紅桜
© Tasuku Amada
ミュージック

紅桜インタビュー「おれはナイフも持っとるし毛布も持っとるよ」

シンプルなビートの上で64小節ものあいだひたすらスピットする【Red Bull 64 Bars】。このロングヴァースに挑んだ紅桜に、ヒップホップとの向き合い方についてストレートに切り込んだショートインタビュー。
Written by Tasuku Amada
読み終わるまで:4分公開日:
 
— Red Bull 64Bars、挑戦してみてどうでしたか?
紅桜「64小節、一本ぶっ通しで自分の思いのたけを乗せられて嬉しいね」
 
— 64小節のリリックを書くのは大変?
紅桜「いや、全然。リリックを書くのは毎日のことなんで。大変なことなんかひとつもないよ」
紅桜

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— 書いている時にはどんなことを考えていた?
註)紅桜の「Red Bull 64Bars」は、当初2019年に制作されたが事情により未公開となっていた。今回公開されたのは、それを2023年現在の紅桜がもう一度収録し直したもの。よってリリックが書かれたのは2019年となる。
紅桜「そのときの自分の心境そのままですね。たぶん心境がああだっただけ。やっぱり曲を書く時って、自分を引きで見て、自分がどういうことを思って、どういうやつなのか、おれでも自分がわかんないから、客観的に見てるんだよね」
紅桜

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— 気に入っているラインは?
紅桜「“おれの遺産は3匹鯉と蘭”、って言ってるけど、3匹鯉っていうのはおれの息子たち。で、蘭っていうのはおれの娘。“おれの遺産”って言ってるってことは、おれ死ぬ気でやる思いだったんだなって。いつ死んでもおかしくないぐらいの感じで、やってやろうって思ってたんだね」
 
— 音楽をつくる上でいちばんこだわっていることは?
紅桜「表現ですね。『さみしい』とか『悲しい』とか『いとしい』とか、言っちゃえばすぐ伝わるけど、浅いでしょ。もっと人の気持ちを純粋に表現することが、こだわってることかな。
だし、おれはいい男になりたい。こだわりというか目標だけど。そんなに甘くはないし、おれはきたないところもずるいところもいっぱいあると思う。だからこれは、おれの永遠のテーマかな」
紅桜

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© Tasuku Amada

— “いい男”とはひとことで言うと?
紅桜「…やさしいってことかな。強い男っていうのは腕っぷしじゃなくて、もちろん男は腕っぷしも必要じゃけど、やっぱりハートのやさしさだと思うな。おれはナイフも持っとるし毛布も持っとるよ」
 
— これからどんなラッパーとして歳をとっていきたいですか?
紅桜「考えてないね。50歳60歳まで生きちゃろう思って今までやってなかったけん」
紅桜

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— 死ぬまでラップをしてると思いますか?
紅桜「いや、たとえば女房が『もう音楽やめて』って言うんだったら今からでもやめちゃるわ。そういう覚悟を持ってる」
 
— 紅桜さんが音楽に助けられるのはどんなときですか?
紅桜「いっぱいあるよ!おれなんかさっきここまで来るときに、前川清の『涙』聴いてたからな。(歌いながら)♪男運は〜悪くなかった〜あんないいひといやしないもの〜、っていう。ああいう、女心を男が歌うっていうのが好きでね。だってわかんねえもんおれ、女心」
@Red Bull Music Studios Tokyo

@Red Bull Music Studios Tokyo

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— 今の日本のヒップホップシーンに対して思うことは?
紅桜「ないよ。シーンがどうとか、人がどうとかなんか関係ない。おれがいけてるかいけてないかっていうところだから」
 
— 紅桜さんが考える、ラッパーの理想像とは?
紅桜「…TOKONA-Xしかいないよね。なんか、音楽やってるような人間は、墓んなか入っても作品が永遠に生き続けるし。TOKONA-Xとじっくりしゃべったことなんかないよ、ガキのころに頭をなでなでしてもらったぐらいで。でもあのとき、遠くでおれを見つけてこっちに向かって歩いてきて。なんかあのときにおれのなかになにかが入った気がすんだよな。だから、ラッパーの理想像はわからないけど、強いていうならTOKONA-Xだね。豪快で、繊細で。考えらんないね、あの人以外」
紅桜

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© Tasuku Amada

紅桜「たぶん、いい男になることが、いいラッパーになることだよね。ださいやつはださい。かっこいいやつはかっこいい。おれはなんでも常識で決めるんじゃなくて、最低限のモラルと、あとはかっこいいかださいかで決めてる。だからおれは、いい男になりたいね」
 
Red Bull 64 Bars - INTERVIEW