「後方警戒十分でなかったのでは」 安倍元首相銃撃防げなかった警備体制 警察庁「十分だったか確認中」 

2022年7月8日 21時28分
安倍元首相が銃撃された現場付近で、山上徹也容疑者を取り押さえる警察官ら=8日、奈良市で(目撃者撮影の動画から)

安倍元首相が銃撃された現場付近で、山上徹也容疑者を取り押さえる警察官ら=8日、奈良市で(目撃者撮影の動画から)

 安倍晋三元首相が8日、奈良市で街頭演説中に銃で撃たれ死亡した。警察当局は首相や元首相ら要人にSP(警護官)を付け、街頭演説などの際は警備のために多くの警察官を配置する。元SPは「選挙演説にはどんな考えの人が集まってくるか分からない。非常に警戒する」と話すが、元首相への銃撃は防げなかった。

◆歴代首相は警護対象者 三木元首相殴打事件がきっかけ

 要人に張り付くように警護するSP制度は、1975年、当時の三木武夫首相(故人)が右翼に殴られた事件を機に発足した。
 国家公安委員会規則によると、警護対象者は首相や国賓ら「警察庁長官が定める者」。県警の本部長らが作成した警護計画に基づき警護する。
 警視庁関係者によると、歴代首相は基本的に警護対象者となり、安倍氏が街頭演説中に銃撃された8日の奈良市の演説会場にも同庁からSPが1人派遣されていた。
 現職首相の警護を担当した経験がある警視庁の元SPは「要人の選挙演説には大勢の人が集まり、危険度が増す。銃や刃物で襲われないか、前後左右を常に警戒する」と強調。警備部が長い幹部も「最も緊張感があるのが選挙演説での警備。不審な動きがあれば声を掛けるなどして注意を払っている」と話す。
 警護計画にも関わったことがある別の幹部は、今回の警備体制について「安倍氏の後方警戒が十分でなかったように思える。『元首相』ということで隙はなかったか」と疑問を呈した。
 9日も参院選の選挙演説が想定されることを踏まえ、ある警察署の幹部は「神経を張り詰めなければいけない」と語った。(佐藤大、榊原大騎)

◆「差し控える」を繰り返し

 警察庁警備局の担当者は8日午後、報道陣の取材に応じ、「警備体制が十分だったか確認している」と話した。
 担当者は「警備計画は奈良県警が基本的に作っている」と説明。人員や配置状況への質問が相次いだが、詳細な警備体制を明かすことはできないとして、「差し控える」と繰り返した。
 体制に問題がなかったかについては「しっかり確認している」と述べるにとどめ、都道府県警に警備対策の強化を指示したと明かした。
 一般論とした上で、「どこで警護するかによって警備の体制を変えている。選挙演説では有権者との距離も近く、通常の警備より難しさはある」とも説明した。(井上真典)

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