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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.216

大麻の基本的な知識と
大麻由来製品の注意点について

2023年5月発行

大麻は世界で最も乱用されている薬物であることが報告されています。大麻の規制は国により異なり、医療用大麻として臨床での施用のみを認めている国もあれば、様々な背景から、嗜好的な利用を認めている国もあります。日本では大麻取締法により所持等が禁止されていますが、近年、大麻事犯の検挙数は増加しています。さらに、検挙された人の約70%が30歳未満であるなど、若年層を中心とした乱用の拡大が社会問題となっています。この原因の一つとしてSNS等で大麻は「有害である」だけでなく「合法な国がある」「無害である」等、様々な情報があふれ、誤った知識を入手してしまうことが考えられます。今回は大麻について基本的な知識、その有害作用や近年急増する大麻由来製品と注意点について説明します。

大麻とは

大麻取締法第1条では、「大麻」は「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く」と定義されています。大麻草は、アサ科に属する植物で、昔から繊維や種子を利用する為、栽培されてきました。しかしながら、大麻草は、現在、大麻取締法によって図1に示すように部位ごとに規制されています。

図1 大麻取締法による規制部位
(厚生労働省 資料より抜粋)

大麻草には、カンナビノイドと呼ばれる独特な化合物群が含まれます。その主なカンナビノイドとしてΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)やカンナビジオール(CBD)が知られています。THCとCBDは図2に示すように化学構造は似ていますが、生体影響は異なります。

図2 THC(左)とCBD(右)の構造式

大麻の生体影響

インターネット上では、大麻は無害と主張する情報も散見されますが、実際には大麻の使用により表1のような有害作用が報告されています。また、大麻を繰り返し使用することで精神依存や身体依存を形成することが示唆されており、特に成長期にある若者の脳に対して影響が大きいことも判明しています。これらの有害作用は主にTHCによるものとされています。

表1 大麻の生体影響
(厚生労働省 大麻等の薬物対策のあり方検討会とりまとめより)

一方でTHCと異なり、CBDは精神作用を示さないとされています。また、CBDは、詳細な作用機序は明らかになっていませんが、海外では医薬品として、難治性てんかんや結節性硬化症患者に施用されています。

大麻由来製品と注意点

大麻から成分を抽出した「大麻リキッド」や「大麻ワックス」などの大麻由来製品の摘発も近年増加しています。この他、海外でお土産として販売されている大麻含有のチョコレートやクッキーなどもあり(図3)、知らずに持ち込んで検挙され、また、貰った食品を喫食して、体調不良で救急搬送された事例も発生しているため注意が必要です。

一方、大麻草の規制対象外である成熟した茎や種子から抽出して製造された大麻由来製品の一つであるCBD製品の流通が、近年国内で急増しています。ほとんどのCBD製品は海外から輸入され、その種類はCBDオイル、グミ、チョコ及びビールなどの食品から美容パックなどの化粧品、電子たばこのような嗜好品まで多岐にわたります。これらの製品自体は違法なものではありません。しかし、これらの製品の中にもTHCが検出される事例も複数報告されるなど、所持等が禁止されている「大麻」の疑いがある製品が存在しているため、より注意が必要です(図4)。また、「大麻」に該当しない場合でも、化学合成されたTHCは麻薬及び向精神薬取締法で規制されています。

図3 大麻由来製品 図4 THCが検出されたCBD製品
(図3、4ともに厚生労働省ホームページより抜粋)

薬物には手を出さないように

インターネットやSNS等には、大麻をはじめとする違法な薬物について様々な情報があふれています。海外における大麻の「合法化」の言葉だけが先行し、規制緩和された国々において、使用にはライセンスが必要であることや公共の場所では吸わないなど、厳格な決まりがある事実はほとんど知られていません。また、合法化された国でも大麻を安全と認めた国はありません。

30歳未満の大麻事犯で検挙された人が、大麻を初めて使用した動機の半数以上は「好奇心・興味本位」であると報告されています。大麻だけでなく乱用薬物の魔の手から自分の身を守るには一人一人の心掛けが大事です。自分の身を守るため、出回っている情報を鵜呑みにせず、よく考え、手を出さない、近づかないようにしましょう。また、わからないことや不安なことは表2のような薬物相談窓口等に相談するようにしましょう。

表2 薬物相談窓口

神奈川県衛生研究所では、大麻や危険ドラッグ等の乱用薬物の流通実態を試験検査で確認するとともに、信頼性の高い検査を行えるように調査研究に取り組んでいます。また、その結果得られた新しい情報を含めて、薬物に関する正しい情報を薬物乱用防止教室や当所のホームページなどを通じて情報提供し、県民の安全・安心に貢献できるように努めます。

(参考リンク及び文献)

注:リンクは掲載当時のものです。リンクが切れた場合はリンク名のみ記載しています。

(理化学部 外舘 史祥)

   
衛研ニュース No.216 令和5年5月発行
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