防衛財源確保法が成立 なし崩しで借金に頼る恐れ

2023年6月17日 06時00分
 防衛費を増額するための財源確保法が16日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。ただ、財源の一つである増税について、政府が同日閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」で、先送りを示唆。税外収入などほかの財源の捻出も簡単ではなく、なし崩し的に国債(政府の借金)に頼る懸念もある。(山田晃史、近藤統義)

 防衛財源確保法 防衛費増額のための財源の一つで、税以外の収入をためて複数年度で使う「防衛力強化資金」の創設などを定める。税外収入は国有財産の売却や特別会計からの繰入金など。財源はほかに歳出改革と一般会計の決算剰余金、増税がある。防衛力強化資金が創設されると四つの財源が既定路線となるため、増税に反発する野党が反対していた。

◆支出の規模ばかりが先行

 骨太の方針では、防衛費増のための増税時期について「2025年以降のしかるべき時期とすることも可能となるよう」と明記された。従来の方針は24年以降としていたが、選挙を念頭に増税を嫌う自民党からの提言を受け、延期される可能性が出てきた。
 増税の代わりに、今後は同法成立で創設された防衛力強化資金の税外収入など他の財源からの追加負担も検討される。ただし「5年間で総額43兆円」と支出の規模ばかりが先行し、どの財源も盤石ではない。
 近年の当初予算では税以外の収入は5兆~6兆円ほどで推移し、歳入の5~6%を占める。野村総研の木内登英氏は「税外収入をほかの予算項目から回す形で賄うことになれば、その分国債の発行が増える。防衛費増に国債を使わないとする政府方針が看板倒れになる」と指摘する。
 決算剰余金についても近年は経済対策の財源に使われてきた。剰余金の半分は借金返済に充てられるルールのため、防衛費に回れば回るほど、暮らしに必要な政策の財源が不足することになり、代わりの借金が増える恐れがある。
 防衛費増と同様に、岸田政権が重点を置く少子化対策の財源も骨太の方針で詳細は示されず、結論は年末に持ち越した。木内氏は「先送りすると後の混乱を招く可能性が高く、最終的に国債頼みになる恐れがある。本来は規模、内容、財源を一体で決めるべきで、財源を考慮して規模や中身を見直すことも必要だ」と話す。

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