やっと見つけた自分らしさ デビュー55周年の森山良子

デビュー55周年の森山良子=東京都港区(石井健撮影)
デビュー55周年の森山良子=東京都港区(石井健撮影)

「涙そうそう」などの歌手、森山良子(74)が今年、デビュー55周年を迎えた。6年ぶりとなる自作の新曲「人生はカクテルレシピ」を出し、コンサートツアーで全国を回っている。

今年は、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」に出演し、女優としても久しぶりに注目されたが、「このドラマは私自身と重なるところの多い物語。かけがえのない宝物をいただきました」と顔を輝かせる。森山の父、久はジャズトランペット奏者で、ドラマで重要な存在だった米国のルイ・アームストロングと親交もあった。

森山もジャズを歌っていた。だが、昭和42年に「この広い野原いっぱい」でフォーク歌手としてデビュー。その後、歌謡曲を歌うよう求められるなど、「実は、森山良子ってなんだろうって、ずっと考えていた」と意外なことを明かす。

「何を歌っていいか分からなくなった」。新型コロナウイルス禍で音楽活動ができなくなった当初は、趣味の裁縫に没頭した。楽しかったが、はたと気づいた。「こんな私は音楽家といえるのか? いまやるべきは、やはり曲づくりなのではないか?」

一念発起し、来し方を振り返ってできたのが新曲の「人生はカクテルレシピ」だ。「一刻も早く、世界中で乾杯して喜びあえるようになってほしい」。そんな願いを込めた。にぎやかで愉快な歌だ。だが、これこそ55年をかけて出合えた自分らしい歌なのだという。

「美しい声でまじめな歌を歌ってきたけれど、本当の私はもっとぐしゃぐしゃでお行儀も良くない。そういう生身の自分が、この曲には出ている。私の生き方なんて、こんなもんよ。これからも、もっと自分らしい歌をつくっていきたいです」(石井健)

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