懲役・禁錮→拘禁刑に 懲罰から更生へ115年ぶり改正

「懲役」と「禁錮」の両刑を、新たに創設する「拘禁刑」に統一する刑法などの改正案が、週内にも国会で成立する見込みとなっている。成立すれば公布から3年以内に施行される見通しで、刑罰のあり方が変わるのは明治以来、115年ぶり。犯罪の抑止を重視し、懲罰から更生へと軸足を移そうという刑事政策の変化が背景にある。(荒船清太)

現刑法では、罪を犯した者には様態に応じて、死刑▽懲役▽禁錮▽罰金▽拘留▽科料-の主刑(独立して科すことのできる刑)を定めている。

懲役と禁錮は、ともに刑務所に収容し自由を奪うもの。懲役は労役(刑事施設内での労働)を伴うが、禁錮には労役が科せられない。拘留は30日未満の刑事施設への収容、罰金は1万円以上、科料は1万円未満の納付をそれぞれ命じる。

現刑法は明治40年(1907年)に公布されたが、それ以前は島流しに類する流刑(るけい)などもあり、懲役も、重懲役(9~11年)と軽懲役(6~8年)に分かれていた。

今回の改正案では、懲役と禁錮を拘禁刑に統一し、目的を単なる懲罰ではなく「改善更生を図るため」と明記。労役に加え更生のための教育も義務付け、刑務所側が受刑者ごとに労役と教育の組み合わせを自由に設定できるようにする。

拘禁刑の導入が決まった要因の一つには、禁錮が有名無実化している現状がある。法務省によると、令和2年の受刑者1万6620人のうち禁錮は53人(0・3%)に過ぎず、ほとんどが懲役。禁錮とされた受刑者も、8割が希望して労役に従事している。

加えて、体が思うように動かないため労役をするのが実質的に無理な高齢受刑者や、再犯防止のための矯正プログラムの充実がより求められる薬物犯罪者の処遇など、一律的に労役が科されることの不都合も指摘されてきた。

懲罰より更生を重視する流れは、以前からあった。平成14年に名古屋刑務所で刑務官が受刑者を死傷させた事件を受けて、旧監獄法が改正され、18年には刑事収容施設法と名称を変えて施行。刑務所とは、社会復帰に向けた準備をする場所だと、明確に位置づけた。

拘禁刑を創設する今回の改正案について、法務省関係者は「ハコ(収容施設)が変わった以上、中身(刑罰)が変わるのも必然だった」としている。

拘禁刑創設へ、専門家「現場の意識改革必要」

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