防衛省が自衛官増員へ本腰 定員確保へ「実員」廃止 水機団など手当拡充も

陸上自衛隊の訓練で水陸両用車AAV7から降車する水陸機動団=静岡県の東富士演習場
陸上自衛隊の訓練で水陸両用車AAV7から降車する水陸機動団=静岡県の東富士演習場

防衛省は令和6年度から、自衛官の増員に向けて本腰を入れる。定員から一定数を減らした予算上の人数を示す「実員」と呼ばれる枠組みを撤廃する。事実上、自衛官数の上限となっていた実員をなくすことで、法律で定められた定員の確保を目指す。一方、人材基盤を強化するため、陸上自衛隊の水陸機動団など自衛官の手当て拡充も図る。

実員は、人件・糧食費を算出する上で、財務省による査定を受けて決定される予算上の自衛官の人数。5年度の時点で、自衛官の定員は24万7154人なのに対し、実員は23万5110人。定員に対する実員の割合を示す「充足率」は約95%となっている。

昭和30年代に自衛官の募集が難航し、定員を埋められず予算を返上する事態が相次いだため導入された。近年は、実員が事実上の上限となり、安全保障環境を踏まえ防衛に必要な人数から算出した定員が形骸化しているとの指摘もあることから、防衛省内で廃止を求める意見が上がっていた。

昨年12月に閣議決定された安保3文書の策定過程では、防衛費の大幅増を見越し、自衛隊の「制服組」が定員増を要求。これに対し、財務省は少子高齢化の影響で現行水準の定員を満たすことは難しいと指摘し、まずは定員を確保することを求めた。3文書では「自衛官の定員は増やさずに必要な人員を確保する」とし、定員増を見送った。

安保環境が厳しさを増し、人材確保が求められる中、防衛省は実員を撤廃することで、自衛官の人数を定員に近づけ、将来的な定員増につなげたい考えだ。

ただ、少子高齢化や高水準で推移する有効求人倍率の影響も受け、自衛官の募集は厳しい状況が続く。実員を廃止したからといって、すぐに人材が集まるわけではない。防衛省は6年度、人的基盤強化策の一環として手当の拡充など自衛官の処遇改善を図る。

6年度当初予算案に96億円を計上し、離島防衛の専門部隊である陸自の水陸機動団に対する「特殊作戦隊員手当」の支給割合を約13%引き上げるほか、護衛艦や潜水艦で勤務する海上自衛官への「乗組手当」も支給割合を約10%引き上げる。

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