超高齢社会で需要が高まる介護・福祉用具のレンタルサービス。SDGsの目標達成と環境配慮で社会に貢献

リース業界最新動向 Vol.24 介護・福祉用具レンタル編

介護保険制度で提供されるサービスの一つである介護・福祉用具のレンタル(福祉用具貸与)。高齢者人口の増加による需要増で介護・福祉用具市場は安定的に成長を続け、今後は介護保険外のレンタルや周辺分野の市場の拡大も見込まれる。介護・福祉用具のレンタルサービスの市況と周辺サービスの可能性について、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)グループでレンタルを主業とするSMFLレンタルの執行役員・大谷康二に話を聞いた。

利用者の自立した日常生活と家族の負担軽減に貢献

「介護・福祉用具のレンタルサービスは、要介護者または要支援者といった利用者の日常生活上の便宜を図り、家族の介護の負担軽減に貢献しています」。こう話すのは、SMFLレンタルの執行役員の大谷康二だ。

SMFLレンタル 執行役員
大谷 康二

「日本では高齢化の進展に伴い、寝たきりや認知症といった介護を必要とする高齢者が増加。介護期間も長期化する傾向にあり、介護ニーズが増大し続けています。その一方で、核家族化の進行や介護する家族の高齢化など、要介護高齢者を支えてきた家族をめぐる状況が変化し、従来の老人福祉・老人医療制度だけで対応するのが難しくなってきました。そこで、介護が必要になった高齢者やその家族を社会全体で支え合う仕組みとして、2000年4月から介護保険制度がスタートしたのです。この介護保険制度において提供されるサービスの一つが『福祉用具貸与』、いわゆる『介護保険レンタル』です」

介護保険レンタルの対象となる福祉用具は、「車いす」などの全13品目※1で、レンタルならば月々の低廉な費用負担で利用できる。
介護保険制度は定期的に見直され、介護報酬の改定が3年に1度、介護制度そのものの改正が5年に1度実施される。2018年度の報酬改定では、福祉用具貸与に上限価格が設定され、価格の引き下げ策が実施された。

「介護保険制度の安定性・持続可能性を確保するための施策ですが、介護保険レンタルを含む介護・福祉用具市場という観点ではマーケットの拡大にブレーキをかける要素でした。ただ、この施策の実施後も要介護者の増加による介護・福祉用具の需要は増え続けており、市場は安定成長軌道にあります」と大谷は説明する。

厚生労働省の「介護給付費等実態統計」によると、福祉用具貸与の年間実受給者数は2021年度で前年度比5.1%増の270万人に上る※2。日本福祉用具・生活支援用具協会の調査では、福祉用具産業※3の市場規模は2020年度で前年度比0.9%減の1兆5,055億円で、2009年度から緩やかな伸びが続く。2020年度の前半は新型コロナウイルス拡大防止対策の影響により市場は縮小したが、後半は持ち直している。

介護・福祉用具レンタル市場の今後について、大谷は「日本の高齢者人口は団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年までは急増し、以降2040年まで緩やかな増加が続く見込みです。働き手が減少傾向にある中、介護・福祉用具のレンタル需要は拡大が続くでしょう」と予測する。さらに大谷は「介護保険レンタルに加えて、今後は保険外レンタル(一般レンタル)の市場の拡大も見込まれます」と話す。

「特別養護老人ホームや有料老人ホームなど、高齢者施設のサービスや安全性の向上を目的に導入する介護関連機器や、人手不足を補うための機器は、レンタルでの導入ニーズが高まっていくでしょう。その一つが、介助者の負荷を軽減する『介護サポートロボット』です。現在も一部保険適用となっていますが、ほかにも、高齢者の外出や屋内移動をサポートする歩行アシストカートや、見守りや円滑なコミュニケーションを実現する機器などの開発が進められ、導入・活用事例が着実に増えています。また、アクティブシニアと呼ばれる人たちは、介護保険の対象でなくてもさまざまなサービスを活用し、意欲的に生活を楽しんでいます。こうしたアクティブシニアがターゲットの健康維持を目的とする機器(トレーニング器具や睡眠補助器具)など、市場拡大の可能性に満ちています」

  • ※1「車いす」「車いす付属品」「特殊寝台」「特殊寝台付属品」「床ずれ防止用具」「体位変換器」「手すり」「スロープ」「歩行器」「歩行補助つえ」「徘徊感知器」「移動用リフト」「自動排泄処理装置」
  • ※2厚生労働省「介護給付費等実態統計 2021年度」2022年11月公開
  • ※3狭義

さまざまな介護関連機器・福祉用具

介助者の負荷を軽減するサポートロボット、歩行アシストカートなどは導入・活用事例が着実に増えている。今後は健康維持を目的とする機器(トレーニング器具や睡眠補助器具)などの導入ニーズの拡大が予測される

介護・福祉用具レンタル機器が利用者に届くまで

多種多様な製品をレンタル会社が購入し所有・品質管理を行う。利用者は福祉用具貸与事業者を介して希望の製品をレンタルする

“ 清潔・安全・安心 ” を高水準で提供するSMFLのレンタル

利用者の立場から見ると、介護・福祉用具は利用する期間が読みづらいという特徴がある。リハビリによる回復も含め、利用者の介護度が変化した際は状態に適応した仕様のものが必要となり、利用期間が終われば不要になる。その意味で、必要に応じて介護・福祉用具の入れ替えが柔軟にでき、しかも介護保険の適用によりリーズナブルなコストで利用できるレンタルは最適な導入手段といえる。

また、介護・福祉用具はその性質上、安全・安心であることが絶対に欠かせない。不特定多数が利用するレンタルにおいて、その点がいかに担保されているかは、利用者にとって最も気になることの一つだろう。大谷は「利用者様からは目に見えない部分だからこそ、安全品質を徹底しています。清潔で安心な商品を提供するために、一つずつ丁寧にメンテナンスを実施しています」と話す。

「返却品と運搬車両は、安全性の担保はもちろん衛生管理にも万全を期しています。返品された商品を回収した後、まずは『一次消毒』。次に『洗浄、微酸性電解水消毒』を実施します。高圧洗浄機を使用し、ベッド・車いす・歩行器など、ほとんどの商品を水洗いし、細かい埃や汚れもくまなく落とすのです。そして、洗浄した商品には微酸性電解水をかけ流します。これは食材の殺菌にも使用されている環境に優しい殺菌水です。品目によっては『オゾン消毒』で殺菌消毒を行いますが、オゾンによってゴムが傷むおそれがあるため、車いすなどゴムが使われている用具は別途消毒を行います」

衛生管理の行程が増えるほどコストがかかる。しかし「コロナ禍で市場が縮小した2020年度の前半も、介護・福祉用具を必要としていた人が減ったわけではありません。よりシビアになった衛生管理のニーズに応えながら市場を維持し、下支えしていくことが大手レンタル会社の役割であり、使命だと考えています」と、大谷は断言する。

SMFLレンタルでは、介護保険が適用される13品目以外にも、要介護者や要支援者、介護をする方のニーズに応えて、さまざまな「+α」の商材も取り扱っている。

「SMFLレンタルは、介護・福祉用具卸の業界トップクラスのパラマウントケアサービス株式会社の販売代理店として、介護・福祉用具のレンタルのほかに卸事業(販売事業)も展開しています。高機能な電動ベッドや車いすのほかに、アクティブシニアにお使いいただけるトレーニング機器などを幅広く取り揃えています。また、『サンネットワーク東京』という事業名称で、城東センター(東京都足立区)、柏営業所(千葉県柏市)、つくばセンター(茨城県土浦市)、水戸営業所(茨城県水戸市)の4拠点を運営しており、品質にこだわりながら、地域の介護事業者さま向けにさまざまな商品とサポートを提供しています」

SMFLレンタルが徹底する、衛生・安全管理の7行程

SMFLレンタルでは製品の一次消毒から保管まで、7つの行程で徹底管理している。消毒方法により劣化につながるゴムを使用した用具は別途消毒を行うなど、手間とコストを惜しまない

レンタルを通して最適な用具を届けるため、新たなレンタルサービスの開発もマスト

2024年度には介護保険制度の改正が予定されているが、どのような改正内容となるか、2023年4月時点では未知数だ。大谷は「どのような改正になったとしても、SMFLレンタルは柔軟に対応してまいります。介護保険制度の変更に影響されない、保険外レンタルなどのレンタルサービスの開発にも注力していきたい」と言葉に力を込める。

日本の社会課題である少子高齢化と労働力人口の減少が進む中、介護負担という課題を解決し、高齢者の生活の質を向上する役割を担う介護・福祉用具のレンタルは、SDGsの目標の一つ「すべての人に健康と福祉を」というゴールの達成に貢献するという意味でも、その社会的意義は大きい。SMFLレンタルはその一翼を担っている。

「介護・福祉用具の使用を余儀なくされている人々へ、手を差し伸べる。レンタルを通して最適な用具を届ける──これが私たちの使命です。介護・福祉用具を利用される方々に寄り添える企業であるために、これからも高い品質管理でレンタル物件をお客さまへお届けしてまいります」

返却されたものをしっかりとメンテナンスして、次の利用者に届ける介護・福祉用具のレンタルは、環境負荷が少ない「リユース」の観点でも社会に貢献しているといえる。制度改正といった外的要因に左右されることなく、常に利用者視点で人と社会に寄り添い続けるSMFLレンタルの今後に注目だ。

  • 新型コロナウイルスをはじめとする感染症予防対策を取った上で、取材を実施しております。

(内容、肩書は2023年7月時点)

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