「大切な故郷、東京が美しく魅力的な場所であってほしい」坂本龍一さんインタビュー詳報

2023年3月16日 19時31分
坂本龍一さん=2020年3月

坂本龍一さん=2020年3月

 音楽家の坂本龍一さんが、明治神宮外苑地区の再開発の見直しを求める手紙を東京都の小池百合子知事らに送っていた。
 坂本龍一さんへの書面インタビューの主なやりとりは次の通り。
 —なぜ、いま手紙を書いた。
 五輪招致、国立競技場の建築でザハ案が撤回されたあたりから気になっていました。この3年近く、私は厳しい闘病を続けてきたので、残念ながら再開発について発言する気力も体力もありませんでした。いまはさらに体力が減衰し、開発反対の運動に全面的にコミットする力は残っていません。
 しかし、未来のことを考えた時、あの美しい場所を守るために何もしなかったのでは禍根を残すことになると思いました。後悔しないように陳情の手紙を出すことにしたのです。
 —何が問題か。
 100年近い歴史を持つ場所がはぐくんだ自然環境が破壊されることを懸念しています。樹々は差別なく万人に恩恵をもたらしますが、開発は一部の既得権者と富裕層だけに恩恵をもたらします。そのためにかけがえのない樹木を伐採していいのでしょうか。
 —開発そのものに反対なのか。
 反対ありきで運動したいわけではありません。生物多様性や自然環境を保全しながらの持続可能な開発はあり得ると思います。ただ現在予定されている開発案は、近視眼的な既得権者のためのものとしか思えません。
 青山通りを歩いたり、車で走っていると、あの場所はオアシスのようです。空が広がり、大きな樹木が都市の中にありうる自然の豊かな姿を見せてくれています。目先の利益のみに着目するならスクラップ&ビルドでどんどん建て替えることで短期的にはカネの循環を生みます。でも私はそんな場所に住んでいたくはない。
 100年たっても変わらずに歩ける街の姿を残せないものか。パリやローマはそのような都市で、観光資源としての大きな魅力があります。都市が長い年月をかけて獲得する風景を維持する。都市の中で自然環境を守ることは可能ではないかと考えています。
 私が生まれ育った大切な故郷である東京が美しく魅力的な場所であってほしい。

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