鮮やか 日本舞踊の競演 女流名家9流派20人が舞う

2023年2月24日 07時27分
 9流派20人の女性舞踊家が華やかに舞い踊った、東京新聞主催の第97回女流名家舞踊大会(18日、東京・国立大劇場)。昼夜2部で日本舞踊の世界にたっぷりと浸った1日を振り返る。 (林朋実)
 昼の部の幕開けは、にぎやかなお祭りの情景が浮かぶ坂東峰千代の常磐津「祭りの花笠(はながさ)」。続いてユーモラスな味わいの、藤間三弥子の長唄「たぬき」や藤間紅松(こうしょう)の狂乱ものの大曲、清元「保名(やすな)」などが観客の目を楽しませた。
 藤間樹太朗の大和楽「日高櫻恋俤(ひだかざくらこいのおもかげ)」は道成寺伝説を基にした一曲。恋を捨てて逃げた僧・安珍を追う清姫の情念を、時に激しいしぐさで表現。「自由に、感情の赴くまま、思う存分にできた」と振り返った。

「日高櫻恋俤」で清姫の情念を表現する藤間樹太朗

 昼の部の締めくくりは、花柳眞理子の「都風流(みやこふうりゅう)」。菊供養や酉(とり)の市などの行事を描き、江戸から大正にかけての浅草かいわいの風情が楽しめる。「江戸っ子のいろんな行事が入っていて、好きな曲。(人間国宝の)長唄の東音(とうおん)宮田哲男先生のすてきな歌で久しぶりに踊れてうれしかった」と声を弾ませた。

「都風流」で昼の部を締めくくった花柳眞理子

 夜の部は、藤三智栄(みちえ)、藤三智愛(みちあい)親子の新内「子宝三番叟(さんばそう)」でスタート。続く長唄「鷺娘(さぎむすめ)」の花柳幸舞音(さちまいね)は、鷺の精から恋する町娘となり、その後地獄の責め苦を受けるという激しい変化を、衣装を変えずに鮮やかに踊り分けた。「古典舞踊の代表的な作品。メロディーの美しさ、振り付けの素晴らしさを感じてもらえたら」と語った。

「子宝三番叟」を披露する藤三智愛(左)と藤三智栄

「鷺娘」を踊る花柳幸舞音

 最後は西川喜之華(きのはな)が一時間を超す大曲の義太夫、長唄「京鹿子(きょうがのこ)娘道成寺」を熱演。観客から大きな拍手が送られた。
 長年会場となってきた国立劇場は、建て替えのため今秋閉場する。この会に七回出演してきた三智栄は「感謝の気持ちを込めて踊った」。同じく七回出演の三智愛は「小さいころから憧れの劇場。(建て替えは)さみしい思いもある」と惜しんだ。

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