虐待関心高まり通報増 児相への通告、最多12万2000人
全国の警察が2023年に虐待の疑いがあるとして児童相談所に通告した18歳未満の児童は12万2806人、虐待の摘発は2385件でともに過去最多を更新したことが28日、警察庁のまとめでわかった。通告した児童数は19年連続、摘発件数は10年連続で増えた。児童虐待への社会的な関心が高まり、市民からの通報が増えているとみられる。
通告した虐待の状況では暴言などによる「心理的虐待」が73.9%を占め、うち6割弱が子どもの前で配偶者や家族に暴力を振るう「面前DV」だった。摘発事例の8割近くは子どもに暴力を振るう「身体的虐待」だった。虐待により死亡したのは過去最少の28人だった。
虐待に対する社会的な関心が高まっているとみられ、近隣住民らから虐待が疑われる事案への通報が増えているという。警察庁の担当者は「関係機関の連携などが強化され虐待を防止しようとする国民の意識も高まっている」と分析している。
一時保護を裁判所が判断、「司法審査」導入へ今春試行
虐待を受けた子どもを親から引き離す一時保護を巡り、裁判所が要否を判断する司法審査が2025年にも導入される。司法が後ろ盾となり判断の透明性を確保する狙いがある。一部自治体で今春から手続きを試行し、効率的な運用に向け手順を検証する。
司法審査は22年に成立した改正児童福祉法に盛り込まれた。一時保護に対して親権者の同意がない場合、児童相談所の請求に基づき、一時保護状を出すかどうかを裁判官が決める。改正法が公布された22年6月から3年以内に施行される。
導入の背景には一時保護を巡る親権者との対立がある。現行制度でも親権者の同意なく児相が一時保護することはできるが、反発を受けるケースもあった。児相が一時保護をためらう要因の一つとして指摘されてきた。
こども家庭庁は導入を見据え、児相が対応するうえでの課題を検証するため自治体で試行する。東京都や大阪府など18自治体が参加し、同庁が作成したマニュアル案に沿って請求までの手続きを実践する。
児相は司法審査を請求するにあたり、一時保護の必要性を裏付ける資料の提出などをする必要がある。試行では、請求までに要した事務作業の時間や人員について自治体から報告を受け、マニュアル案の改善に生かす。
試行対象のある自治体の児相担当者は司法審査制度について「司法判断があれば親権者と対立したケースでも一時保護の必要性などについて説明しやすくなり、踏み込んだ対応が取れる」との利点を挙げる。
別の自治体の児相担当者は「マニュアル案は具体的で参考になる」とする一方、「裁判所に請求してから一時保護状が出るまでどれくらいの時間がかかるのか、却下される場合もあるのかなど見通せない点も多い」と話した。
早稲田大の棚村政行教授(家族法)は司法審査について「中立的な立場の裁判所が妥当性を判断できるメリットは大きい」としたうえで、「児相も裁判所も負担は増す。実効性が高まるように、国は人材の確保も進める必要がある」と指摘した。