すぐ目が疲れる…年のせい? 「アイフレイル」早期受診を 緑内障など失明恐れも

2021年10月26日 09時02分
 暗くなると物が見えにくい、すぐ目が疲れる−。こんな症状に悩まされる中高年は多いが、「年のせい」と軽く考えてはいけない。緑内障や加齢黄斑変性といった病気が原因かもしれず、進行すれば失明の恐れも。日本眼科学会などでつくる「日本眼科啓発会議」は今年から、加齢で目の機能が弱まった状態を「アイフレイル」と名付け、早い段階で受診など対策を取るよう訴える。 (河野紀子)
 名古屋市の会社員女性(49)が不調を感じたのは、四十歳を過ぎたころ。もともと近視だったが、近くが見えにくくなった。ご飯を食べてもピントが合わず、おいしくない。頭が重く、気分も沈んでいった。
 思い悩んで眼科を受診したところ、結果は「老眼」。まだ先のことと思っていたため意外だったが、コンタクトレンズを近視用から遠近両用に替えると、体も心も楽になった。「老眼になっただけで、こんなにつらいとは」と驚いた。
 「フレイル」は加齢によって体のさまざまな機能が低下した状態。健康と要介護状態の中間の段階に位置づけられるとして、日本老年医学会が二〇一四年に提唱した。「アイフレイル」は、目に特化した概念だ。
 「目の健康は、日常生活の質を保つためにとても重要」。日本眼科学会常務理事で、京都大大学院医学研究科眼科学教授の辻川明孝さん(54)は言う。目が不調だと読書やスポーツといった趣味を楽しめない、車の運転が不安、外出がおっくうになる−などさまざまな支障が出て心身の健康を損なう要因に。海外の研究では、眼鏡で矯正しても良い方の目の視力が〇・五を下回る状態だと、転倒やそれに伴う骨折のリスクは正常な人の二・五倍、うつ病のリスクは二・七倍になる。
 加齢に伴い、光や色を感じる網膜や脳に信号を送る視神経の機能、水晶体のピント調整力は少しずつ低下する。日本眼科啓発会議が六月、四十歳以上の男女約一万三千二百人に聞いた調査では約九割が「目で気になることがある」と回答。具体的には複数回答で「小さな文字が読みにくい」が約半数で最多、「目が疲れやすい」「視力が低下している」が続く。一方で一年以内に眼科を受診したのは四割にとどまった。
 特に不調を感じなくても「高齢になるほど緑内障や白内障、加齢黄斑変性といった病気を発症する人は増える」と辻川さん。いずれも初期は自覚症状が少なく、気付いた時には進行している例も。「四十歳を過ぎたら年一回は眼科で検査を受けてほしい」と訴える。
 例えば、日本人の中途失明原因で一位を占める緑内障の場合、四十歳以上の5%、七十歳以上では10%が発症する。視野が徐々に欠けるのが特徴だが、両目同時に症状が進むわけではない。初期は見えない部分をもう片方の目で補うため、異常に気付きにくい。同会議の調査では、緑内障と診断された人のうち、六割は自覚症状がなく、多くが健康診断などで異常が見つかった。一度欠けた視野は元に戻らないため、早い段階で気付き、治療で進行を抑えることが大切だ。
 水晶体が白く濁って目がかすんだり、光をまぶしく感じたりする白内障、ものがゆがんで見える加齢黄斑変性も、治療で症状の改善や進行を食い止める効果が期待できる。
 同会議はホームページ=「日本眼科啓発会議アイフレイル」で検索=に、「食事の時にテーブルを汚すことがある」「新聞や本を長時間見ることが減った」など十項目のチェックリストを掲載=表。二つ以上当てはまる場合はアイフレイルの可能性があるとして、受診を呼び掛けている。

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