<最高峰に学ぶ 富士山自然誌研究会>野生生物画家 木村修さんの細密画

2023年5月28日 11時50分
 富士山自然誌研究会には観察した動植物を絵画で表現する人たちもいる。指導もしている野生生物画家(ワイルドライフアーティスト)の木村修さん(70)の工房を訪ねると、「これが絵画?」と思わず凝視する超精緻な作品がずらり−。(藤浪繁雄)

◆これが絵? 超精緻な作風 「動植物の生態を知った上で描く」

野生生物画家・木村修さんの作品「森の静寂」

 美しく壮大な富士山を楽しめる山梨県山中湖村。木村さんがその日々の中で描いた「森の静寂」(二〇〇六年)というアクリル絵の具のB4サイズが目についた。生命力あふれる巨木、映える緑の葉、青いオオルリのオス…。木や葉の陰影が極めてリアルに見えるが、これは絵。木村さんは「動植物の生態や葉の生え方をきちんと知った上で描く」と極意を明かす。
 一九八〇年代、広告などのデザインをしながら技巧を磨いていた。イラストレーターとして独立を考えていた三十歳代、出版社の知人のつてで「生き物を描きませんか」と依頼があり、図鑑や絵本向けに精巧な作品を多数手がけた。

木村さんが表紙を描いた富士山自然誌研究会の「富士山 野鳥スケッチ」


 絵は緻密でうそがない。観察眼はもちろんだが、「新潟県で育った子どもの頃に遊んだこと」が役に立っている。畑でモグラのしっぽをつかみ、ノウサギを追い掛け、昆虫をたくさん捕まえた日々。触れてみることで動物の毛の様子や体をどのように動かしているのか知ることができた。
 山中湖村に移住した二十余年前、富士山自然誌研究会メンバーと知り合い、その作品を見て「入会して」と声がかかった。富士山麓で見つけた野鳥や植物などを描く「フィールドアート」の活動も行われ、木村さんの工房で年四回ほど愛好者たちが集まっている。
 富士山中にいる動植物をモチーフにした作品が多い木村さんだが、実は富士山そのものを描いたことはないという。「日本人それぞれにイメージがある山。季節や時間帯によっても姿が異なるし、本当に難しい」と話す。それでも「いつかは…」と考えるようになってきた。どんな「最高峰」になるのか見てみたい。

木村修さん

<きむら・おさむ> 1953年新潟県生まれ。広告プロダクションのデザイナー、イラストレーターを経て、79年よりフリー。84年から自然をテーマに動植物を描く。
 学研「しぜんのえほん」シリーズ、「大パノラマずかん」シリーズ、ワンダーおはなし館「おおかみおうロボ」など多数の書籍に掲載。2003年ジャパンバードフェスティバル、ワイルドライフ展プロミナー大賞、07年米バーズインアート展入選など多数。御殿場市や裾野市などで絵画教室講師。

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