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給与明細の保管期間とは?保管すべき情報や書類と適切な管理方法を解説

給与明細の保管期間とは?保管すべき情報や書類と適切な管理方法を解説

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給与明細とは、企業が従業員に給与を支払う際に交付する重要な書類です。企業が給与明細を保管する必要はありませんが、給与明細の作成に関わる書類(情報)を保管する義務があるため注意が必要です。

給与明細の作成に関わる書類には、労働に関する書類と税金に関する書類があり、労働基準法と国税通則法でそれぞれの記帳方法や保存期間、保存方法などが規定されています。そのため、給与明細に関連する書類については、企業と担当者が十分理解しておくことが大切です。

また、近年は企業のIT化やDXの推進により、給与管理などの経理業務にクラウド会計システムの導入が進んでいます。会計システムの導入により、最新の法律に則した管理業務が可能となるだけでなく、重要書類の管理や保管も自動化できるためおすすめです。

今回は、給与明細の保管期間について、保管すべき書類と適切な管理方法を解説します。企業の経理や人事に携わる方は、ぜひ参考にしてください。

給与明細とは?給与明細の重要性

給与明細は、従業員が受け取る給与の詳細を記載した公式文書です。給与明細には、基本給、残業代、各種手当、控除される税金や社会保険料など、給与に関する重要な情報が含まれます。

給与明細の重要性

給与明細は、従業員にとって、自分の給与が正確に計算されていることを確認するための重要な文書です。給与の内訳を把握することで、従業員は自分の労働に対する適正な報酬を受け取っているかを確認できます。また、給与明細は、税金の申告や社会保険の手続きに必要な情報を提供するため、これらの行政手続きにおいても不可欠な書類となります。

給与明細は、従業員が金融機関からローンを受ける際や、クレジットカードを申し込む際の収入証明としても使用される重要な文書です。このように、給与明細は個人の財務状況を証明する上で重要な役割を果たします。

さらに、給与明細の保管は、将来的に収入の証明が必要になった場合や、労働関連の紛争が発生した際に、自分の権利を主張するための証拠としても重要です。そのため、給与明細は適切な期間保管されるべきであり、その保管方法には細心の注意を払う必要があります。

上記のように、給与明細は従業員の労働の対価を明確にし、個人の財務管理をサポートする重要な文書です。給与明細の適切な管理と保管を行うことで、従業員が自分の給与に関する透明性と安心を確保できます。

このように、給与明細の適切な取り扱いは、従業員と雇用主の双方の信頼関係を築く上で不可欠な要素と言えるでしょう。

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給与明細の保管期間とは?保管すべき関連書類の種類

前述したように、給与明細そのものについては、企業に保管義務はありません。ただし、給与明細を作成する際に必要となる従業員のさまざまな情報や書類については、一定期間保管する義務があります。

そこで以下では、給与明細に関する書類の保管義務の内容や、その必要性と役割について解説します。

企業が給与明細を保管する義務はない

最初に解説したように、給与明細を交付する企業には、給与明細を保管する義務はありません。ただし、給与明細の作成に必要となる従業員情報に関しては、労働基準法や国税通則法によって記帳方法や保管期間、保管方法などが規定されています。

また、給与明細を受け取った従業員にも、給与明細を保管する義務はありません。しかし、個人で確定申告する場合や収入を証明する際などに必要となるケースがあるため、企業側が一定期間の保管をするように指導しましょう。

給与明細に関連する書類の種類と保管期間

上記のように、企業に給与明細を保管する義務はありません。ただし、労働基準法や国税通則法によって決められた書類の保管義務があるため注意が必要です。

原則として、労働基準法で決められた書類は5年間の保存が必要で、国税通則法で決められた書類は7年間保存しなければなりません。

労働基準法で保管を義務付けられている書類には、従業員の個人情報や雇用形態、労働記録などの重要な情報が記載されています。一方、国税通則法によって保管が義務付けられている書類には所得税控除や源泉徴収に関する情報が記載されており、それぞれ厳重に保管する必要があります。

給与明細に関連する書類の内容

それでは次に、給与明細に関する書類について、5年と7年の保管義務がある書類に分けて解説します。それぞれが重要な書類ですので、しっかりと確認しておきましょう。

5年間の保存が必要な書類

5年間の保存が必要となる書類は、主に次の7つです。

  1. 労働者名簿
  2. 賃金台帳
  3. 出勤簿
  4. 雇用関連書類
  5. 災害補償(労災)関連書類
  6. 賃金関連書類
  7. 労働関連書類

それぞれ解説します。

労働者名簿

労働者名簿とは、従業員の住所や氏名、生年月日などの個人情報を記載した書類です。労働者名簿は法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)の1つで、必ず作成しなければならない書類です。

労働者名簿には、次の情報を記載しなければなりません。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 性別
  • 履歴
  • 従事する業務の種類
  • 雇入年月日
  • 退職年月日とその事由
  • 死亡年月日とその原因

賃金台帳

賃金台帳も法定帳簿の1つで、従業員の氏名や労働日数、賃金の計算期間など、給与明細を作成する際の基準となる情報を記載した書類です。

なお、労働者名簿には、次の情報を記載する必要があります。

  • 氏名
  • 性別
  • 賃金計算期間
  • 労働日数
  • 労働時間数
  • 時間外労働時間数、休日労働時間数および深夜労働時間数
  • 基本給、手当、その他賃金の種類ごとの金額
  • 法令および労使協定に基づいた控除を行った場合は、その控除額

出勤簿

出勤簿は、上記の2つを含めた法定三帳簿の1つで、従業員の労働時間数を記録するためのものです。ただし、労働者名簿や賃金台帳とは異なり、記載方法が明確に定められていないため、勤怠管理システムやタイムカードを利用するケースがほとんどです。

雇用関連書類

雇用関連書類には、雇い入れに関する書類と、解雇に関する書類の2種類があります。それぞれの内容は、以下の通りです。

  • 雇い入れに関する書類

雇入決定関係書類、雇用契約書、労働条件通知書、履歴書 など

  • 解雇に関する書類

解雇決定に関係する書類、解雇予告除外認定に関係する書類 など

災害補償(労災)関連書類

災害補償(労災)関連書類とは、労働災害に該当するケガや病気の診断書の他、補償の支払いに関する書類や領収関係などです。

賃金関連書類

賃金関連書類とは、賃金決定に関係する書類や、昇給や減給に関係する書類などが該当します。

労働関連書類

労働関連書類とは、上記の出勤簿以外に労使協定書、各種許認可書、退職関係書類、休職・出向関係書類などが含まれます。

上記に該当する書類がある場合は、必ず保管しましょう。また、保管が必要かわからない書類があれば、税務署や税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。

7年間の保存が必要な書類

7年間の保存が必要となる書類は、主に次の3つです。

  1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  2. 給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
  3. 源泉徴収簿

それぞれ解説します。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書とは、所得税の扶養控除などを受けるために従業員が記入し、提出する書類です。

所属する企業から給与を受け取る従業員は、正規や非正規を問わず、全員が提出しなければなりません。

給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書

給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書とは、年末調整で保険料控除や配偶者控除(配偶者特別控除)を受けるために、従業員が記入して提出する書類です。

源泉徴収簿

源泉徴収簿とは、給与や賞与などの所得や、社会保険料や雇用保険料などの控除額を記入し、正しい所得税額を算出するために使用する帳簿です。源泉徴収簿は、原則として作成や提出する義務がありません。ただし、作成した場合には7年間の保存が義務付けられるため、注意が必要です。

給与明細や関連書類を適切に保管する方法

前述したように、給与明細に関する書類には、法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)や給与所得者の扶養控除等(異動)申告書のように作成と保管が義務付けられた書類のほか、作成が必要な場合のみ保管すべき書類があります。

また、企業に給与明細の保管義務はありませんが、従業員から再発行を依頼された際にすぐに対象できるように保管することがおすすめです。

そこで以下では、給与明細や関連書類を適切に保管する方法を解説します。

紙媒体で保存する方法

給与明細や給与明細に関連する各書類は、企業が保護すべき重要な機密情報です。そのため、紙媒体で保管する際は、それぞれの書類を分類してファイリングし、鍵付きのキャビネットや個室で管理する必要があります。

また、キャビネットや書類部屋に出入りできる人材を制限して書類の紛失や情報が漏れることのないようにするほか、直射日光や湿気を避けて書類が劣化することのないように注意しなければなりません。

電子データで保管する方法

電子データで保管する場合は、紙媒体の書類をスキャンしてから画像やPDFファイルに変換して保管する方法や、自社のPCでExcelなどのソフトを使ってデータを保存するのが一般的です。

電子データで保管することで、紙媒体のように保管場所や保存環境に配慮しなくてもよくなる可能性があります。ただし、社外への情報漏洩などの危険性があるため、データの持ち出しや管理方法については社内で厳格に規定することが大切です。

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給与明細や関連書類をクラウド管理すべき理由

給与明細や給与明細に関連する書類は、従業員の個人情報などを含む企業の機密情報の1つです。そのため、情報の漏洩や紛失リスクがある紙媒体や電子データで保管するよりも、より安全性と利便性の高いクラウド管理がおすすめです。

近年は、IT化やDXが進んでいることもあり、帳簿作成や書類をクラウドシステムで管理する企業が増えています。クラウドシステムで情報を管理することで、セキュリティ対策を強化できるだけでなく、いつでも、どこからでも必要な情報をすぐに抽出できるメリットがあります。また、システムへのアクセス権を管理できる人材を指定したり、アクセスした人材を把握しやすいのもクラウドシステムの特徴です。

クラウド管理システムで管理できる情報には、人事や会計、経営分析などがあります。そしてこれらを連携して一元管理することで、給与明細はもちろん各種帳簿や決算書類の作成、財務諸表などの情報をいつでもリアルタイムに抽出できます。

また、クラウドシステムの導入によって自社の人事や会計情報をリアルタイムに抽出できるようになるため、迅速な経営分析と経営判断が可能となり、社外のステークホルダーに対する信用度の向上にも貢献するでしょう。

給与明細の保管に関するよくある質問5つのQ&A

Q1:給与明細書は会社で保管する必要がありますか?

A:会社は給与明細書そのものを保管する義務はありませんが、給与計算の根拠となる書類や給与明細の記載項目をまとめた書類には保管義務があります。

Q2:給与明細の保管期間はどのくらいですか?

A:労働基準法により、給与明細に関わる書類は5年間の保管が義務付けられています。以前は3年でしたが、2020年4月の法改正により5年に延長されました。

Q3:給与明細に法的な保管義務はありますか?

A:法律による給与明細書自体の保管義務はありませんが、給与明細は賃金台帳や出勤簿などと重複する情報を含むため、企業コンプライアンスの観点から法定三帳簿と同等に扱うことが適切です。

Q4:給与明細はどのように保管するべきですか?

A:給与明細を保管する方法は、紙の書類で保管する場合とデータで保管する場合があります。紙の書類の場合は、個人や年度、発行単位などに分けてファイリングすると良いでしょう。また、電子化して保管する場合は、情報漏洩に注意が必要です。

Q5:給与明細は再発行できますか?

A:法律による再発行義務はありませんが、給与明細は従業員に給与を適切に支払った証明として重要なため、多くの企業では賃金台帳と共に5年間保管しています。また、従業員からの再発行依頼に対応できるようにすることが推奨されています。

給与明細の保管期間のまとめ

このように、給与明細や関連書類の作成や保管には、クラウドシステムの導入が欠かせません。クラウドシステムは、従来のダウンロード型のPCソフトやシステムと比較しても、初期費用が安く、企業ごとにカスタマイズしやすいのがメリットです。

ただし、クラウドシステムを導入する際は、各企業ごとに必要なシステムや機能を選んで実装する必要があります。そこで、信頼のできるシステム会社とベンダーを選ぶことが重要です。

もし、クラウドシステムの導入をお考えの方は、スーパーストリームにお気軽にご相談ください。貴社に最適なソリューションをご提供いたします。

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