高度成長期などにサラリーマンたちが使っていた「背広」という言葉が死語になりつつある。大阪の街頭で20代の男女に聞いたところ、「分からない」「思い浮かばない」などと30%近くが全くこの言葉を知らず、正確に知っている人でもほとんどが日常的に使っていなかった。国の調査でも、20代で「『背広』を主に使う」とする回答は2%弱しかない。代わって使われているのはスーツという英語由来の言葉だが、クールビズの普及で、サラリーマンでも1年の半分ほどは上着なしで勤務し、スーツに対する家庭の年間支出額は、クールビズ前と比べて約30%減少している。言葉も現物も、背広はどこにいってしまうのか。(張英壽)
「せびれ?」知っていても日常では使わず
「背広」という言葉を知っているか-。大阪を代表する繁華街・ミナミ(大阪市中央区)で、20代の男女33人に聞くと、30%近い9人が全く知らなかった。
「え、せびれ? 魚ですか」と驚いた大阪市淀川区の女性会社員(26)は「全く聞いたことがない」と率直に打ち明けた。スーツの意味と伝えて「背広」と漢字を書いて見せると、納得したように「背中が広く見えるという感じ」と話した。
堺市堺区の男子大学生(20)は「昔の人が着る羽織るもの? 結婚式のときに着る長めのスーツ?」と想像をたくましくした。「『背広』はどこかで聞いたことがあるけど、意味がはっきりわからなかった」という。
大阪府泉大津市の男子大学生(21)は「和服みたいなものかな。思い浮かばない」、大阪市中央区の病院勤務の女性(21)も「見当がつかない」とそれぞれ回答した。