定額減税「一時的措置」 賃上げ税制に赤字企業を追加
政府の経済対策
政府は31日、経済対策案の全容を与党に示した。税収増の還元策として所得税と住民税の定額減税を盛り、賃金上昇が物価高に追いつくまでの「一時的な措置」と明記した。減税規模は3兆円台半ばで、2024年6月の実施を想定する。
政府は24日に経済対策の原案を与党に提示していた。今回の全容には税収増の還元策や税制に関する記述が盛り込まれた。中小企業の賃上げを促す税制に赤字企業の税額控除の繰越制度を創設すると加えた。
蓄電池や電気自動車(EV)、半導体などを対象に、生産量に応じた税優遇の制度の創設も記載した。
経済対策案では定額減税は1人当たり所得税3万円、住民税1万円の計4万円とした。減税の目的については「国民の可処分所得を直接的に下支えする」と説明した。
「税収増を納税者である国民に分かりやすく『税』の形で直接還元する」とも記した。22年度までの2年間で所得税・住民税の税収が3.5兆円増えた分を還元すると位置づけた。
減税期間は自民党内で「1年が常識的」(宮沢洋一税制調査会長)との声がある。公明党を中心に物価高の状況次第で2年以上の措置もとれるようにすべきだとの考えもあり、与党内に隔たりがある。
岸田文雄首相は31日の参院予算委員会で、定額減税について「1回で終われるように経済を盛り上げていきたい」と述べた。
経済対策案に年末までに与党の税調で減税の具体策をまとめる方針も示した。政府は24年1月召集の通常国会で税制関連法案を提出する。3月末までに成立させ、6月の実施を目指す。
自民党税調は減税対象から富裕層を除く所得制限も検討する。期間や所得制限が税調の主要議題となる見込みだ。
経済対策案は減税の恩恵が及ばない住民税非課税世帯へ1世帯当たり7万円を給付する方針も記した。すでに3月に決めた物価高対策の3万円の給付と合わせて10万円分の負担を軽減する。
所得水準によっては減税と給付の恩恵を十分に得られない「隙間」の世帯がでてくる。こうした層にも「丁寧に対応する」と書き込んだ。
政府は経済対策の裏付けとなる23年度補正予算案の財源の一部に、当初予算で計上した予備費を充てる方針だ。新型コロナウイルス感染症や物価高騰への対策などで5兆円計上した予備費の全額が残っている。
経済対策案はこのほかにガソリンや電気・ガス料金の価格上昇を和らげる補助を24年4月末まで延長すると盛り込んだ。電気・都市ガス料金の負担軽減策は24年4月末まで継続し、5月に支援を縮小する方向だ。
企業や大学による宇宙関連の技術開発を複数年度にわたって後押しするため10年間の基金を設けて1兆円規模を支援する措置も入れた。
高速道路の通勤時間帯を対象とした割引の拡大や、人工知能(AI)分野で国際競争力をつけるための若手研究者への支援策にも取り組む。
政府は与党との最終調整を経て、11月2日に対策を決定し補正予算案の編成を本格化させる。