トリガー条項、凍結解除されればガソリン25円安く 事実上の恒久減税 

ガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の凍結解除に関する協議が本格化してきた。トリガー条項とは、総務省が毎月発表しているガソリンの全国平均小売価格が3カ月連続で1リットル当たり160円を超えた場合、価格に上乗せされるガソリン税53・8円のうち上乗せ分25・1円が免除される制度。発動されれば、単純にガソリン価格が1リットル当たり約25円安くなる仕組みだ。

逆に原油高騰が一段落し、3カ月連続して1リットル当たり130円を下回れば元の税額に戻す。ただ、足元で200円近いガソリン価格が、近い将来130円を下回る可能性は低く、事実上の〝減税措置の恒久化〟と見る向きも多い。もっとも、トリガー条項の発動が1年間続けば、国で1兆円程度、地方で5千億円程度の税収減となるだけに、税収確保を命題とする財務省や一部自治体が凍結解除に反対姿勢を示す。

震災復興財源の確保のため凍結

ガソリン小売価格の推移
ガソリン小売価格の推移

トリガー条項は、民主党政権時代の平成22年度の税制改正で導入された。20年に燃料価格の高騰が続いた際、同年4~9月の1リットル当たりのガソリン価格の平均が167円まで急騰したことを基準に置き、条項の発動条件を160円に設定した。ガソリン価格は一時的に急騰する場合も多く、価格の上昇が継続していると判断するのに3カ月が必要とした。

だが、23年に発生した東日本大震災の復興財源を確保するため同条項は凍結され、現在も凍結されたままだ。

ちなみに、トリガー条項のトリガーとは、ピストルなどの引き金のこと。あらかじめ定めた条件を満たすと、ピストルの引き金を引くように自動で条項が発動されるためトリガー条項と呼ばれている。

解決すべき課題多く

凍結解除に向けては、昨年春にも、自民、公明の与党と国民民主党で協議したが、課題解決の糸口が見いだせず、結局、見送った経緯がある。

議論を進めるには、解決すべき課題は多い。

ひとつは、凍結解除には根拠となる震災特例法の改正が必要で、国会審議を経るため時間がかかり、スピード感をもった対応ができないことだ。国や地方へ税収減分を補塡(ほてん)しなければならず、減収分の財源探しも必要になる。

また、発動すればガソリン価格の値下がりを見越した買い控え、逆に終了前には駆け込み需要が生じるため、給油所や流通の混乱も懸念される。

トリガー条項の対象はガソリンと軽油のみで、冬場の需要が高まる灯油や、農家のビニールハウスや漁船の燃料などに使われる重油は対象外となる。そのため、発動による恩恵の少ない一部業界からは、新たな支援を求める声もあがるとみられる。

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