2023.11.06

緑茶、玉露、煎茶って何が違うの?季節の和菓子との組み合わせを考える

季節の和菓子に合わせる飲み物として、日本茶を選ぶ方は多いでしょう。しかしその一方、普段から何気なくいろいろな種類の日本茶を飲んでいるものの、緑茶・玉露・煎茶の違いが分からない方もいると思います。緑茶・玉露・煎茶の違いを知ると、季節の和菓子と組み合わせるのも楽しいのではないでしょうか。

四季の訪れを感じる季節の和菓子

和菓子は日本の伝統的なお菓子です。その材料も米や小麦、豆類、寒天、栗、梅の実、さつまいもなど、日本が誇る豊かな自然の恵みを用いて作られています。

春には桜の葉を使った「桜餅」、夏には寒天で固めた涼し気な「水ようかん」、秋には旬の栗を使った「栗粉餅」、冬は梅の花びらに見立てた「花びら餅」などのように、和菓子と聞いて四季折々の風情を思い浮かべる人も多いのではないでしょう。※1

旬の食材を使った和菓子のほかにも、季節の風物を表した和菓子があり、職人の高い技術が光ります。なかでも芸術性の高い和菓子といえば、白のこし餡に色を付け、季節を形にしたような「練りきり」です。舌だけでなく目でも楽しめる練りきりは、茶席やおもてなしに欠かせません。※1

和菓子の歴史と茶の湯との出会い

緑茶

本来、茶の湯に合わせるお菓子といえば「落雁」でしょう。落雁は西アジアから中央アジアで生まれ、14世紀〜16世紀頃に日明貿易を通じて日本に伝わりました。 当時の日本は室町時代で茶の湯(茶道)が誕生した頃でした。

茶の湯文化は政治の手段としても権力者たちの間で広がり、同時に茶菓子として出された落雁も広く愛されるようになりました。

やがて乱世といわれた戦国時代が終わりを告げ、人々の生活が安定してきた江戸時代には、庶民の間にも和菓子が広がって、さまざまなお菓子が作られるようになりました。※1
現在も食べられているような和菓子は、天下泰平の江戸時代に誕生したのです。茶の湯とともに発展してきた和菓子は、南蛮菓子の伝来で種類も増えたといわれています。

和菓子は非常に種類が豊富で、全国に伝わる和菓子以外にも、地域で親しまれている独自のものがあります。また、洋菓子にも使われる食材を取り入れて創意工夫された和菓子もあります。

古くから伝わるものだけにとどまらず、さまざまな和菓子を季節の移ろいとともに楽しめるのも、現代ならではの醍醐味かもしれません。

緑茶・玉露・煎茶の違い

緑茶

緑茶・玉露・煎茶と聞いて思い浮かべるのは、透明感のある黄色から緑色までのお茶だと思います。これらには、どのような違いがあるのでしょうか。

緑茶とは、摘み取ったチャノキの葉をすぐに加熱し、酸化酵素の働きを止めた「不発酵茶」のことです。緑茶の茶葉は深い緑色をしており、湯で抽出したお茶も黄色から緑色です。

玉露や煎茶は緑茶の一種ですが、栽培や加工の過程が異なるため、味わいに違いが生まれます。なお、抹茶、番茶、ほうじ茶なども緑茶です。※2※3

日本人が最もよく飲む緑茶は煎茶です。
煎茶は、春に摘み取られた一番茶を加工したもので、香りが良く、甘味、渋味、苦味、旨味のバランスが取れています。

加工途中の蒸し時間が長いものは「深蒸し煎茶」と呼ばれます。煎茶よりも深い緑色をしているのが特徴で、長く蒸すことによって茶葉の渋味が少なくなり、柔らかい味わいを楽しむことができます。※2※3

玉露も煎茶と同じく一番茶を加工したお茶です。
煎茶と異なるのは、収穫予定日の3週間ほど前からチャノキに覆いをかぶせ、日光を遮って育てた茶葉を使うことです。

日光を遮ると苦味や渋味成分が作られにくくなり、茶葉には旨味が閉じ込められます。また、香りも特有で、青海苔のような青っぽい匂いがします。この香りは日光を遮ることで生まれるため「覆い香(おおいか)」と呼ばれています。※2※3

玉露は緑茶の中でも最上位にランクされるお茶です。その奥深い旨味と爽やかで特有な香りを堪能するためには、喉を潤すようにごくごくと飲むのではなく、じっくりと味わうことをおすすめします。※2※3

玉露と煎茶どちらにする?季節の和菓子に合わせる緑茶

緑茶

緑茶と和菓子はどのような場面で用意するのでしょうか。

ほっと一息つきたい時のカジュアルなおやつとして、大切なお客様のおもてなしとしてなど、さまざまなシーンが思い浮かぶと思います。お茶と和菓子の組み合わせは変えつつ、シーンに合わせた季節の和菓子を準備することもあるでしょう。

お茶と和菓子にはお互いを引き立てる役割があり、その組み合わせによってさらに美味しく感じます。茶道では最初に和菓子が出され、和菓子を食べ終えた後に抹茶を飲むのが作法です。この順番は抹茶の味をまろやかにするためなのです。※3

作法があるお茶席と違ってリラックスしながらお茶と和菓子を楽しむ場合は、種類が豊富な和菓子と玉露や煎茶の組み合わせは無限大です。決まりはありませんので、自分好みの組み合わせがきっと見つかるはずです。

そんな組み合わせの例を知りたい方もいると思いますので、ここではその一例を紹介します。

旨味のある玉露には、上品な味わいの練りきりや小豆の風味が広がる羊羹などを組み合わせるのがおすすめです。そして、味わいのバランスが良い煎茶は、甘味のある最中や米の風味が広がるお煎餅などを組み合わせてみてはいかがでしょうか。

それぞれに美味しい和菓子とお茶ですが、組み合わせることで味わいも深まり、その世界観をさらに楽しむことができます。

緑茶は日本各地で栽培されており、産地によって味わいに特徴があります。玉露や煎茶のような種類の違いで組み合わせを変えるだけでなく、産地で緑茶を選んで季節の和菓子と組み合わせるのもおもしろそうです。


☆和菓子とお茶にまつわる話はこちらでも紹介しています。
紫式部もお茶菓子を食べた?平安時代にも飲まれていた「お茶の起源」とは?
お茶請けとは?ピッタリな和菓子の種類は?知っておきたい「お茶請け」の基本
カテキンと緑茶の最新事情。30代からの健康を考えた緑茶習慣



<参考>
※1 日本和菓子協会 和菓子ものがたり
https://www.wagashi.or.jp/monogatari/
※2 お茶の科学 大森正司
※3 日本茶の図鑑 公益社団法人日本茶業中央会 NPO法人日本茶インストラクター協会


  • はせがわじゅん

  • ライタープロフィール
    はせがわ じゅん(管理栄養士)
    WEBメディアで食や栄養に関わる記事の執筆のほか、レシピ開発、栄養計算を行うとともに、年間約300名以上の特定保健指導に携わっています。