導入10年裁判員制度 地裁で「模擬評議」と課題へ意見を交換

2019年5月28日 02時00分

模擬評議で意見を交わす裁判官、裁判員経験者、報道関係者ら=千葉地裁で

 今月で導入から十年を迎えた裁判員制度についてもっと知ってもらおうと、千葉地裁は二十六日、学生や有識者などに向けたイベントを開いた。成立する罪や量刑を考える「模擬評議」があったほか、制度の課題への意見が交わされた。 (太田理英子)
 模擬評議は、男性の被告が路上で男性に暴行を加えて現金一万円を奪い、強盗致傷罪に問われたという架空の事件が題材。弁護側が「当初は金品を奪う目的はなかった」と、傷害と恐喝罪が相当と主張していると想定し、強盗致傷罪が成立するかどうかについて意見を交わした。
 同地裁で裁判員を経験した三十~六十代の男女四人と報道関係者五人が裁判員役で参加し、裁判官のアドバイスを受けて評議した結果、「(強盗罪に当たる)被害者が抵抗できないほどの暴行行為だったとは言えない」として、傷害と恐喝罪が相当と結論付けた。
 模擬評議を見学した千葉商科大一年の千葉紗彩さん(18)は「こんなに意見を練るものなのかと驚いた。裁判官は論理的に捉え、裁判員役は気持ちに寄り添う考え方をしていると思った」と話した。
 裁判員経験者と有識者のパネルディスカッションもあった。経験者はいずれも裁判員裁判は良い体験だったとし、「報道される事件や冤罪(えんざい)事件に関心を持つようになった」「(審理が長く)仕事をしている人は休みを取るのに苦労していた。職場の理解が広まれば」と意見を述べた。
 千葉商科大国際教養学部長の宮崎緑教授は「制度導入前は事件が単純化されないか心配だったが、十年でわいせつ事案の刑が重くなるなど、国民の感情が反映されるようになった。社会的な理解を広げるには、『市民とは何か』を学ぶことが大切になる」と述べた。
     ◇    
 千葉地裁などによると、二〇〇九年の制度導入から今年三月末までの間、同地裁が実施した裁判員裁判は計千三百三十件(速報値)で、全国の地裁本庁・支部で最多だった。
 裁判員裁判が多いのは、成田空港で薬物密輸入事件が多発しているため。制度導入から昨年十二月末の間、同地裁で裁判員裁判の判決を受けた被告千百八十三人のうち、約半数が覚せい剤取締法違反の罪だった。
 死刑判決が言い渡されたのは、〇九年に千葉大生が殺害された強盗殺人事件の一件一人(東京高裁で破棄され無期懲役が確定)。無罪判決は二十八人で、うち二十人が覚せい剤取締法違反罪の事件だった。

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