定住認めビザ発給…ウクライナ避難民への支援は特例 「難民鎖国」の日本、他国民との公平性は保てるのか

2022年4月7日 06時00分
 ロシアによる侵攻が続くウクライナから来日した避難民が400人を超え、政府は長期滞在に備えて暮らしや医療、仕事などに関する支援策を手厚くそろえて対応する方針だ。「難民鎖国」ともいわれる日本としては異例だが、いずれも「特例」の扱い。専門家からは「これを機に難民を受け入れやすくする関連法令を整備すべきだ」との声が上がる。(我那覇圭)

◆松野官房長官「幅広く受け入れる」

 松野博一官房長官は5日の記者会見で、ウクライナの避難民に関し「人道的な観点から幅広く柔軟に受け入れる」と強調。政府高官は「日本行きを希望する人はたくさんいる」と、受け入れ拡大へ対応策を外務省に検討させる考えを示す。
 避難民には、日本に家族や知人ら身元の引受先がない場合でも特別にビザを発給。行き先のない人は、政府が用意した一時待機のホテルに最長半年間ほど滞在した後、自治体や企業が用意した生活拠点の住宅などに向かう。将来的な定住も認める。
 滞在中、生活費や医療費向けの一定額を公費で支給。希望に応じて日本語教育や職業訓練の機会も提供する。専用の相談窓口も設置し、不安や悩みに応える。必要な費用として、2021年度予算の予備費から5億2000万円を確保した。
 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ウクライナからは400万人以上が周辺国などに脱出。日本の積極姿勢の背景には、欧州だけでの受け入れは難しくなりつつあるという事情もある。5日に帰国した林芳正外相のポーランド訪問では、主に皇族や政府要人が使う政府専用機で20人を連れ帰る異例の措置を取るなど「国際社会と緊密に連携した対応」(松野氏)をアピールするのも狙いだ。
 ただ、ウクライナへの支援内容が、似たような境遇にある他国の難民にも同じように適用されるとは限らない。日本も加入する難民条約では、人種や宗教、政治的意見により本国で迫害される恐れのある人たちを難民と定義。1982〜2020年の日本の認定数は841人にとどまる。

◆難民との格差指摘され始める

 ウクライナのような侵攻から逃れた「避難民」は、厳密には難民に当てはまらないとみられ、正式名称でもない。政府対応は、ベトナム戦争終結で社会主義体制になった影響で、ベトナムや周辺国から脱出した約1万1000人を受け入れた「定住難民」に準じた「かなり特例的な判断」(法務省関係者)という。出身国や政治状況によって受け入れ基準や待遇が異なれば、公平性に疑義が生じる可能性もぬぐえず、迫害を恐れてシリアやアフガニスタンなどから来日した人との格差が指摘され始めてもいる。
 元UNHCR駐日代表で、公益財団法人「ケア・インターナショナルジャパン」の滝澤三郎副理事長は、支援の機運を一過性に終わらせないため「最低限の支援策は制度の中に組み込み、極端な処遇の差を防ぐ必要がある」と、入管難民法の改正などで対応する必要性を指摘している。

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