中国当局、処理水放出に関するSNS発信を厳格管理 「心配不要」の投稿削除

処理水の海洋放出を始めた東京電力福島第1原発=24日
処理水の海洋放出を始めた東京電力福島第1原発=24日

【北京=三塚聖平】中国の習近平政権が、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を受けて対日批判を展開する中、中国の交流サイト(SNS)で処理水放出に「心配はいらない」と表明した投稿が削除されている。中国政府の主張に合わない情報発信を当局が厳しく管理しているもようだ。

香港紙、明報(電子版)などによると、中国の短文投稿サイト、微博(ウェイボ)で欧州在住の中国人原子力専門家のものとみられるアカウントが24日、日本の処理水放出について具体的なデータを使って解説。中国当局が国内の原発で定めるトリチウムの放出上限は福島第1原発の8倍であり、今回の処理水放出は「心配するに値しない」との考えを示した。その後、間もなく投稿は削除され、アカウントも封鎖されたという。現在、そのアカウントは閲覧できない。

中国の通信アプリ「微信(ウィーチャット)」でも、国連機関のレビューや科学者の意見などを引用した文章が削除されたと伝えられている。

中国政府は、処理水放出について「データの真実性や正確性、海洋環境や人類の健康への安全性、無害性を証明していない」(外務省報道官)などと主張。こうした公式見解にそぐわないSNS投稿に神経をとがらせているとみられる。

中国のSNSでは、日本に対する蔑称である「小日本」という表現も使い「小日本を打ち倒せ」「わが国の小日本への一切の措置を支持する」といった反日ムードが強い投稿が目立つ。

これまでに反日デモなどは確認されていないものの、北京の在中国日本大使館は在留邦人に対し「外出する際には不必要に日本語を大きな声で話さないなど慎重な言動を心がける」といった注意を呼び掛けている。

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