福島出身の30歳、立民・馬場雄基衆院議員は政府の原発回帰に「事故の教訓を置き去りにしている」

2023年3月11日 06時00分

東日本大震災での被災経験を経て政治家を志した動機などについて話す立憲民主党の馬場雄基衆院議員

 現職最年少の国会議員、立憲民主党の馬場雄基衆院議員(30)=比例東北ブロック=は福島県出身で、東京電力福島第一原発事故が県民にもたらした境遇への思いが、政治家を志したきっかけだった。原発回帰を鮮明にする岸田政権の姿勢を「事故の教訓を置き去りにしている」と指摘。廃炉や除染などの難題を「未来に先送りしないことが自分の仕事だ」と語る。(大野暢子)
 —事故当時は18歳の高校3年生だった。
 「福島市の自宅は電気も水も止まり、県外の知人から『原発が危険だから逃げて』という電話が相次いだ。両親は地元に残り、大学進学が決まっていた私は上京したが、後輩からは『逃げるのですね』というメールが届き、福島出身と知った大学の同級生には(偏見から)後ずさりされた。当時は自己紹介が怖かった」
 —なぜ政治家を目指したのか。
 「銀行員時代、ボランティアとして島根県の小学校で植樹祭を手伝った時、福島から避難中の男の子に懐かれた。後で担任教師に『彼の笑顔を初めて見た』と聞いた。同じ経験をする子をもう出したくないと思ったのがきっかけだ」
 —2月の衆院予算委員会で「福島を思い、将来を担う者たちの思いを背負って質問する」と切り出した。
 「福島の人々は葛藤の中にいる。廃炉作業は本当に成功するのか。処理水への対応は必要だが、風評被害は起きないか。中間貯蔵施設の除去土壌(除染土)は県外への搬出期限が2045年と法定されているが、受け入れ先が見つかるのか。それぞれが簡単には答えが出ない問いを抱え、苦しみ続けている」
 —政府に求めることは。
 「復興方針の説明で政府は『地元の強い要望だから』との言葉をよく使う。政府が自らの責任で除去土壌の処理などを成し遂げるという意志を行動で示さないと、県外から『被災者がまた何か言っている』と思われ、真の復興は実現できない」
 —岸田政権は最近、原発の建て替えや運転期間延長を認める方針に転換した。
 「国が14年に定めた第4次エネルギー基本計画には『可能な限り原発依存度を低減する』と明記され、再生可能エネルギー大国を目指す方針が決まった。光を見た思いだった。努力の余地が多くあるからこそ、そこに注力するべきだ」
 —自身の役割は。
 「除去土壌の県外搬出期限を迎える45年には、震災を経験していない子どもたちも社会の中核を担っている。事故を経験した私たちに、これ以上の課題の先送りは許されない。政治家として避けたくなるような厳しい判断をしなければならないこともあるかもしれないが、私は逃げない」

 ばば・ゆうき 1992年、福島県郡山市生まれ、福島市育ち。慶応大卒。三井住友信託銀行、松下政経塾を経て福島市にUターン。NPO法人で公共施設の運営に取り組んでいたが、2021年の衆院選で福島2区から立候補。小選挙区で敗れたものの比例復活で初当選し、初の平成生まれの国会議員の一人となった。


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