「華麗なる一族」橋岡優輝が6位 オリンピアンの叔父が導いたジャンパーの道<陸上男子走り幅跳び>

2021年8月2日 12時23分
 おいのジャンプを温かく見守ってきた。東京五輪で2日、陸上男子走り幅跳びで日本勢37年ぶりに五輪の決勝の舞台で跳び、6位に入賞した橋岡優輝(22)=富士通。ジャンパーへと導いたのは、東京・八王子学園八王子高陸上部顧問で、シドニー五輪代表の渡辺大輔さん(46)だった。(森合正範)

男子走り幅跳び決勝 橋岡優輝の2回目の跳躍=国立競技場で

 「優輝が中学3年の時、私から誘ったんです。うちの高校に来ないかと。本人も高校で本格的に(走り)幅跳びをやりたいと選んでくれた」
 橋岡家は陸上界の「華麗なる一族」。父利行さんは棒高跳びで日本選手権を7度制し、母直美さん(旧姓城島)は中京大時代に100メートル障害、結婚後に三段跳びの日本記録を樹立した。渡辺さんは直美さんの妹の夫。橋岡の叔父にあたり、幼い頃からよく知っていた。
 橋岡は中学まで100メートル、走り幅跳び、四種競技(110メートル障害、砲丸投げ、走り高跳び、400メートル)とさまざまな種目に励んできた。渡辺さんはおいのジャンプを初めて見て驚いた。「優輝はいろんな可能性がある。体のバネはすごいし、身体能力も高い。才能にあふれている」
 高校1年の冬。基礎的な動作から言葉では説明しづらい跳ぶ感覚まで少し難しいことも伝えた。何をやっても器用にこなす。吸収力もある。2年の春、最初の記録会でいきなり自己記録を50センチ近く更新した。「あのときの動きを見て確信しました」。以降、飛躍的に成長を遂げていく。
 渡辺さんにはシドニー五輪の反省があった。「ずっと五輪に出たくて、その年にけがをしてしまい、出場することに力を注ぎすぎた」。本番ではぎりぎりの勝負に挑み、3回ファウルによる失格に終わった。「優輝には代表は当たり前。五輪で勝負してほしい。ずっとそう思っていた」

橋岡を走り幅跳びの世界へと導き、高校時代に指導した叔父の渡辺大輔さん

 高校では大会で優勝しても自己記録を更新しても、満足した顔を見たことがないという。試合後、必ず「どうだった?」と問い掛ける。いつも首をかしげ、最初に出てくるのは改善点ばかり。「納得していないんです。貪欲で向上心がある。反省して、次にどう修正するかを考える」
 7月31日の予選は全体3番目の8メートル17で通過した。決勝に向け、渡辺さんは「優輝には笑って終えてほしい」と願う。「力は十分あるし、メダルの届くところにいる。楽しんで跳べば結果はついてくる」とエールを送っていた。
 おいであり、後輩ジャンパーでもある橋岡は、2日の決勝で、8メートル10を跳んで6位。メダルまであと11センチまで迫る闘いを演じた。「パリ五輪に向けて、良いスタートを切れた。タフな試合をもっとこなして、もう一段階、強くなりたい」。これからも叔父の期待に応えるような活躍を誓った。

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