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フジファブリック・山内総一郎が未来のギタリストに託す“願い”「1音でもいいから、今までになかった音を」

 ロックバンド・フジファブリック山内総一郎(Vo&Gt)が25日、東京・原宿のFENDER FLAGSHIP TOKYOで開催された『Fender Flagship Tokyo Special Event with 山内総一郎』に参加した。

フジファブリック・山内総一郎

フジファブリック・山内総一郎

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 自身のフェンダー製最新シグネチュアモデル「Fender Souichiro Yamauchi Stratocaster Custom」の発売を記念したこのスペシャルイベントでは、ファン50人を招待し、同モデルの開発経緯などについてトークした。

 開演前にはORICON NEWSの取材に応じ、同モデルに込めたこだわりの数々を告白。長年愛用し続けるフェンダーギターへの思い、そして新たなシグネチュアモデルを手にする未来のギタリストたちに伝えたい“願い”とは?

『Fender Flagship Tokyo Special Event with 山内総一郎』の模様

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■3本目のシグネチュアモデル開発当初のイメージ

――開発にあたって、ご自身の中でのどのようなコンセプトやイメージを思い浮かべていたのですか?

【山内】まずはストラトのシェイプだということから決めました。ストラトをずっとメインで使ってきて、このシェイプには馴染みがある…もう体の一部になっていると言っても過言じゃないんです(笑)。その上で自分の中でのベストなサウンド、そして今までになかったようなギターを追求しようと考えたんです。

――山内さんと言えば、やはりフィエスタレッドカラーの1962年製ストラトキャスターというイメージが強いですから。

【山内】そのストラトと1954年製のテレキャスターは、ライブでもレコーディングでもずっとメインで使ってきていて。今回、この2本のいいところを両方味わえるギターを作りたいと思ったんです。

Fender Limited Souichiro Yamauchi Stratocaster Custom

Fender Limited Souichiro Yamauchi Stratocaster Custom

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――1ハムバッカー+1シングルコイルというピックアップ配列も当初からイメージされていたんですか?

【山内】最初は、3シングルコイルのストラトのリアピックアップだけをテレキャス用のモデルにしてみたら、テレキャスの音がなるんだろうか…みたいなところから始まったんですけど、実はピックアップだけを変えてもテレキャスの音にはならないんですね。このブリッジプレートにマウントしてあるからこそあの音が鳴るということを知ったんです。そこから徐々に進んでいきました。

――ハムバッカーをフロントに載せるというアイデアはどこから?

【山内】1970年代のテレキャスターカスタムをよく使っていた時期に、シングルコイルとすごくよく合うハムバッカーだなという印象を持っていたんです。フジファブリックの作品で言うと、3枚目(2008年『TEENAGER』)ぐらいまでの時期ですね。で、新しいモデルを作るという話をいただいたのが、ちょうどフェンダーからワイドレンジハムバッカー(CUNIFE WIDE RANGE HUMBUCKER)が改めて復刻した時期で、ぜひ試してみたいなと思ったんです。

『Fender Flagship Tokyo Special Event with 山内総一郎』の模様

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■ギターとの歩みの中で明確化してきた自身の好み

――好きなモデルの要素を融合させるという点で、2018年の『NAMM Show』で発表されたフェンダーの「パラレルユニバースシリーズ」を思い出しました。

【山内】あ、メテオラとかを出していた、すごく冒険するシリーズですよね。確かに、このギターも冒険的なのかな…。3モデル目のシグネチュアだからかもしれないですけど、自分としてはフェンダーの伝統的な形やサウンドの中で、“ないものねだり”をさせてもらったような感覚なんです。

――なるほど。

【山内】ホロウボディーにするというアイデアもそうですが、「遊び心のあるものにしたい」という考えのもとでチームのみなさんと密にコミュニケーションをとり、いろいろと試していきました。結果、時間はかかりましたけど、いいものができたと思っています。

Fender Souichiro Yamauchi Stratocaster Custom

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――1本目、2本目のときに山内さん自身の理想を突き詰められたからこそ、3本目で「冒険」や「遊び心」に至ったわけですか?

【山内】そうですね。それに…まだまだこれからの旅路は長いと思うんですけど、ずっとギターと付き合ってきたことで、ある程度自分の好みがハッキリしてきたんです。例えば、ネックの握りなどは「もうこれがベストだ」というものが自分の中で固まっているんですよ。

――というと?

【山内】さっき話に出た、1954年製テレキャスターのネックが一番好きで、今回のモデルもこのネックシェイプを踏襲してもらっています。ほかのブランドのギターを弾いてみても、1954〜55年頃のネックに惹かれるんです。しっかりとした握り心地もありながら、 ストレスなく弾けると言いますか。親指を握り込むフォームでも、速弾きをしても、運指にまったく無理がないんですよ。

『Fender Flagship Tokyo Special Event with 山内総一郎』の模様

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■自身の演奏と向き合うキッカケになったギターボーカルへのコンバート

――そういった好みを自覚したキッカケなどはありましたか?

【山内】僕はギタリストとしてデビューして…途中からギターボーカルになったんですが、ギターボーカルとしてステージに立つようになったことで、「ここに力が入っていると歌いにくい」など、力を入れるポイントや脱力の仕方がすごくわかりやすくなったんです。そのポイントを押さえた演奏を可能にしてくれるのが、1954年製のネックだったんですよね。

――ネック以外にも理想に近づくためのポイントはありますか?

【山内】やっぱり軽くていい音が鳴るギターっていうのがベスト。弾き心地がいいギターじゃないと、そもそも手に取らないんですよ。例えば曲を作ろうとしたとき、パッと手に取るのはいつもストラトなんです。音の太さなんて右手でなんとかなるでしょうって(笑)。瞬発力が必要な作曲の現場だと、抱えたときにストレスを感じないことが一番重要で。僕の場合、それがないのはストラトシェイプであり、1954年製テレキャスターのネック。そういうワガママをかなえてもらった感じですね。

――山内さん自身はもうライブやレコーディングで鳴らされているんですよね?

【山内】新しいシングル「プラネタリア」はほとんどこれで弾いていますし、今まわっているツアーでも5〜6曲ぐらい使っていますね。スライドを使う場面やアルペジオなど…。あと、ダイレクトスイッチをONにすると、瞬時にボコッとブースト感が得られるので、アルペジオからソロへ行くときなどに使っていますね。

――とても汎用性の高いサウンドと機能を持ったモデルだと思いますが、ライブでこのギターを選ぶ決め手になるのは?

【山内】音の太さですね。このギターを作るとき、自分が持っているギターのいいところを活かしたいと思いつつ、それらと同じものにしたいわけじゃなかったんです。和音の綺麗さや倍音の乗り方を判断基準として、バンドの中で埋もれない太い音を追求したかったんですよ。

『Fender Flagship Tokyo Special Event with 山内総一郎』の模様

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――“太い音”とは?

【山内】アンサンブルの中でどうしても奥に引っこんでしまったり、みんなでドンって鳴らしたときに非力だなと感じるところがないようにしたかったんです。シングルコイルのよさを残しつつ、ハムバッカーのロー感も欲しいと。結果、リアのシングルコイルもオリジナルで巻いてもらうことになり…。もう本当に贅沢な1本です(笑)。

Fender Souichiro Yamauchi Stratocaster Customキービジュアル

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■カラーリングに込められた未来のギタリストたちへの思い

――厳選されたアッシュボディーとローズウッド指板、1ピースのクォーターソーンメイプルネック…と、より“ぜいたく”な限定モデル「Limited Souichiro Yamauchi Stratocaster Custom」も発売されました。こちらは山内さんが使用している実機と同様に、ラッカー塗装で仕上げられていますね。

【山内】最初はカラーリング違いで作ることも考えたんです。でも、このシェイプと構成とカラーで、もう1本のギターとして完成しているものをわざわざ変えなくてもいいんじゃないかと。それで、カラーは変えずに塗料を変えたんですよ。

――先ほども話題に出ましたが、山内さん=フィエスタレッドというイメージだったので、ホワイトというカラーリングも意外でした。

【山内】ちょっとマニアックな話なんですけど…カラー名は「ホワイト」ですが、いわゆるフェンダーのオリンピックホワイトなどとは違う白になっているんです。というのも、1950年代にトップコートを吹いていないホワイトのギターを作っていた時期があって、そのときの色味を参考にしています。

『Fender Flagship Tokyo Special Event with 山内総一郎』の模様

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――珍しい仕様ですね。

【山内】なぜこういうモデルが出ていたのか詳しくはわからないみたいなんですが(笑)、そういうところに惹かれました。トップコートを吹くと黄色っぽく経年変化していくじゃないですか。それが味わいにもなるんですけど…。でもその時期のモデルには白色の層しかなくて、しかもまったく日焼けしていない個体も何本か残っていると教えてもらったんです。確か…当時は車用の塗料を使っていたという話でした。

――本モデルに対する山内さんのコメントの中に「キャンバス」という言葉がありましたが、まさにその言葉の通りの白だなと思います。

【山内】ギターっていろいろな楽しみ方があると思うんですよ。ただ弾くことを楽しんでもいいし、鑑賞するだけでもいいと思っています。でも、僕はギターで音楽を作る立場の1人なので、1音でもいいから今までになかった音を生み出してほしい。自分もそういう気持ちでギターという楽器に向き合っていますし、このギターを手にとってくださる人には、自分の演奏で真っ白なキャンバスに色を加えていってほしいと願っています。

『Fender Flagship Tokyo Special Event with 山内総一郎』の模様

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