<独自>統合司令部、来年度創設見送り 場所巡り対立も

政府が陸海空自衛隊の一体的運用を進めるために新設する常設の「統合司令部」について、令和5年度の創設は見送られることが29日、分かった。来年度の当初予算案に関連経費が計上されなかった。複数の政府関係者が明らかにした。防衛省・自衛隊内部には統合司令部の設置場所を巡る意見の対立もあり、6年度中の創設を目指して慎重に調整を進める方針だ。

政府は16日に閣議決定した新たな「安保3文書」に、常設の統合司令部を「速やかに創設する」と明記した。3文書に盛り込んだ「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の運用には、攻撃目標などに関する日米間の調整が必要となるため、統合司令部の創設により連携を強化する狙いもある。

現在は、制服組トップの統合幕僚長が防衛相への軍事的助言を行うと同時に作戦指揮を統括し、統合幕僚監部(統幕)が統幕長を支える。新たな体制では、自衛隊全体の作戦指揮を執る「統合司令官」を新設し、政治への対応は引き続き統幕長が担当する。

統合司令部の設置構想は平成23年の東日本大震災を機に浮上した。統幕長が首相らへの説明に忙殺され指揮に当たる時間が不十分だったとの反省から、30年改定の「防衛計画の大綱」への記載が検討されたが、見送られた経緯がある。

理由の一つが設置場所を巡る意見対立だった。有事対応は政治判断を求められる場面が多く、首相官邸に近い東京・市谷の防衛省庁舎を推す声が省内を中心に強い。ただ、約400人規模の統合司令部を置くには手狭で、陸上自衛隊の5つの地方方面隊を束ねる陸上総隊司令部のある朝霞駐屯地(東京都練馬区)が陸自や統幕の関係者の間で有力視されている。

また、航空自衛隊の戦闘機部隊を指揮する空自航空総隊司令部がある横田基地(東京都福生(ふっさ)市)や、海上自衛隊の自衛艦隊司令部がある横須賀地区(神奈川県横須賀市)を候補地とする見方も根強い。日米間で指揮統制システムが既に共有されていることが理由だ。

陸海空各自衛隊が自らの拠点に統合司令部を置きたいとの思惑もあり調整が難航することも予想される。

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