発達障害とは? 症状の原因や識別は?〈深く知るために〉

 診断される人が急増している「発達障害」は、子どもの頃に発達の遅れや偏りが現れ、その特性によって学校や仕事などの社会生活に支障を来している状態をいう。症状によって診断名が分かれ、発達障害者は生活上の支障が原因でさまざまな生きづらさを感じている。ただ、症状の原因は生物学的に解明できておらず、診断は受診者の言動に基づいて行われるため識別が難しい。

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言動から診断...識別が難しい

 発達障害は、世界保健機関(WHO)の「国際疾病分類(ICD)」や、米国精神医学会が作成する「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」の分類・基準に基づき診断される。これらの診断分類の最新版によれば、いわゆる発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などが含まれる=図。これらの症状は重複することがある。
 信州大医学部子どものこころの発達医学教室の本田秀夫教授によると、ASDには、「臨機応変な対人関係が苦手」「こだわりが強い」という二つの特性がある。光や音などの感覚刺激に過度に敏感な人や、逆に過度に鈍感な人もいる。こうした特性は、生活環境やストレスの程度によって強く出たり弱く出たりする。2013年に出版されたDSM第5版(DSM―5)では、症状の一定の範囲(スペクトラム)をまとめてASDと呼ぶ診断名が採用された。
 ADHDは、不注意や多動性・衝動性の特性がある。LDは、読むことや書くこと、計算が苦手という特性がある。他に吃音(きつおん)やある動作・声を繰り返すチック症、運動が苦手になりやすい発達性協調運動症(DCD)も発達障害に含まれる。
 一部には、発達の特性があり学校生活に支障があるものの、非常に才能豊かで「2E」(二重に特別な配慮を要するという意味)と呼ばれる子もいる。

生物学的メカニズムは未解明

 発達障害の理解が難しい背景には、症状の生物学的なメカニズムが解明されていないことがある。生まれつきの中枢神経系の機能障害とされているが、人間の脳は生後発達する部分も大きいため、周囲の人との相互作用や置かれた環境による脳の発達によって症状の発現の仕方が修飾(生来のものが一部変化)する可能性もある。診断は、知能やコミュニケーションなどの検査結果を参考に受診者の困り感の訴え、発達経過の聴取、行動観察などによって行われる。
 診断分類は診断の客観性・信頼性を高めるために改訂を重ね、世界中の医療や研究の現場で利用されている。だが、最新版もまだ科学的な根拠に基づく診断指標の提示には至っていない。今後も脳科学の進歩を踏まえ、症状の定義や分類の組み替えがあると専門家は指摘している。

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