鋼材の重量計算を行う方法|エクセルや手計算で行う場合の手順も解説

2023年3月15日

鋼材の重量計算を行う方法|エクセルや手計算で行う場合の手順も解説

鋼材と一口にいっても、用途によってさまざまな分類があり、形状によって重量の計算方法も異なります。
鋼材の重量計算は、手計算だけでなくエクセルを利用する方法もあります。
この記事では、鋼材の重量計算に必要な鋼材の体積の出し方や鉄の密度、エクセルや手計算で行う場合の手順などを解説します。
ぜひ、参考にしてください。


1.鋼材とは

「鋼」とは、鉄に炭素を加えた合金のことです。炭素を加えることで、強度と加工性を高めていることが特徴です。
一般的に鉄といわれるものは、ほぼ鋼のことで鉄100%のものを目にする機会はほとんどありません。
鋼に鍛造や圧延などの加工を加えて成型したものを鋼材と呼び、板状や棒状、筒状のものなど、さまざまなサイズや形状があります。

2.鋼材の用途による分類

鋼材には多くの種類があり、それらは鋼種としてJISでも規格化、細分化されています。用途による分類は以下の通りになります。

圧延鋼材

圧延鋼材とは、ロールなどで押しつぶして塑性加工した鋼材です。
用途により圧延鋼材をさらに、一般構造用圧延鋼材(SS)、溶接構造用圧延鋼材(SM)、建築構造用圧延鋼材(SN)などに分けられます。
(SS)のようにアルファベットで表されるのはその鋼種の記号です。

機械構造用鋼

機械構造用鋼とは、機械の構造用材料として用いられる目的で開発された、機械的強度の高い鋼材です。
機械構造用炭素鋼や焼入性を保証した構造用鋼鋼材(H鋼)、
クロムやモリブテンといった合金元素を添加した機械構造用合金鋼鋼材などがあります。
代表的な鋼種は、S45CやSCM440H、SCM440などです。

工具鋼

工具鋼とは、金属・非金属材料の切削、塑性加工等を行なう工具ならびに治具に用いられる鋼です。
日本工業規格(JIS)においては、炭素工具鋼、合金工具鋼ならびに高速度工具鋼の3種が定義されています。

工具鋼は切削工具や各種金型に使用されるもので、用途によって要求される特性が異なるため、
表1に示すように、JISでも多くの鋼種が規定されています。
合金元素として炭素のみを含有する炭素工具鋼(JISG 4401)、
金型によく用いられている合金工具鋼(JIS G 4404)、バイトやドリルによく用いられている高速度工具鋼(JIS G 4403)が規定されています。

表1 JISによる工具鋼の分類

特殊用途鋼

特殊用途鋼材とはその名のとおり、特殊用途に使用される鋼材を指します。
JIS 記号では、SUS (ステンレス鋼)、SUH(耐熱鋼)、NCF(耐食耐熱超合金)、SUJ(軸受鋼)、SUP(ばね鋼)、SUM(快削鋼)が特殊用途鋼である。

3.形状による分類

鋼材は形状によっても分類されます。ここでは、4つの形状について詳しく解説します。

鋼板

鋼板とは、板状に加工された鋼材のことです。鋼板の中でも厚さによって名称が異なり、
一般的には厚さ3mm未満が薄鋼板、3mm以上のものを厚鋼板と呼びます。
鋼板は用途によって「構造用」、「一般加工用」、「圧力容器用」、「土木・建築用」のいずれかに分類することができ、
鋼板の寸法や質量(重量)、許容差、厚さ特性などについて規定した規格が存在します。
使用分野が多岐にわたる工業材料、構造材料と言えます。

棒鋼

棒鋼とは、その名のとおり棒状に加工された鋼材です。棒鋼の断面は、丸型のものや正方形のもの、長方形や多角形などさまざまです。
断面の形によって名称が異なり、丸棒や角棒、六角棒、八角棒などと呼ばれています。

形鋼

形鋼とは、さまざまな形状の断面をしている鋼材です。形鋼には明確な規定などはありません。
しかし、ある程度は体系化されており、I形鋼やH形鋼、溝形鋼や山形鋼などが例として挙げられます。

鋼管

鋼管とは、筒状に加工された鋼材のことです。継ぎ目のないものと、溶接や鍛接されたものがあります。
鋼管にはさまざまな種類があり、一般構造用炭素鋼鋼管や建築構造用炭素鋼鋼管、プラント配管、ラインパイプなどがあります。

4.鋼材の重量を計算する方法

鋼材の重量は、「体積×鉄の密度」という計算式で算出できます。
しかし、そもそも鉄の密度とは何なのかよくわからないという人もいるでしょう。
ここでは、鉄の密度や鋼材の重量計算例について詳しく解説するため、参考にしてください。

鉄の密度とは

密度とは1cm3あたりの質量のことで、物の大きさに関係なく重さを比較できる値です。
「質量÷体積」という計算式で密度を求めることができます。
密度は、g/cm3(グラムマイ立法センチメートル)という単位で表されます。
物質によっては決まった数値があるため、密度によって物質を区別することも可能です。鉄の場合は、密度7.87g/cm3となっています。

単位換算が必要な場合

建築資材などはサイズの大きいものが多いため、cm3ではなくm3で密度を計算するケースもあり、1g/cm3は1000kg/m3に変換されます。
鉄7.87g/cm3を単位変換する場合には、以下のような密度になります。

m3あたりの密度を換算した場合

  • kgに換算→7870㎏/m3
  • tに換算→7.87t/m3
  • gに換算→7870000g/m3

密度と比重の違い

鋼材の重量計算では、密度ではなく比重を用いるケースもあります。
比重とは、基準物質と比べた場合に何倍の重さになるのかを表した値です。
一般的に基準物質には水が用いられ、同じ体積の密度を1としたときに、何倍になるかを示します。
密度と比重の値は同じですが、比重には密度のような単位はなく、たとえば油なら0.8というように表します。

鋼材の重量の求め方

鋼材の重量を求める際には、鋼材の形状によって求め方が異なります。以下では、それぞれの形状の重量の求め方について解説します。

① 鋼板

鋼板の体積は、「幅×奥行×厚さ」で求められます。重量は、「体積×密度」で算出できます。
しかし、銅板の場合には単位がcmではなくmmで表す場合も多いでしょう。
その場合、体積がmm3で表されるため、前述したように単位を揃える必要があります。
たとえば、幅50mm、奥行90mm、厚さ2mmの銅板の重量を求めるとしましょう。その場合の計算式は以下のとおりです。

  • 50×90×2÷1000×7.87=70.83g

このように、50mm×90mm×2mmの銅板の重量は、70.83gとなります。

② 丸棒

丸棒とは、円柱形状の鋼材です。円柱の体積は、「底面積×高さ」で算出できます。
底面積は「半径×半径×3.14」で求められるため、まずは底面積から求めましょう。
ここでは、直径が6cm、長さが10cmの丸棒の体積を求める計算式を見ていきます。

  • 底面積:3×3×3.14=28.26cm2
  • 体積:28.26×10=282.6cm3
  • 重量:282.6×7.87=2224.062g

つまり、重量は2224gとなるため、約2.2kgということになります。

③ 角パイプ

角パイプとは、中が空洞になっている形状の鋼材です。
角パイプの体積は、「断面積×長さ」で算出できます。
断面積を求める際には、「縦の長さ×横の長さ-{(縦の長さ-2×厚み)×(横の長さ-2×厚み)}」という計算式を用いましょう。
以下では、縦5cm、横4cm、厚さ0.5cm、長さ15cmの角パイプの重量を求める際の計算式を紹介します。

  • 断面積:5×4-{(5-2×0.5)×(4-2×0.5)}=8cm2
  • 体積:8×15=120cm3
  • 重量:120×7.87=944.4g

④ 丸パイプ

丸パイプとは、中が空洞の形状になっている鋼材です。
丸パイプの場合も角パイプ同様に、「断面積×長さ」で求められます。
丸パイプの断面積を求める場合には、「π/4×(外径2-内径2)」で算出しましょう。
たとえば、外径5cm、内径4cm、長さ15cmの丸パイプの重量を求める際には、以下のような計算式となります。

  • 断面積:π/4×(52-42 )=7.065cm2
  • 体積:7.065×15=105.975cm3
  • 重量:105.975×7.87=834.0233g

このように、重量は834.0233gで約0.8kgと算出できます。

5.鋼材の重量計算をエクセルで行う方法

鋼材の重量計算は手計算ではなく、エクセルで行うことも可能です。ここでは、エクセルで重量計算を行う方法を解説します。

エクセルの表作成

中が空洞になっている角パイプなどは、計算式が複雑です。そのため、エクセルを利用するとよいでしょう。
エクセルで重量計算を行う場合、必要な値を入力するセルを作ります。以下のようなセルを作成しましょう。

  • A1:縦の長さ(cm)
  • B1:横の長さ(cm)
  • C1:厚み(cm) 
  • D1:長さ(cm)
  • E1:密度(7.87g/cm3
  • F1:重量(g)

F1の重量のセルには、前述の角パイプの計算式を参照し、(2*A1*C1+2*B1*C1-4*C1^2)*D1*E1という数式を入れます。

セルのカスタマイズも可能

エクセルでは、鉄以外の物質の密度も選択できるようにできます。
「データの入力規則」から、「設定」を選び、「入力値の種類」を「リスト」にしましょう。
「元の値」に他の物質を入力することで、プルダウンで選択できるようになります。
単位をセル内に表示させたい場合は、「セルの書式設定」から「表示形式」を選択、「ユーザー定義」で表示させたい単位を入力しましょう。

6.鋼材の重量計算ができるソフトウェア

鋼材の重量計算では、ソフトウェアを使用するのもおすすめです。
ソフトウェアでは、重量計算だけでなく、重量表の作成や強度計算などが行えるため、さまざまな用途に利用できます。
無料で使えるフリーソフトも多いため、使いやすいものや自社に合ったソフトウェアがあれば、導入を検討してみてもよいでしょう。

7.まとめ

鋼材の重量は、形状によって計算方法が異なります。
角パイプなどは計算方法が複雑で手間がかかるため、エクセルを使って計算してもよいでしょう。
また、重量計算が行えるソフトウェアを利用するのも1つの方法です。

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