首相答弁でツイッター大喜利状態 「募る」と「募集」の違いをまじめに考えた

2020年1月30日 11時15分

衆院予算委で共産党の宮本徹氏(下左から2人目)の質問に答える安倍首相=28日

 募っていたが、募集ではなかった?「桜を見る会」への参加を安倍晋三首相の事務所が呼び掛けたことに関し、首相の国会答弁が炎上している。ざわつく議場の様子が拡散され、「お菓子を食べたが、オヤツではな~い」といったツイートで大喜利状態に。「募る」と「募集する」って、本当に違うのか? (片山夏子)

◆議場に失笑 ハッシュタグ盛況

 問題の答弁は二十八日の衆院予算委で飛び出した。宮本徹議員(共産党)が、安倍政権下で桜を見る会の参加者数が急増した理由を追及。首相の地元事務所が友人や知人は申込書をコピーして使うよう呼び掛けていたと指摘し、「幅広く募っている、募集していることをいつから知っていたのか」と質問した。 安倍首相が「私は幅広く募っているという認識でした。募集しているという認識ではなかった」と答えると、議場は失笑に包まれた。宮本氏は苦笑しながら「日本語を四十八年使っているが、募るというのは募集するというのと同じ。募集の募は募るっていう字なんですよ」と続けた。 このやりとりが報じられると、ツイッターには「#募ってはいるが募集はしていない」というハッシュタグが出現。「答えてはいるが、答弁はしてない」「マズい部分隠したが、改ざんではない」といった投稿が相次いでいる。

「桜を見る会」で招待客と握手する安倍首相=昨年4月、東京都新宿区で

◆意味は同じ 永田町用語なのか?

 言葉自体の意味はどうなのか。広辞苑で「募る」をひいてみると、「ますます激しくなる」などと並び、「広く求め集める。募集する」とあった。「募集」をみると、こちらは「つのり、あつめること」としか書かれていない。 椙山女学園大の加藤主税名誉教授(言語学)は「募るも募集も意味は同じ」と説明。そのうえで「あえて直感的に言うと、募集する方が堅く、書類提出や意思表明などが必要な印象があり、募るは自由に参加できる感じ。その意味では、桜を見る会の実態は『募る』で合っているのでは」と解説する。 首相はいつもどちらで答弁しているのか。現在公開されている国会会議録を見る限り、桜を見る会の関連では「募る」を使うことが多いようだ。もしかして永田町用語として使い分けがあるのかと、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏に聞くと、「そんなことはありません」と断言された。 「そもそもこの問題はいろいろなことがいいかげん。理屈になっていないことを理屈で言い逃れしようとして無理が生じ、こういうことになる」

◆迷言頻発しても開き直り

 首相は過去の国会でも、自身を行政府の長と言うべきところを「立法府の長」と言って会議録の修正を招いたり、「云々」を「でんでん」と読み間違えたりしてきた。報道陣から「今年の漢字」を一字で表すように問われ、「責任」と字余りで答えたこともある。 今回の答弁を見て「安倍さん、馬から落ちて落馬したね。それじゃ危険が危ないよ」とツイートしたのは落語家の立川談四楼氏。「あきれかえった。発言後もえらいことを言ってしまったという感じじゃないし。何を言っても押し切る癖がついている」と話す。 政治家の「迷言」は頻発し、大喜利はしょっちゅう繰り広げられている。無意識の発言がすばらしいギャグになることもあるとした上で、談四楼氏は嘆く。 「それにしても一国の総理が意味の取り違い、理解力や読解力不足…。これじゃあネタにもならない」

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