殿堂レリーフ「捕手かぶり」の矜持 野村克也さん一周忌

野球殿堂博物館に展示されている野村克也さんのレリーフ(左、公益財団法人野球殿堂博物館提供)と、現役時代の野村さん
野球殿堂博物館に展示されている野村克也さんのレリーフ(左、公益財団法人野球殿堂博物館提供)と、現役時代の野村さん

 プロ野球の南海(現ソフトバンク)で強打の捕手として戦後初の三冠王に輝き、監督としては南海、ヤクルトで計5度のリーグ優勝と3度の日本一を果たした野村克也さんが昨年2月11日に84歳で亡くなって1年。コロナ禍のためファンも参加できるお別れの会は行われていないが、死去の際には東京ドーム(東京都文京区)内にある野球殿堂博物館で追悼展示が行われ、殿堂メンバーの証しである野村さんのレリーフに花が飾られた。そのレリーフは他の顕彰者と趣を異にし、野村さんの野球人生を象徴している。

ONは巨人、星野氏は楽天

 野球殿堂は球界の発展に貢献した人を表彰する制度で、野球人にとって最高の栄誉とされる。昭和34年にプロ野球の父こと正力松太郎、伝説の名投手といわれる沢村栄治両氏らから始まった。これまで209人が殿堂入りしており、野村さんは平成元年1月に選ばれた。日本一を3度経験するヤクルトの監督就任が決まったのはその年の秋で、南海での功績が認められての選出だった。

 同博物館には殿堂入りしたメンバーの顔が彫られたレリーフが飾られており、ユニホーム組は選手や監督時代の姿がデザインされている。本人の希望が尊重される帽子のマークに注目すると、王貞治、長嶋茂雄両氏なら当然、巨人の「YG」。ミスタータイガースと呼ばれた村山実、田淵幸一両氏は阪神の「HT」だ。

 数球団を渡り歩いた選手はそれぞれこだわりがあるようで、落合博満氏は3度の三冠王に輝いたロッテではなく、中日。星野仙一氏は楽天だ。400勝投手の金田正一、通算3085安打の張本勲両氏はそれぞれ5年、4年しか在籍しなかった巨人の帽子をかぶっている。

なぜか「NH」ではなく

 では、野村さんの帽子はどうなっているのか。殿堂入りはヤクルトの監督に就任する前のため、南海の「NH」が考えられるが、そうではない。帽子が後ろ向きの「捕手かぶり」で、マークが見えないのだ。

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