ツイートで訴追の岡口判事 弾劾裁判で「おわびしたい」 弁護側、罷免争う姿勢

2022年3月2日 20時46分

仙台高裁の岡口基一判事の弾劾裁判初公判が開かれた国会の裁判官弾劾裁判所=2日、東京・永田町の参院第二別館で

 ツイッターなどに不適切な投稿をしたとして、国会の裁判官訴追委員会(訴追委)から罷免を求められた仙台高裁の岡口基一判事(56)の弾劾裁判初公判が2日、国会の裁判官弾劾裁判所(裁判長・船田元衆院議員)で開かれた。岡口氏は訴追状の認否を問われ、「私の表現行為の中に不適当なものもあり、裁判に至ったことについては深くおわびしたい」と述べたが、弁護側は罷免について争う姿勢を示した。
 訴追状によると、岡口氏は2017~19年、東京都江戸川区で女子高校生が殺害された事件と犬の所有権を巡る民事訴訟について、自身のブログや会員制交流サイト(SNS)で遺族や訴訟当事者を傷つけるコメントを計13回投稿し、裁判官の威信を著しく失わせたとされる。
 弁護側は、岡口氏の投稿について「不適当な表現も含まれるが、(遺族らを)侮辱したり、社会的評価を貶めるものではない」と主張。投稿は裁判官弾劾法が罷免事由と定める「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」には「全く該当しない」と訴えた。
 弾劾裁判が開かれるのは13年、盗撮事件で罰金刑を受けた大阪地裁判事補以来で10件目。SNSでの表現活動について訴追されたのは初めて。
 最高裁は18年と20年の2度にわたって岡口氏の戒告を決定。一方、遺族らの訴追請求を受けて訴追委は昨年6月、岡口氏を訴追していた。弾劾裁判所は同7月、岡口氏の職務を停止する決定を出した。

裁判官の弾劾制度 憲法は裁判官の身分を手厚く保障し、国会の弾劾でしか辞めさせられないと定めている。裁判官弾劾法は裁判官が▽職務上の義務に著しく違反したり、職務を甚だしく怠った▽裁判官としての威信を著しく損なう非行を犯した|場合に罷免できると規定。手続きは刑事裁判に似ており、まず検察官役の訴追委員会が罷免の訴追を行い、弾劾裁判所が公開の法廷で審理する。裁判員は衆参計14議員で、3分の2以上の賛成で罷免が決定。裁判官の身分を失い、弁護士などになる法曹資格も失う。罷免された人は5年経過すれば、弾劾裁判所に資格回復を請求できる。訴追委員会に対する訴追請求は昨年までに計約2万2800件。今回を除いて延べ9人訴追され、7人が罷免されたが、うち4人は裁判で資格回復が認められた。

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