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経常収支比率99.9%、基金取り崩しも 厳しさ増す久留米市の財政 

 福岡県久留米市の財政が厳しさを増している。数値が高いほど市独自施策展開の自由度がないとされる「経常収支比率」は2019年度一般会計決算で過去最高の99・9%に上昇した。全国の中核市の平均92・2%(18年度)を大きく上回る。08年度以来となる財政調整基金(市の貯金に当たる)の取り崩しにも手を付けた。20年度以降も、新型コロナウイルスの影響で、さらなる財政悪化は避けられそうにない。

 「社会保障や災害への備えは不可欠で、財政環境は非常に厳しい」。大久保勉市長は市議会9月定例会で、経常収支比率が99・9%になったことを受け、危機感をあらわにした。

 市の財政規模は約1300億円。経常収支比率の算出に使う歳入額は689億961万円(前年度比2・7%減)。一方で歳出額は688億4822万円(同1・4%増)だった。

 歳出圧迫の一因は、大型施設建設に充てた市債(市の借金)返済の本格化だ。久留米シティプラザ(16年開館、市債借り入れ額141億円)と宮ノ陣クリーンセンター(16年完成、同95億円)がそれで、19年度の公債費(借金返済)は前年度比2・6%増。両施設の借金返済は15~20年続く。

 福祉などに充てる扶助費は同5・1%増えた。全国的な高齢者の増加に加え、久留米市が児童福祉に熱心なことも背景にある。私立保育園の運営費助成や、障害児のために保育士を増やす事業は他自治体より手厚い。市中心部の子育て世帯が増加し、事業の対象者は年々増えている。

 介護保険などの特別会計への繰り出し金は同4・7%増。久留米市は人口当たりの介護事業所数が多く、繰り出し金はかさむ。

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 歳入もマイナス要因が多い。国から市に入る19年度の地方交付税は前年度比1・5%減。05年に周辺4町を編入合併して以降、地方交付税を割り増していた優遇措置(合併算定替え)は年々減り、19年度で終わった。財源不足を補う臨時財政対策債の発行額は同21・2%も減った。

 歳入減を補うため、市の貯金に当たる「財政調整基金」を19年度は20億円取り崩し、残高は56億円に減った。このペースで使うと22年度に底をつく計算だ。

 財政悪化のため、公共工事費や施設維持補修費は減額されている。今年3月の多目的施設「サンライフ久留米」閉鎖は、老朽化施設を合理化し維持管理費を減らすことが目的だった。

 コロナ禍の不景気で、20年度は、市税などの一般財源が当初予算と比べ19億円減る見込み。地方交付税や臨時財政対策債が6億円積み増されるが、差し引き13億円の歳入減となる。

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 持続可能な財政運営のためには何が必要か。九州大法学研究院の嶋田暁文教授(行政学)は「老朽化した公共施設の取り扱いが最大のポイントとなる」と指摘し「合併した自治体は類似施設が重複し維持管理費がかさんでいる」と説明する。市もこの認識から、サンライフ久留米に続いて、石橋文化センター共同ホールも閉鎖する方針だ。

 一方で嶋田教授は「公共施設の廃止には慎重であるべきだ」と警鐘も鳴らす。地域活動の舞台となり、健康講座も催す公共施設は、市民の健康を増進し、医療介護費の抑制にもつながるからだ。嶋田教授は「集客力の高い公共施設を核にした複合化」が有効だとする。図書館に青少年支援やNPO法人支援の機関が同居し、利用者増や相乗効果発揮につなげる手法だ。

 嶋田教授は「(複数施設の維持管理を民間業者にまとめて委託する)包括施設管理業務委託のような公民連携にも積極的に取り組む必要がある」と提言する。 (平峰麻由)

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【ワードBOX】経常収支比率 「市税や地方交付税など毎年度決まって入る経常一般財源や臨時財政対策債などの歳入の合計額」に占める「人件費や扶助費、公債費など毎年度決まって支出する一般財源などの歳出の合計額」の割合。高いほど財政が硬直化し、自治体独自の施策などに使う自由な財源が乏しいとされる。国からの補助金など、使い道の決まった特定財源の歳入歳出は除いて計算する。

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