これが検証?政府が安倍氏国葬を巡る「論点整理」を公表 有識者の見解並べただけ 今後の対応は示さず

2022年12月22日 21時43分
 政府は22日、安倍晋三元首相の国葬に関し、有識者らへの意見聴取に基づく論点整理を公表した。賛否を巡って国民の分断を招いたことを踏まえ、岸田文雄首相の説明不足や、国会などとの事前調整が必要だったことを指摘する意見が相次いだ。首相は国葬の検証を行うと明言していたが、有識者の見解を並べただけにとどまり、基準作りをどうするかなど今後の対応も示されなかった。(坂田奈央)
 意見聴取は国葬後、憲法や行政法の大学教授、報道機関の論説委員ら約50人の有識者に打診。本紙の豊田洋一論説主幹を含む21人が応じ、11〜12月に対面で行われた。
 論点整理は「国会との関係」「国民の理解」「経費や規模の妥当性」など7項目にまとめた。「実施の意義」では「国民が心を合わせ故人をしのぶということに一定の意義」と評価の声の一方で「国民の間に対立、しこりだけが残る負の遺産を生んでしまった」と否定的な意見もあった。
 法的根拠についても「法律は必要ない」との意見に対して「閣議決定で『国葬儀』を実施できるのには問題がある」との批判も。国会の事前関与や、超党派での調整を求める意見が目立ち、内閣の裁量による実施を認める有識者からも、野党への説明が必要だったとの見解が示された。

◆多くが「国葬ありき」の質問

 国葬の是非で世論が二分されたにもかかわらず、有識者への質問は「国葬を実施しどのようなレガシー(遺産)が残ったと考えるか」「国葬実施に当たりどのような手順、プロセスを取ることが望ましいか」などと「国葬ありき」をにじませるものが多かった。本紙の豊田氏は「国葬を前提とせず、どういう公的葬儀の在り方がよいのかという視点で(検証作業を)進めてほしい」と注文を付けた。
 首相は「安倍元首相の国葬の検証を行う。一定のルールを設けることを目指す」と強調していたが、論点整理では政府の検証や基準作りには触れていない。国会側の動きも低調で、衆院で議論や意見聴取を非公開で行ったが、報告書はわずか3ページで各論を併記しただけ。論点整理は近く国会に提出される見通しだが、官邸幹部は「寝た子を起こさない方がいい」と国葬問題の議論に後ろ向きだ。
 松野博一官房長官は22日の記者会見で、政府としての今後の対応などへの言及を避けて「国会との関係など、どのような手順を経るべきか引き続き検討していきたい」と繰り返すばかりだった。

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