花粉を飛散させるスギの木(資料)
花粉を飛散させるスギの木(資料)

 暖かい日が続き、いよいよ桜が開花する春本番を迎える。ただ、この季節はスギやヒノキの花粉によって、鼻水やくしゃみなど花粉症に悩まされる人が多い。花粉症は新型コロナウイルスの症状と似ていて、区別がつきにくい。花粉症とコロナの症状の見分け方、これからの季節の注意点について島根県立中央病院(出雲市姫原4丁目)の医師に聞いた。(Sデジ編集部・吉野仁士)

 

 リウマチ・アレルギー科部長の永村徳浩医師(59)によると、花粉症は花粉が目や鼻の粘膜に付着し、内部の細胞が刺激され、体が異物を排除しようとさまざまな症状を引き起こす。目の症状は涙の分泌やかゆみ、充血があり、鼻では鼻水やくしゃみ、鼻詰まりが挙げられる。

 花粉症への反応は個人差があるため、どの症状が出るかは分からない。永村医師は「花粉症のピークは毎年3、4月。予防するなら、これからの時期の対策が重要」とアドバイスした。

 一方、コロナの症状は感染症科部長の中村嗣医師(58)によると、喉の痛みやせき、発熱が多いが、人によっては花粉症のように鼻水が出たり、合併症として目が充血する結膜炎を引き起こしたりするという。中村医師は「この時期は花粉だけでなく、喉の痛みやせきを伴う黄砂も飛来する。症状だけで区別をするのは難しい。『いつもの花粉症』と思わず、マスク着用をより徹底するなど、常にコロナの可能性を考えてほしい」と呼び掛けた。

毎年3、4月が飛散のピークとなるスギの花粉。コロナと似た症状があり、判別するのが難しい(資料)

 ▼粘性や色…症状の違いは

 医師の目でもコロナと花粉症の症状を見分けるのは難しいようだ。ただ、永村医師は「目安程度だが、一般的な感染症と花粉症とで、症状が異なる点はある」とし、見分けやすい症状3点を教えてくれた。

 

 ①鼻水の性質

花粉症の場合、鼻水はさらさらで粘性がない、水のようだという

 花粉症で主に出る鼻水はさらさらとした鼻水であることが多く、水様性と呼ばれる。異物を体外に流し出すための反応で、花粉症だけでなく、風邪の引き始めなどで出ることが多い。

 一方、ウイルスや細菌に感染した場合は鼻の粘膜が炎症を起こすため、粘性のある、黄色いうみのような鼻水が出ることが多いそうだ。これからの時期、鼻水が多く出る際、鼻水の粘性と色に注意すれば、判断の目安になりそう。

 

 ②眼脂(目やに)の性質や量

 花粉症により、目のかゆみや涙が出る人がいる。これも鼻水と同じく、目に入った異物を洗い流そうとする人体の反応。まぶたの裏で涙に流された細かな異物が集まって、目やにとして出ることがあるが、基本的にはさらさらとした水のような性質だという。

 細菌やウイルスによって出る目やには粘性がある。目に入ったウイルスや細菌を白血球が分解したものや白血球の死骸が目やにとなるため、通常の目やにと性質が違い、量も多い傾向にあるという。体調の異常を知らせる重要な目印になるようだ。

 

 ③発熱やけん怠感 全身症状の有無

 花粉症は体内に入った異物を排除するための一時的な反応のため、影響が出るのは鼻や目といった異物が入った箇所のみ。発熱やけん怠感といった全身症状が出る場合、花粉症以外が要因の可能性が高いという。

 ただ、コロナのオミクロン株感染者は、従来の変異株と比べると、発熱の症状は軽いとみられている。花粉症で鼻水が出続けると、処理のための疲労を全身のけん怠感と勘違いする可能性もある。

検温はコロナ対策としても重要。花粉症で発熱することはないので、熱があった場合はコロナを疑う必要がある

 永村医師は「あくまでも一般的な感染症との症状の違いで、コロナが同じかどうか確定的なことは言えず、目安に過ぎない」とする。体調に不安を感じたら、花粉症、コロナにかかわらず医療機関に相談することが重要だ。

 

 ▼花粉症、帽子で防止を

 花粉症は毎年、多くの人が悩まされている。永村医師に花粉症の対策を聞いた。

 永村医師は「花粉症になってから医療機関以外でできる対処方法は、あまりない。まずは花粉を体内に入れないことが重要」と、予防策に重点を置くよう呼び掛けた。症状が出てから和らげる方法は内服薬や点眼、点鼻薬など薬を使うことが多いという。

 永村医師によると、最も有効なのはマスクの着用。花粉の鼻への侵入は、マスクで大部分が防げるという。目の防護策としては、花粉の多くは目の上側から目に入ることが分かっていて、つばのある帽子をかぶることが有効だという。

外出時に、つばのある帽子をかぶるだけでも、目に入る花粉の量を減らせる

 衣服も重要で、毛糸素材は花粉が付着しやすいため、この時期は避けるのが望ましいという。毛糸以外の場合でも、帰宅時に玄関先で衣服をはたいて花粉を落としてから家に入ると、室内に花粉が入り込むことがなく、より安心だ。帰宅後、市販の洗眼薬を使うことも推奨する。

 永村医師は「マスクは花粉症だけでなくコロナも予防できるので、特に勧めたい」と話した。