万博PRの貨物列車「列島縦断リレー」のはずが…条例制約で軌道修正

静岡貨物駅のイベントに登場した大阪・関西万博をPRする車両と公式キャラクター「ミャクミャク」=5月21日(JR貨物提供)
静岡貨物駅のイベントに登場した大阪・関西万博をPRする車両と公式キャラクター「ミャクミャク」=5月21日(JR貨物提供)

大阪・関西万博のロゴをあしらった貨物列車があなたの街に-。万博の全国的な機運醸成を図ろうと、JR貨物の車両を使ったキャンペーン「列島縦断!鉄道コンテナリレー」が進行中だ。5月に出発式があり、万博が開催される令和7年には会場近くの駅で到着式を行う予定。ただ当初は〝万博列車〟が全国を走り回る構想だったが、法的な制約から列車の運用方法の軌道修正を余儀なくされている。

「出発進行!」。5月6日、大阪府の吹田貨物ターミナル駅で行われた出発式。藤田善典駅長の掛け声とともに、万博のテーマソング「この地球(ほし)の続きを」の吹奏楽の演奏が流れる中、ロゴ入りヘッドマークを付けた機関車が牽引(けんいん)する貨物列車が力強く動き出した。

ところが、万博関係者の機運醸成への思いを満載した列車は200メートルほど進んで停止。ヘッドマークとコンテナから、万博デザインのものは全て取り外され、通常の貨物列車に戻ってしまった。

「本当は万博のヘッドマークを付けた貨物列車を、各地で走らせることができればよかったのですが…」。JR貨物の関係者は残念そうに話す。

万博ロゴがデザインされたヘッドマークや、コンテナに取り受けるシートは全てマグネット方式で、容易に着脱できるようにしているという。

キャンペーンは一般社団法人「夢洲(ゆめしま)新産業・都市創造機構」が主催し、JR貨物の特別協力により実施。「列島縦断」「リレー」という言葉からも連想されるように、当初は万博仕様の貨物列車が全国を走り回ることで、万博を広くアピールする狙いで企画された。

ところが、各地の自治体が制定している屋外広告に関する条例がネックとなった。各地の自治体条例は過激な宣伝の排除や景観維持の目的で、広告が占める面積などを規制。過去には人気漫画「ドラえもん」のキャラクターを車体に描いた小田急電鉄の車両が、東京都の屋外広告物条例に抵触し、運行が打ち切りになった例もある。

万博列車も条例に抵触する恐れがあり、レールが敷かれている全自治体の確認を取る必要があることから計画を変更。各地で開かれる貨物駅でのイベントに、万博ロゴ入りヘッドマークとシートを付けた貨物列車を展示する形に落ち着いた。

出発式の後は静岡貨物、隅田川、仙台貨物ターミナルの各駅でのイベントに合わせてピンポイントで万博列車を展示。今後も各地の駅に登場させ、最終的に7年春、万博会場に近い安治川口駅で到着式を行う。

JR貨物の担当者は「万博のPRと、全国津々浦々を巡る貨物列車の特性を運用面でマッチさせるのが難しかった」と説明。それでも「珍しいヘッドマークを付けた貨物列車は鉄道ファンに好評。万博をしっかりと盛り上げたい」と語った。(井上浩平)

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