、買い手がつきやすくした。
米財務省は1日、「(FRCが)すべての預金者を保護する方法で破綻処理されたことを歓迎する」との報道官コメントを公表した。預金保険の基金への影響は最小限に抑えられたと説明した。そのうえで「銀行システムは依然として健全で強靱(きょうじん)であり、米国人は預金の安全性と企業・家計への信用供与という銀行の本質的な機能について自信を持つべきだ」と強調した。
FRBの金融引き締めに伴い、銀行預金からより利回りの高い金融商品に資金が流出する動きが続く。保有するローンや債券の損失が膨らみ、財務が悪化した米銀も多い。3月には資産規模で全米29位だったシグネチャー・バンクも破綻した。暗号資産(仮想通貨)関連の取引が多かったシルバーゲート銀行は自主清算に追い込まれた。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
この投稿は現在非表示に設定されています
(更新)
米ファースト・リパブリック銀行(FRC)が2023年5月1日に経営破綻し、米連邦預金保険公社(FDIC)の公的管理下に。預金と資産はJPモルガン・チェースが買収しました。米銀の破綻ではリーマン危機時に破綻したワシントン・ミューチュアルに次ぐ過去2番目の資産規模です。関連する記事をお読みいただけます。
関連企業・業界