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「若者はスマホ依存していない?」 電通ワカモンに聞く、イマドキの若者の価値観やスマホとの付き合い方

「若者はスマホ依存していない?」 電通ワカモンに聞く、イマドキの若者の価値観やスマホとの付き合い方

若年層から高齢者層まで、あらゆる世代にとって、いまやスマホは日常生活に欠かせない必需品となりました。しかし、ひと口に「スマホの利用」といっても、Z世代と呼ばれるデジタルネイティブ世代と30代より上の世代とでは、スマホを利用する時間や閲覧するコンテンツの種類が異なるようです。

若者のスマホ依存やSNS依存が問題となっている背景には、どのような生活習慣や価値観の変化があるのでしょうか?

10〜20代の若者の実態を研究している「電通若者研究部(電通ワカモン)」の吉田将英さんが、イマドキの若者の実態について語ってくれました。

電通若者研究部(電通ワカモン)

電通ワカモンに聞く、イマドキの若者の価値観やスマホとの付き合い方

高校生・大学生を中心に10〜20代の若者の実態にとことん迫り、若者と社会がよりよい関係性を築けるようなヒントを探るプランニング&クリエーティブユニット。若者と社会の間に立ち、双方とフラットに向き合いながら企業のビジネス創造や日本社会の活性化までも目指している。

電通ワカモンのウェブサイト

電通ワカモンに聞く、イマドキの若者の価値観やスマホとの付き合い方

語ってくれたのは、電通 吉田将英(よしだ・まさひで)さん

大学卒業後、前職を経て電通入社。現在は経営全般をアイデアで活性化する電通ビジネスデザインスクエアに所属し、さまざまな企業と共同プロジェクトを実施している。 また、電通ワカモンを兼務し、消費心理・動向分析と、コンサルティング/コミュニケーションプラン立案に従事している。単著に『アンテナ力』(三笠書房・2019年)、共書に『若者離れ』(エムディエヌコーポレーション・2016年)など。

イマドキの若者は無関心? 時代の変化から若者の価値観を探ってみた

イマドキの若者は無関心? 時代の変化から若者の価値観を探ってみた

電通若者研究部(以下、ワカモン)のミッションについて教えてください。

今の日本では、学生以前・以降のボーダーがはっきり分かれています。インターンや就職活動など、オフィシャルな形でなければ、若者が社会に出られない。若者の社会との関わり方の多様性の低さが、彼らが世の中へ進出する機会の妨げになっているというのが、僕らの仮説です。若者と社会の間に入り、より良い関係性をデザインして、イノベーションにつなげることが、ワカモンのミッションと位置づけています。

ワカモンのミッション

ワカモンのミッション

ミレニアル世代が10代だった頃に比べて、若者の価値観はどう変わってきているのでしょうか?

「KY(空気が読めない)」という言葉が流行語大賞にノミネートされたのは、2007年。人と関わるときに空気を読むべき、自己主張は避けよという意識の表れが、この言葉を生みました。それから10年以上経ち、最近では、自己表現に対する抵抗感が、どんどん下がってきています。何てことのない5秒動画みたいなものを、若者たちは、インスタグラムに気軽にポストしますよね。「私はこう思った」という主張や、「私らしさ」を表現することへの抵抗感の薄れは、ミレニアル世代と今の若者との大きな違いかなと思います。

上の世代「俺らの時代は、メシ代を削って服を買ってたよな!」→若者「昔は暇だったんすね」

電通ワカモンに聞く、イマドキの若者の価値観やスマホとの付き合い方

イマドキの若者は、無関心・低体温と表現されることもあります。若者と接することの多い吉田さんから見て、こういった世間一般のイメージは、合っていると思いますか?

そう見えるのはなぜかという点が、大事なクエスチョンですね。かなり古いですが「くうねるあそぶ。」というコピーが流行った時代に比べて、今は生活を構成するチャンネルが非常に多い。どこに時間やお金、精神力を割くかという選択肢の幅が、昔に比べて広くなっているんです。「私はこれに時間を割きたい」「この子と一緒にいたい」「これはどうでもいい」というふうに、若者の中では濃淡がはっきりしていますが、チャンネルが少なかった時代に青春を過ごした上の世代から見ると、1つのチャンネルにかける意欲が淡白に映るんだと思います。

それを無関心とか低体温と表現するのは、大変なミスリードだと、僕は思います。「俺らの時代は、メシ代を削って服を買ってたよな!」みたいな話をされても、今の若者は「ちょっとよくわかんないっす」「昔は暇だったんすね」と言うでしょうね。

スマホ依存に陥らないために…スマホとの良好な関係の築き方

電通ワカモンに聞く、イマドキの若者の価値観やスマホとの付き合い方

スマホは、今の10〜20代の拠り所となっています。その主な理由はどこにあるのでしょうか?

たくさんの理由があると思いますが、簡単に言えばいつでも電源がついていて、1タップや2タップでまあまあ面白いコンテンツにたどり着けるから、というのが一つの理由でしょう。また、社会とつながっている充足感を得られるという点も、挙げられると思います。

コンテンツを提供する側は、「30秒で1ゲーム」「30秒でニュースをチェック」など、短い時間で楽しめることをアピールして、スキマ時間を消費させようとします。そうやって、いくらでもやることがあると、充足感を得られますし、ぼーっとしなくて済むんです。「スマホは現代人の毛づくろい」と言った人がいましたが、言い得て妙ですよね。特に意味はないけれど、毛づくろいし合っているだけで、1人じゃないと安心するんですよ。

電通ワカモンに聞く、イマドキの若者の価値観やスマホとの付き合い方

速度制限の実態を探る調査で、10代の女性は「TikTokとInstagramの自動再生で、毎日1時間以上見てしまう」という調査結果が出ています。近年、スマホ依存やSNS依存が問題になっていますが、どのように捉えていますか?

1日8時間スマホを使用する人が、全員スマホ依存かというと、それは違う気がしますね。能動的に使いこなしている人もいるでしょうし、ただ何となく指を動かし続けている「オートパイロット状態」の人もいると思います。やめたいのにやめられないとか、思ってもいないことをやってしまうとか、自分ではコントロールできない状態が依存です。依存性が高いことを彼らは知っているし、自制しなければならないと危機感も抱いているんです。

15~19歳の女性に聞いた、速度制限の実態

電通ワカモンに聞く、イマドキの若者の価値観やスマホとの付き合い方

データ通信の速度制限の経験がある15~19歳の女性に、スマホの使用状況をインタビューしたところ「何をするでもなくスマホを触っている」など、ついスマホを見てしまうという発言が多く見られました。また「TikTokなどは開くと1時間程度見てしまう」といった発言も。仮に1日1時間半Instagramを見た場合は、1日あたり約1GB、1カ月間で約30GBものデータ通信量を消費することになり、TikTokやInstagramのストーリーを中心に“短い動画をたくさん消費する傾向”が明らかになりました。

Q:普段、スマホでどのようなアプリやサービスを利用していますか

Q:普段、スマホでどのようなアプリやサービスを利用していますか

(調査会社:クロス・マーケティング 2019年3月、調査対象全体n=1,200)

「時間の使い方、スマホの使い方が、ハッピーだったか振り返る」

他にも、20代の男性は「ネットのためにカフェを利用するけれど、公衆Wi-Fiの速度品質にイライラする」という調査結果が出ています。スマホは便利でありながら、ストレスの一因になっている側面も…。若者がスマホと良好な関係性を築くためには、何が必要だと思いますか?

レコーディングダイエットのように、どのコンテンツを何時間見ていたか、それを見ていて楽しかったか、振り返ることが大事だと思います。その時間の使い方、スマホの使い方が、ハッピーだったか振り返る。夜更かしして3時までスマホを見ていても、リフレッシュになって、新しい発見もあったなら、それはいい関係だと思うんですよ。

20代の男性にテザリングの利用状況をインタビュー

電通ワカモンに聞く、イマドキの若者の価値観やスマホとの付き合い方

20代の男性は、動画などのデータ通信量が多いアプリを見ていることと合わせて、テザリングの利用が多い傾向が見られました。仕事や大学の授業でパソコンをネットにつなげなければいけないとき、テザリングを使用する人が多いようです。また、Wi-Fiを使うためにカフェを利用しながら、「公衆Wi-Fiの品質に不満があり、結局はテザリングで通信を使用する場合もある」といったコメントがみられました。

Q:テザリングの利用率

Q:テザリングの利用率

(調査会社:クロス・マーケティング 2019年3月、調査対象全体n=1,200)

今の若者が、りゅうちぇるさんやkemioさんに憧れるのは、必ずしも彼らと同じ格好をしたいわけじゃないんですよね。考え方が好きとか、スタンスが好きとか、メンタリティにフォーカスしているんです。憧れの対象となる人たちに共通しているのは「普通は」「世間的には」という、主語をぼかした話し方をしないこと。自分という主語から逃げずに、きちんと意見を言うんです。

スマホ依存ともいえる「オートパイロット状態」は、時間の使い方に主語が伴っていません。だから、スマホをずっといじってしまう自分に嫌悪感が募るんです。「私は8時間スマホをいじる」って自分で決めて実行しているなら、それはそれで良好な関係といえるのではないでしょうか。

若者が考える「自分らしさ」とは。若者の感性に寄り添えば、未来のヒントが見えてくる

若者が考える「自分らしさ」とは。若者の感性に寄り添えば、未来のヒントが見えてくる

今まで接してきた若者の中で、「この子はおもしろい!」と思うような、インパクトのある若者はいましたか?

僕らは大学生とプロジェクトをたくさんやっていますが、あるプロジェクトの最中に「自分らしいって何?」と彼らに問いかけたところ、キョトンとされたんです。そのときに「自分らしさって、他人が自分のことをどう思うかだから、僕にはわからないです」って言った人がいたんですよ。こちらの質問を突き放しているわけではなく、自分が思うように生きれば「らしさ」は他人が定義してくれるという意味で、彼はそう言ったんですよね。

彼らは、10代の頃からSNSで他人の目にさらされて、「他の人と自分はどう違うか」といったことにすごく悩んでいる。インスタグラムのフォロワーが2万人いるような同級生と比較して、「私って何だろう」とモヤモヤしている子がたくさんいます。自分を端的に表せる、ユニークなハッシュタグがなくて、苦しんでいるんです。

その一方で「そんなこと考えても、しょうがなくない?」って、達観しているような若者もいます。皮肉なもので、そういう人のほうが、思いのままに生きているから、悩んでいる人よりハッシュタグを獲得しやすいんですよね。そういう背景もあり、「らしさって、人が決めればよくないですか?」という言葉には、今の若者っぽさが詰まっていておもしろいと思いました。

魅力は「当たり前を疑える」ところ

魅力は「当たり前を疑える」ところ

10〜20代の若者の実態を調査することで、その結果を新たなクリエイティブにつなげるというのも、ワカモンの活動目的の一つですよね。若者の感性の魅力はどういったところにありますか?

「当たり前を疑える」ところに尽きると思っています。何か指示を出したときに「それ、意味あるんですか?」と言う子がいませんか? 考えてみれば意味がないことが、社会はたくさんありますが、上の世代はみんな言わずにのみ込んできました。ところが、若者はバイアスがかかっていないから、それを素直に口に出してしまう。それって、実はすごく大事な意見だと思うんです。

2016年に、「テレビは動画が途中から始まる」という若者の言葉が話題になりました。YouTubeは再生ボタンを押したら必ず頭から始まるのに、テレビは番組の時間に待機していないと、頭から見られない。テレビ局の編成担当者は、今まで、そんなことを考えたこともなかったんです。

若者の当たり前が変わってきていると知ったときに「面倒くさい世代が現れたな…」と思うのか、「彼らがおもしろいって言ってくれたらすごい!」と思うのでは、ものすごく差が開きます。ワカモンは、彼らが覚える違和感が、これからのイノベーションの入口になると思っています。彼らの感性を、大事にしていきたいですね。

電通ワカモンに聞く、イマドキの若者の価値観やスマホとの付き合い方

「若者の価値観や、上の世代のバイアスのかかり方を把握し、翻訳して双方に伝えてあげるのが僕らの仕事です」と、吉田さんは言います。「今の子は忍耐力がない」「まだ社会経験が浅いから」などと上から目線にならず、若者にちょっと寄り添ってみてください。彼らの価値観や考え方の中に、より良い未来を築くためのヒントが隠されているかもしれません。

(掲載日:2020年1月10日)
文:佐藤由衣
編集:エクスライト
撮影:山野一真

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