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「観光鉄道」どんな路線? 急斜面にも挑む、魅力と課題

鉄道の達人 鉄道ジャーナリスト 梅原淳

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新型コロナウイルスの感染症法上の扱いが季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行し、全国各地の観光地に人出が戻ってきた。日本に入国する際の制限も緩和され、訪日外国人客(インバウンド)の姿も目立つ。多くの人々にとってこの夏は2019年以来、4年ぶりの本格的なバカンスシーズンといえるだろう。

列車にも観光客が戻った。新幹線の駅や車内ではキャリーバッグを抱えた人たちでごった返している。コロナ禍で運休を余儀なくされた各地の観光列車も復活してきた。

内外装に工夫を凝らしたり、車内でその土地ならではの味覚が楽しめたりする。観光地を巡る鉄道というと、こうした観光列車を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。ただ一方で全国には「観光鉄道」が存在する。

観光列車とは違う分類 国交省での定義は

観光鉄道とは国土交通省が分類した鉄道の形態だ。具体的には「観光旅客の輸送を主として行うモノレール、無軌条電車及び鋼索鉄道の各線をいう」とある。一般的な言い方にすると、無軌条電車とはトロリーバス、鋼索鉄道とはケーブルカーだ。ケーブルカーと聞けば、どのような鉄道か何となくイメージできるのではないだろうか。観光地の入り口付近から目的となる建物や山頂などの場所までを結ぶ短距離の鉄道といえるだろう。

トロリーバスとは架線から採り入れた電気で走行するバスを指す。なぜ鉄道の仲間かというと、架線が張られた場所以外走行できないという特徴をもつからだ。一般的な鉄道では車両は線路以外では走れない。専門的に言うと、架線も線路の一部であるためにトロリーバスは鉄道として分類されたのだ。

全国で23事業者が運営

表に示したとおり、23年(令和5年)年3月31日現在で観光鉄道は全国で23の事業者が手掛けている。

なお、一般的な形態の鉄道でも「観光」と称する路線はある。京都府の嵯峨野観光鉄道の嵯峨野観光線(トロッコ列車)、福岡県の平成筑豊鉄道の門司港レトロ観光線(線路・施設の所有者は北九州市)だ。ただ今回は国交省の定義する観光鉄道を取り上げることとしたので、両線はまたの機会に紹介したい。

富山県の立山黒部貫光は3路線、近畿日本鉄道は2路線と複数路線の観光鉄道を展開している。観光鉄道専業ではなく、一般的な鉄道の営業も併せて手掛けているケースも多い。箱根登山鉄道、東京都交通局、近鉄、南海電気鉄道、京阪電気鉄道、能勢電鉄、京福電気鉄道の7事業者は一般的な鉄道も営業している。むしろこれら7事業者がモノレールやケーブルカーを手掛けている事実に驚くかもしれない。

大半はケーブルカー 運休・廃止の路線も

全国23ある観光鉄道中、ケーブルカーでの営業が21事業者と圧倒的多数を占める。観光鉄道とはおおむね山に敷かれた鉄道という認識でも、あながち外れてはいない。モノレールは千葉県の舞浜リゾートラインと都交通局、トロリーバスが見られるのは立山黒部貫光だけだ。

ちなみに都交通局による上野動物園内のモノレールは車両の老朽化を理由に19年(令和元)年11月1日から運行を休止している。能勢電鉄は妙見の森ケーブルの廃止届を6月に国へ提出したという。立山黒部貫光はトロリーバスを将来電気自動車(EV)バスに置き換える方針を表明し、観光鉄道ではなくなる見通しだ。

観光鉄道は一般の鉄道と大きく異なる点がいくつかある。その最たるものは旅客営業キロが極端に短いという点だ。何しろ23事業者26路線を合わせた旅客営業キロは31.5キロメートルにすぎず、1路線平均1.2キロメートルしかない。一般的な鉄道ではさすがにここまで短い路線はまれだ。

距離は短く、利用客も少なめ

旅客営業キロが最も長い観光鉄道は立山黒部貫光の5.8キロメートルである。ただし、鋼索線(ケーブルカー)として黒部湖―黒部平間0.8キロメートルと立山―美女平間1.3キロメートル、それから無軌条電車線(トロリーバス)の室堂(むろどう)―大観峰(だいかんぼう)間3.7キロメートルとの3つを合わせた数値になる。

1路線当たりで最も長いのは舞浜リゾートラインのディズニーリゾートラインの5.0キロメートルになる。この路線は起点、終点ともJR東日本京葉線舞浜駅に隣接するリゾートゲートウェイ・ステーション駅である点からもわかるとおり、ぐるっと一周して元の場所に戻る環状路線だ。全線が単線で、すべての列車が左回りで運転されている。

一方で最も短いのは京都府にある鞍馬寺の鞍馬山鋼索鉄道で0.2キロメートルしかない。ちなみに運営主体が宗教法人という鉄道は全国でもここだけだ。乗車の際には大人200円、子ども100円を寄付してもらう形をとっている。急斜面に敷かれているケーブルカーだけに、距離は短くとも、歩けば結構大変だ。

観光鉄道の特徴をさらにみていくと、輸送規模が小さいだけに、路線1キロメートル当たりの利用者数を示す旅客輸送密度または平均通過数量が低め・少なめという点も挙げられる。6両編成のモノレールが走る舞浜リゾートラインを除くと、ケーブルカーやトロリーバスは路線バス並みの利用者しか乗せられない。旅客輸送密度は多くて1日当たり4000人台で、1000人未満もかなり多い。

営業利益は…

一般的な鉄道では、旅客輸送密度が2000人を下回ると営業利益を計上するのは難しくなり、1000人未満ではほぼ絶望的となってしまう。ところがコロナ禍前の18年度(平成30年度)の数値を筆者が見たところ、旅客輸送密度が1000人台では筑波観光鉄道、丹後海陸交通、六甲山観光の3社、1000人未満でも京福電気鉄道、比叡山鉄道、四国ケーブルの3社が営業利益を計上していた。

理由のひとつとして、距離に対して比較的高めの運賃を徴収している点が挙げられそうだ。筆者が推計を含めて試算したところ、旅客1人が1キロメートル乗車したときの運賃は全国の鉄道では16円に対し、観光鉄道では150円前後になった。割高にもみえる運賃でも払ってしまうのは観光で訪れたときにだけ乗るからこそだろう。

観光地を巡る鉄道は多くの場合、コロナ禍の影響はもちろん、地方を中心に乗客が減るなどの構造問題から厳しい経営が続いている。たとえば「リゾートしらかみ」の走るJR東日本の五能線、「奥出雲おろち号」の走るJR西日本の木次線では一般の列車の利用が少なく、区間の営業収支が赤字になっていると両社が公表している。

全国的に観光列車が人気を集めていても、走る路線自体が姿を消す可能性すらある状況なのだ。ケーブルカーなど観光鉄道は観光客が減るとか、併設の施設が経営不振に陥ると、あっけなく廃止となってしまう。この夏、観光地を訪れる機会があったら、ぜひ利用してほしい。楽しい思い出もできるだろうし、鉄道の応援にもつながるはずだ。

梅原淳(うめはら・じゅん)
1965年(昭和40年)生まれ。大学卒業後、三井銀行(現三井住友銀行)に入行、交友社月刊「鉄道ファン」編集部などを経て2000年に鉄道ジャーナリストとして活動を開始する。「JR貨物の魅力を探る本」(河出書房新社)、「新幹線を運行する技術」(SBクリエイティブ)、「JRは生き残れるのか」(洋泉社)など著書多数。雑誌やWeb媒体への寄稿、テレビ・ラジオ・新聞等で解説する。NHKラジオ第1「子ども科学電話相談」では鉄道部門の回答者も務める。

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