主張

国連安保理 台湾有事でも機能困難だ

20日、国連安全保障理事会の会合で発言するウクライナのゼレンスキー大統領。その左は岸田首相=米ニューヨーク(共同)
20日、国連安全保障理事会の会合で発言するウクライナのゼレンスキー大統領。その左は岸田首相=米ニューヨーク(共同)

国連の安全保障理事会でウクライナ情勢に関する首脳級会合が開かれた。

ウクライナのゼレンスキー大統領や岸田文雄首相、ブリンケン米国務長官らはロシアを非難し、ウクライナ侵略を直ちに停止するよう求めた。

だが、安保理での拒否権保有を背景に常任理事国ロシアは開き直った。国際社会の平和を守る役割を担っているはずの安保理は、常任理事国が国連憲章を踏みにじり侵略を続けても止める術(すべ)を持たない。

この残念な現実を日本国民は認識する必要がある。

岸田首相は「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」と繰り返し語ってきた。これを聞いて多くの人の頭に浮かぶのは、台湾有事や尖閣諸島を含む日本有事、朝鮮半島有事の恐れだろう。

常任理事国の中国が台湾に軍事侵攻したり、日本を侵略したりすればどうなるか。北朝鮮が日本や韓国を攻撃すればどうなるか。

中国やロシアが安保理で拒否権を行使できる以上、安保理が侵略をやめさせる手立てを講じるのは困難だ。

朝鮮戦争では安保理決議により朝鮮国連軍が創設された。北朝鮮を支援したソ連は、安保理を欠席するという「失策」をおかしたため、拒否権を行使できなかった。今も朝鮮国連軍は日韓両国に存在し、朝鮮半島有事の際には機能できる。

今後、台湾などで有事が起きてもソ連の安保理欠席のような僥倖(ぎょうこう)は望めまい。中国やロシアの拒否権で安保理は機能不全に陥ることになる。

安保理の機能不全は、日本政府や安保専門家にとっては自明の話だが、日本国民に理解が広がっているとは言いがたい。

安保理に多くを期待できない日本は同盟国米国やオーストラリア、英国、韓国など有志国との安保協力が欠かせない。台湾との連携も重要だ。政府はその必要性を国民に説くべきだ。

日本の常任理事国入りなど安保理改革は必要である。

ただし、既存の常任理事国の同意なしに拒否権廃止はできない。中露両国が廃止に応ずることはあるまい。

日本は機能不全必至の安保理に頼らず、防衛力強化や同盟国、有志国との連携によって抑止力を高める必要がある。

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