ブリ好きなら知っておきたい旬 どの時期が最もおいしい?

ブリと言えば脂ののった魚の代表格です。特に旬を迎える時期には、その味わい深さが際立ちます。
本記事では、ブリの旬についてを中心にブリの基礎知識を掘り下げていきます。天然ブリと養殖ブリの違いや、選び方、保存方法についても詳しくご紹介します。

ブリの基本情報

ブリは日本の食文化に深く根ざした魚であり、その味わいや特性は地域ごとに異なる魅力を持っています。ここでは、ブリの基本的な特徴をはじめ、種類、産地に至るまでの詳細な情報を掘り下げていきます。

ブリの特徴と種類

ブリはアジ科ブリ属に属する魚で、ヒラマサやカンパチと共に「ブリ御三家」と呼ばれています。特に、後述する「寒ブリ」は高級魚として知られています。

カムチャッカ半島以南の北西太平洋、オホーツク海、日本海、東シナ海に分布する回遊魚で、群れを成して春から夏にかけて北上し、秋には沖合を南下します。産卵期は暖かい海域ほど早く、2月頃から初夏にかけてとされています。

ブリの体形は紡錘形で、大きいものは1m以上になるまで育ちます。体色は背が暗青色、腹は白く、体側には黄色い縦帯があるのが特徴です。稚魚はモジャコと呼ばれ、流れ藻などに身を寄せてプランクトンを食べながら成長し、魚食性へと変わります。

ブリは成長に伴い名称が変わる「出世魚」の代表格でもあります。
関東ではワカシ(15~30cm)→イナダ(30~50cm)→ワラサ(50~60cm)→ブリと呼び名が変わっていきます。
関西ではツバス(~40cm)→ハマチ(40~60cm)→メジロ(60~80cm)→ブリという順序です。

養殖も盛んで、市場には通年流通しています。西日本での養殖が盛んで、ちょうどハマチと呼ばれるサイズを関東によく出荷していたため、関東では養殖物をハマチと呼ぶようになったそうです。ただ、現在では技術の進歩によって80cm前後/6Kg前後の養殖ブリも出荷されています。

ブリの主な産地

ブリは、日本国内で広く漁獲されており、特に日本海側の産地が有名です。主な漁獲地は長崎県、石川県、島根県など日本海側が多いですが、近年では北海道(太平洋側)や岩手県でも国内トップクラスの漁獲量があります。これは海水温の上昇が原因とされています。

漁獲量の多い地域では、冬に脂がのった大きなブリが捕獲され、「寒ブリ」として高く評価されています。各地でブランド化されており、「佐渡の寒ブリ」「天然能登寒ブリ」「ひみ寒ぶり」などがあります。氷見産は特に有名なので、聞いたことがある人も多いでしょう。

また、養殖も盛んに行われており、鹿児島県、大分県、愛媛県が主要な産地として知られています。養殖ブリは、モジャコを漁獲し、2~3年間飼育して出荷される方式が一般的です。養殖技術の進歩によって風味が良く、80cm前後/約6kgに達するブリが養殖されるようになりました。

ブリの旬と季節の特性

ブリは冬になると、脂がのった「寒ブリ」が市場に登場します。しかし、養殖技術の進歩により、年間を通して高品質なブリを買うことができるようになっています。ここでは、ブリの旬と養殖について詳しく掘り下げていきます。

冬のブリ「寒ブリ」の魅力

ブリは、秋から冬にかけて北海道から日本海を経由し、豊後水道や玄界灘、東シナ海へと南下します。「寒ブリ」と呼ばれるブリは、おおむね11月から2月に水揚げされ、エサを多く食べて脂がたっぷりのった状態になっています。
寒ブリの主な漁獲地には、富山県の氷見、新潟県の佐渡、福井県の若狭湾などがあります。冬以外が旬の地域だと、三重県の熊野灘(1~4月)や高知県の室戸(3~5月)があります。

通年楽しめる養殖のブリ

農林水産省「令和3年漁業・養殖業生産統計」によると、国内の養殖ブリ類の漁獲量は99,804tです。同年の天然物の漁獲量は94,610tなので、ブリがどれだけ養殖されているかがよくわかります。

ブリの養殖においては、養殖技術の進歩により、卵から親魚までを人の手で育てる「完全養殖」が実現しています。これにより、天然のブリが旬を迎える冬季に限らず、年間を通して品質の良いブリを安定供給できているのです。たとえば、宮崎の「黒瀬ブリ」では、水温などを調節することで、通常のサイクルより半年早く生まれた卵から育てたブリを夏に出荷しています。

ブリの選び方と保存方法

ここでは新鮮なブリの見分け方と保存方法について詳しく解説します。

新鮮なブリの見分け方

ブリは一尾で購入するには大きい魚なので、一般的には切り身の状態で鮮度を判断することが多いでしょう。

新鮮なブリの皮にはツヤがあり、赤身の色も鮮やかです。鮮度が落ちると、身が白く濁ってきます。
また、血合いは鮮やかな色をしています。時間が経つと酸化し、黒ずんでくるので、こちらもチェックするようにしましょう。

ブリの上手な保存方法

ブリは傷みやすいため、正しい保存方法を知ることが重要です。

冷蔵庫での保存

まず、ブリの表面についた水分をキッチンペーパーで拭き取ります。これによって雑菌の繁殖を防ぎ、臭みの原因を減らすことができます。次に、他の食材に臭いが移るのを防ぐために1切れずつラップで包みます。ラップで包んだブリをジッパー付き保存袋に入れ、空気を抜いて密封した後、冷蔵庫で保存します。

冷凍庫での保存

冷凍庫で保存する場合は、まずブリの両面に均等に塩をふり(1切れに対して塩ふたつまみが目安)、冷蔵庫で10~15分置きます。これによって臭みが取り、味を染み込みやすできます。塩をふったことで表面に出てきた水分を、キッチンペーパーで拭き取ります。水分を拭いたブリは、冷蔵保存と同じく1切れずつラップで包みます。冷凍用保存袋に入れたら、空気を抜いて密封します。

ブリの栄養素

ブリは青魚のなかでも豊富な栄養素を持つことで知られています。ブリにはたんぱく質が豊富に含まれており、可食部100gあたり約21.4gを含むことから、筋肉の構築や修復、健康な皮膚や髪の維持に不可欠です。また、心臓病のリスクを低減するとされるオメガ3脂肪酸が豊富で、心血管系の健康を促進し、抗炎症作用も期待できます。

さらに、ブリにはビタミンDが含まれており、骨の健康を支える重要な役割を果たします。ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨の成長と維持に必要です。ビタミンB群も豊富で、特にビタミンB12が神経系の健康をサポートし、赤血球の形成を助け、エネルギー代謝にも関与しています。

また、ブリにはカリウム、マグネシウム、リンなどのミネラルが含まれており、これらは心臓の健康、筋肉の機能、骨の健康に寄与します。これらの栄養素は、ブリを健康的な食事の選択肢として優れたものにしており、特に心臓病のリスクを低減するオメガ3脂肪酸や、骨の健康を支えるビタミンDの豊富さは、ブリを他の魚類と比較しても際立った特徴です。これらの栄養素を含むブリは、バランスの取れた食事において重要な役割を果たします。

※栄養素出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

ブリを使った郷土料理

最後に、ブリを使った郷土料理について掘り下げていきます。

かぶらずし

出典:農林水産省「うちの郷土料理

「かぶらずし」は石川県を代表する伝統的な発酵食品で、塩漬けしたかぶらとブリを使用して作られます。酢飯を使う通常の寿司とは異なり、漬物に近い「なれずし」の一種です。
ブリの塩漬けをかぶらの塩漬けで挟み、糀で作った甘酒をかけて7日~10日ほど漬け込みます。

起源には複数の説があります。一つは金沢市金石町の漁師が正月の行事食として食べ始めたというもの、もう一つは前田藩主が湯治で訪れた地元の温泉宿で振る舞われたというものです。江戸時代にはすでに食べられており、魚屋や八百屋が年末に手作りのかぶらずしを手土産として広めたとされています。
ブリは、江戸時代には「御用ブリ」として藩主に献上され、庶民には手が届かない高級食材でした。かぶらずしは、ブリを手軽に楽しむための工夫から生まれたとも言われています。

地元では「かぶらずしがないと正月が始まらない」と言われるほど、年末年始の定番料理として親しまれています。

ブリ雑煮

出典:農林水産省「うちの郷土料理

岡山県の郷土料理「ブリ雑煮」は、お正月に欠かせない伝統的な料理です。この料理は、岡山県内でも海に近い南部で特に人気があります。出世魚で縁起が良いため、おめでたい席での料理に出されることがあります。

ブリ雑煮の特徴的な点はだしの取り方です。南部エリアでは鰹節と昆布でだしを取るのが一般的ですが、県北部ではスルメを使用することもあります。また、ほうれん草、大根、人参、ごぼう、百合根などの根菜類を豊富に使用するのも特徴です。

調理方法は、大根や人参、ほうれん草などの野菜をさっと湯通ししておき、だし汁に根菜類を加えて柔らかくなるまで煮ます。その後、ブリを加え、しょうゆ、酒、みりんで味を整えます。最後に百合根を加えて完成です。ブリは先に煮付けておくこともあり、また、焼いたブリを使用する方法もあります。餅は別の鍋で柔らかく煮て、お椀に入れてから、ブリや野菜を盛り付けます。

ブリしゃぶ

「ブリしゃぶ」は、富山県の代表的な郷土料理の一つで、特に冬の寒ブリを使用した料理として知られています。富山湾は「天然のいけす」とも称され、冬に捕れる寒ブリは全国的にも高い評価を得ています。

ブリしゃぶの特徴は、新鮮なブリの切り身をさっとだし汁にくぐらせることで、表面にだけ火を通し、中はレア状態に保つことです。これにより、身が締まり旨みが閉じ込められ、また脂が適度に落ちるため、食べやすくなります。

10月から2月の漁獲期に県内の飲食店でよく見られる冬のご馳走です。富山湾で捕れたブリは、水揚げ後すぐに船上で氷冷海水を使って処理され、鮮度が保たれます。この鮮度の良さを活かし、しゃぶしゃぶや刺身などのシンプルな料理が好まれています。ブリ自体が高級品であるため、年末年始や特別な日に食べられることが多いです。

飲食方法としては、だし昆布と水を入れた鍋を火にかけ、煮立たせた後に酒や塩で味を整えます。ブリは薄くそぎ切りにし、水菜やねぎなどの野菜、キノコを適当な大きさに切ります。これらをだし汁に通し、ポン酢やごまだれなど好みのたれで楽しむのが一般的です。

氷見市では冬の時期に「ひみぶりフェア」が開催され、市内のホテルや旅館、飲食店でブリしゃぶを含むブリ料理が提供されます。

このように、ブリしゃぶは富山県の食文化を代表する料理であり、その鮮度と品質、独特の食べ方が多くの人々に愛されています。冬の寒い時期に、温かいだし汁で楽しむブリしゃぶは、富山県の冬の風物詩とも言えるでしょう。